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ルフェール修道騎士団支部
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一行は修道騎士団支部へと到着した。迷宮の最深部からここまで、4日の道のりだ。途中何度か魔物とも出くわしたが、問題なく切り抜ける事ができた。
強力な魔物と出くわさなかったという事もあるが、ジーナを始めとする修道騎士たちが積極的に戦ってくれたという点も大きい。ジーナはかなり優秀な魔術師だったし、従騎士たちもDランク程度の冒険者の実力はあった。ちなみに、ゲルトアルヴスも従騎士たちによって運ばれた。体を布で包まれ、二人一組で運搬されるゲルトアルヴス。それはさながら、巨大な置物であるかのようだった。
騎士団支部でルカたちは部屋を与えられた。おそらく来客者用の宿泊室だ。ルカとジョゼフはふたりでひとつ。アレクシアは個室だ。
「いやあ、久しぶりにベッドで眠れるぜ」
とは、ジョゼフの言葉だ。
「そうですね。牢獄じゃなくて、きちんとしたベッドで眠れて良かったです」
そう返したルカに、
「違いねえ。運が悪けりゃ、今頃牢屋の中だったからな」
とジョゼフは笑いながら返した。ルフェール修道騎士団支部へと到着した初日は、ゆっくりと休んで一日を過ごした。
翌日。部屋に届けられた朝食を食べ終えた頃、部屋の扉がノックされた。修道騎士団が事情聴取に来たのだろうか。そう思い、
「どうぞ」
と部屋の外に声をかける。すると、そこから現れたのは修道騎士団ではなく…アレクシアだった。
「お邪魔させてもらってもいいかな」
「アレクシアさん…はい、勿論です」
ルカはアレクシアを部屋へと招き入れる。彼女は部屋に備え付けられている椅子に腰をかけた。ルカも椅子に腰かける。ジョゼフは、ベッドに座っている。
アレクシアは正面に座るルカと、やや離れた位置にいるジョゼフ。それぞれに視線を向け…口を開いた。
「一度、私の身の上についてきちんと話をしておこうと思ってね」
それは、ルカとジョゼフとしても聞いておきたい事柄だった。
ラナキア洞窟最深部からここまでの道中、アレクシアの身の上については殆ど話をしてこなかった。アレクシアがそれを望んでいない事が何となく察せられたからだ。修道騎士達の見ている前ではあまり語るべきではないと思っていたのかもしれない。
「まず第一に、私の身の上を隠していた事を謝罪しよう。…すまない」
アレクシアは顔を俯かせた。ルカは慌てて、
「そ、そんな、謝らないでくださいよ!」
と言った。
「アレクシアさんが身分を隠してた理由、なんとなく分かりますから。えっと、多分ですけど…王族だって知れたら武者修行に支障があるから…ですよね?だったら、仕方ないですよ」
「その通りだ。だが、君にはもっと早く話しておいても良かったのではないかと思っている。ただ、その…言い出すきっかけが掴めなかったのと…王族だと知られれば、距離を置かれるのではないかと思って…」
アレクシアは相変わらず顔を俯かせている。
「そんな、距離を取ったりなんてしませんよ。だってアレクシアさんはアレクシアさんじゃないですか。僕は…アレクシアさんが王族でも、そうじゃなくてもアレクシアさんに対する気持ちは変わりません。大切な…仲間だと思ってます」
仲間。その言葉が自然と口から紡がれた。そうだ、アレクシアは仲間だ。共に苦難を乗り越えて来たかけがえのない存在。それは、アレクシアの身分がどんなものであろうと変わらない。
強力な魔物と出くわさなかったという事もあるが、ジーナを始めとする修道騎士たちが積極的に戦ってくれたという点も大きい。ジーナはかなり優秀な魔術師だったし、従騎士たちもDランク程度の冒険者の実力はあった。ちなみに、ゲルトアルヴスも従騎士たちによって運ばれた。体を布で包まれ、二人一組で運搬されるゲルトアルヴス。それはさながら、巨大な置物であるかのようだった。
騎士団支部でルカたちは部屋を与えられた。おそらく来客者用の宿泊室だ。ルカとジョゼフはふたりでひとつ。アレクシアは個室だ。
「いやあ、久しぶりにベッドで眠れるぜ」
とは、ジョゼフの言葉だ。
「そうですね。牢獄じゃなくて、きちんとしたベッドで眠れて良かったです」
そう返したルカに、
「違いねえ。運が悪けりゃ、今頃牢屋の中だったからな」
とジョゼフは笑いながら返した。ルフェール修道騎士団支部へと到着した初日は、ゆっくりと休んで一日を過ごした。
翌日。部屋に届けられた朝食を食べ終えた頃、部屋の扉がノックされた。修道騎士団が事情聴取に来たのだろうか。そう思い、
「どうぞ」
と部屋の外に声をかける。すると、そこから現れたのは修道騎士団ではなく…アレクシアだった。
「お邪魔させてもらってもいいかな」
「アレクシアさん…はい、勿論です」
ルカはアレクシアを部屋へと招き入れる。彼女は部屋に備え付けられている椅子に腰をかけた。ルカも椅子に腰かける。ジョゼフは、ベッドに座っている。
アレクシアは正面に座るルカと、やや離れた位置にいるジョゼフ。それぞれに視線を向け…口を開いた。
「一度、私の身の上についてきちんと話をしておこうと思ってね」
それは、ルカとジョゼフとしても聞いておきたい事柄だった。
ラナキア洞窟最深部からここまでの道中、アレクシアの身の上については殆ど話をしてこなかった。アレクシアがそれを望んでいない事が何となく察せられたからだ。修道騎士達の見ている前ではあまり語るべきではないと思っていたのかもしれない。
「まず第一に、私の身の上を隠していた事を謝罪しよう。…すまない」
アレクシアは顔を俯かせた。ルカは慌てて、
「そ、そんな、謝らないでくださいよ!」
と言った。
「アレクシアさんが身分を隠してた理由、なんとなく分かりますから。えっと、多分ですけど…王族だって知れたら武者修行に支障があるから…ですよね?だったら、仕方ないですよ」
「その通りだ。だが、君にはもっと早く話しておいても良かったのではないかと思っている。ただ、その…言い出すきっかけが掴めなかったのと…王族だと知られれば、距離を置かれるのではないかと思って…」
アレクシアは相変わらず顔を俯かせている。
「そんな、距離を取ったりなんてしませんよ。だってアレクシアさんはアレクシアさんじゃないですか。僕は…アレクシアさんが王族でも、そうじゃなくてもアレクシアさんに対する気持ちは変わりません。大切な…仲間だと思ってます」
仲間。その言葉が自然と口から紡がれた。そうだ、アレクシアは仲間だ。共に苦難を乗り越えて来たかけがえのない存在。それは、アレクシアの身分がどんなものであろうと変わらない。
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