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ティネン3

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 レイミアと別れたルカ達はティネンの中心部を目指す。

 まだ日は高いため、軽く街を見て回った後で宿を探す予定だ。

「随分と人が多いですねえ…」

 安鶴沙はキョロキョロと辺りを見回しながら呟いた。その言葉の通り、ルフェールに比べ随分と人通りが多い。

 ルフェールでも賑わっている場所はあったが、それは朝の市場だとか夜の酒場街だとか場所と時間が限られていた。しかし、ティネンはどこを歩いても人で溢れかえっている。人間種ヒューマン以外の人種の割合もルフェールに比べ多いように思われた。

「ティネンは中規模都市と呼ばれてますが、この辺りの中心的な街ですからね。人も物も集まってくるんです」

「なるほど…ルフェールが大洲市だとするとここは松山市って感じですかねえ…」

 などとルカ達にとっては意味の分からない言葉を呟きつつ、安鶴沙はルカの後ろを進む。

 2、3時間ほど歩いた所で、街の中心部らしい地域に到着した。今までは建物といえば平屋か二階建てだったが、この地域は三階建て以上の建築物が多く建ち並んでいる。純白の外観をした家が多いのは、大理石を建材として用いているためだろう。

 そんな街の中心地域の中にあって、ひときわ巨大な巨大な建築物が目に入った。一見すると、それは巨大な塀のように見える。ルカの身長のゆうに十倍以上は高さのある石の塀だ。それが巨大な円を描いている。

「これは…闘技場コロシアムか」

 アレクシアがその巨大な建築物を見上げながら言った。

「はい、ティネンには千年以上前に作られた闘技場コロシアムが現存していると聞いています。おそらく、これがそうでしょう」

「ふむ…王都にある闘技場コロシアムに比べれば小さいが、立派な建物だ。一万人程度は収容できるだろうか…」

 ルカとアレクシアがそんな事を話し合っていると、

「お?ひょっとしてトーナメントの参加者か?」

 と声をかけられた。そちらへ視線を向けると、闘技場コロシアムの入り口付近に木製の机が置かれており、その横に男が腰かけていた。声をかけてきたのはその男だ。それに安鶴沙が反応する。

「トーナメント、ですか。なんだかワクワクする響きですけど…いったい何のトーナメントなんですか?」

「ん?なんだ、参加者じゃないのかい」

 男はがっかりしたように肩を落とすが、説明のために言葉を続けた。

「ティネンでは定期的に腕自慢たちの勝ち抜きトーナメントを行っててな。十日後にもこの闘技場コロシアムでトーナメントがある。今回の参加資格は、『新人』である事。具体的に言えば、30歳未満かつ今までこういった大会に出た経験がないってのが条件だ」

「ふむふむ…つまり、新人戦って事ですか」

 と納得する安鶴沙。

「剣士でも槍使いでも参加は自由。しかも、今回はシュタインベルグ王国からお偉いさんが来賓として来ててな。優勝すりゃあ結構な額の賞金が出るぜ」

 『シュタインベルグ王国からのお偉いさん』。その言葉にアレクシアは僅かに眉を動かす。しかし、男はそれには気付かず言葉を続けた。

「――って事で、どうたい?お前さんたち、その身なりからして冒険者だろ?良かったら腕試しに参加してみる気はねえか?。いや、実を言うとな。俺は参加受付担当なんだが既定の人数が集まるまでここで待ってないといけなくてなあ…出来ればお前さんたちに参加してもらいたいんだが…」

「せっかくの機会だけれど…私は参加できないね」

 とアレクシア。

「私は王都シュトライゼンで行われるトーナメントに何度か参加した経験がある。『新人』の規定から外れてしまうだろうね」

「わたしも、素手ならともかく剣とか槍の大会に出るのは厳しいですねぇ」

 そう言って安鶴沙は残念そうなため息を漏らす。残ったのはルカだ。

「僕は――」

 と、少年が口を開いた時。

「アレクシア…?アレクシアだよな?」

 ルカ達の後方から、そんな声がかけられた。
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