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普通の女子高生のわたしが異世界に飛ばされてしまった件~美少年と一緒に冒険者ライフ!?~

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 わたしはどこにでもいるごく普通の女子高生だ。いや、女の子にしてはちょっとばかり普通じゃない特技も持っているけれど。それでも普通の女子高生と言っていいと思う。

 お父さんとお母さんがアニメやゲームが好きなのでその影響を受けてわたしもアニメが好きだ。それと、おじいちゃんが歴史に詳しい人なので歴史にも興味があったり。

 そんなわたしに転機が訪れたのはゴールデンウィーク。家族で島根県へと旅行に行った際の事だ。出雲大社にお参りして、出雲そばを食べて。ご当地キャラ(黄色い猫)のキーホルダーを買って。そんな楽しい旅行の終わりに、わたしたちは松江市東出雲町にある黄泉比良坂よもつひらさか伝承地へと訪れた。

 黄泉比良坂よもつひらさかとは古事記に登場する地名で、黄泉の国と豊葦原中国とよあしはらなかつくにの境目にあるとされる場所。黄泉の国とはすなわち『あの世』、豊葦原中国とよあしはらなかつくにとはすなわち『この世』。つまり、あの世とこの世の境目みたいなものだ。

 わたしたちが訪れた黄泉比良坂よもつひらさか伝承地とは、その黄泉比良坂よもつひらさかのあったとされる所。まあ、伝説みたいなもんよね。

 黄泉比良坂よもつひらさか伝承地は、さすがに厳かな雰囲気が漂っていた。木立ちの間に細い道が通り、道の左右に立つ石柱にはしめ縄が巻かれている。ただ、出雲大社とは比べる間でもないくらいにこじんまりとしていた。

 何とはなしにその石柱の間を通り抜けようとしたその瞬間、不意に地面が揺れた。

(地震!?)

 立っているのもままならない激しい揺れ。思わず地面にしゃがみ込む。そして何かに引っ張られるような感覚。何者かが、

「来い」

 と、そう呼んでいるのを強く感じた。そして、そこでわたしの意識は途切れた。

 一時間か、二時間か。それとも丸一日か。いや、ひょっとしたら数秒だったのかもしれない。途切れていた意識が戻る。

 ゆっくりと起き上がりながら、

「な、なに今の…?お父さん、お母さん、大丈夫…?」

 と、後ろからついてきているはずの両親に声をかけた。けれど、両親の姿はない。それどころか、周りに広がっていたのは見知らぬ光景だ。

 レンガや石で作られた建物。海外の映画なんかでしか見た事のない服装に身を包んだ人たち。見知らぬ風景。

「え、え、ええー…どういう事?」



 ここがわたしの元居た世界とは別の世界…すなわち、異世界であると納得するのには少し時間がかかった。

 最初は、ヨーロッパのどこかに来てしまったのだと思った。理由はよく分からないが、わたしは意識を失ってヨーロッパのどこかの国に運ばれたのだと。けれど、それは違った。確かに今わたしがいる場所の町並みは動画なんかで見た事のあるヨーロッパの風景によく似ている。けれど、人々の服装や持ち物があまりにも現代とはかけ離れている。

 電子機器なんてものを持っている人は皆無で、その代わり腰に剣を差している人がちらほら。明らかに現代ではない。

 それじゃあ、タイムスリップしてしまったのだろうか?いや、それも違う。

 街行く人を観察すれば、耳の尖っている人(エルフ?)や猫のような尻尾の生えている人(獣人?)がちらほら。さらに魔法?らしきものを使用している場面にも遭遇した。

 そしてわたしは理解したのだ。ここは、異世界であると。

 どうしてこんな事になってしまったのか。
 お父さんやお母さんにはもう会えないのか。
 帰る方法はあるのか。
 この世界で生きていく事ができるのか。

 色んな考えが頭の中でぐるぐると渦巻いた。だが、どうやらわたしには適応力がある方らしい。しばらく悩んだ後――、

「ま、仕方ないか…」

 と腹をくくった。

 異世界に転生なり転移なりするアニメは何度も見て来たし、その度に『もし異世界に転移してしまったらどうしよう』という妄想はしてきた。それが実現しただけだと考えればいいんだ。

「なんとなかるって、うん」

 そう呟き、わたしは歩み出した。異世界での第一歩を。

 けど、なんとかならなかった。牢屋にぶち込まれるはめになってしまったのだ。
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