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ラナキア洞窟-SECRET BOSS-13
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(僕の力じゃ…無理だ)
例えアレクシアの奥義で再生能力を削ろうと。例え魔力増強で自身の全魔力をぶつけようと。邪神の牙を破壊する事などできない。椿にはそれが分かってしまった。
――逃げるべきか。
倒せないのならば逃げるしかない。だが、アレクシアは練気を急激に消費したため動けない。彼女を抱えてゲルトアルヴスから逃げる事ができるのか。
(無理だ…)
黒炎で追撃されればそれを防ぐ事はできないだろう。つまり、全滅だ。ゲルトアルヴスは倒せず、ルカたちは死亡。最悪の結末だ。
(いや、まだ終わりじゃない!出来る事はある…!)
一か八か、駄目元で核に魔術を打ち込む。やはり、それしかない。
(当初の予定通り、炎属性の魔術で核を焼き尽くす…!)
ルカの使用できる攻撃魔術は炎、風、水、土の四属性。炎は焼却、風は吹き飛ばし、水は貫通、土は衝撃。核を破壊するならば炎属性の魔術が最も有効だろう。
(いや、本当にそうなのか…?)
ルカは考える。一秒にも満たない僅かの間。少年の頭脳は高速で回転し…ひとつの答えを導き出した。
(ゲルトさんの特性…再生すればするほど防御力が強化される。なら、これなら…だけど…!)
その答えは、あくまで推測だ。全くの見当違いという可能性も高い。もしそうだとすれば、全滅は必至。
(でも、どっちにたって…普通の攻撃魔術じゃ倒せないんだ。やるしかない!)
少年は覚悟を決めた。そして、核に手を当て…詠唱を開始する。
「清浄なる力よ、傷を癒せ」
「なっ!?」
その詠唱を聞き、ジョゼフは驚愕の表情を浮かべた。彼も聞き覚えのある詠唱。それは、攻撃魔術のための呪文ではない。ルカの詠唱が終了し、魔術が発動する。
「『ホーリー・トリートメント』」
初伝魔術、『ホーリー・トリートメント』。それは――対象の治癒力を高め、肉体の損傷を回復するダメージ回復魔術。
「ル、ルカ君、何やって…」
ジョゼフがそう呟いた時には、ゲルトアルヴスの体は異常な速さで再生していた。切断された肩から脇腹にかけて肉のようなものが盛り上がり…それがゲルトアルヴスの上半身を形作る。そして、最後に首、そして顔が再生した。
「はは…!」
再生されたゲルトアルヴスの顔に嘲笑が浮かぶ。
「敵である私に回復魔術とは…錯乱しましたか?いや、私に媚びを売って助かろうという算段ですか?ははは。なるほどなるほど」
ルカはゲルトアルヴスの胸に手を当てたまま、地面に俯いている。それはゲルトアルヴスに対し怯えているようにも…服従を誓っているようにも見えた。
「いいでしょう。服従を誓うというのであれば、あなただけは命を助けてあげましょうか。ただし、この厄介な女剣士は始末させていただきますが…」
そう言って、ゲルトアルヴスは足元に倒れるアレクシアを踏みつけようと足を上げる。いや、そうしようとしたのだが――上げる事ができなかった。
「ん…?」
ゲルトアルヴスの眉根が寄る。何故だが、体が重い。それ故に足を上げる事ができなかったのだ。
いや――正確に言えば重いのではなく、固い。例えば関節を稼働しない鎧を着せられたらこのような状態にになるのではないかと思える程に…固い。
「なんだ、これは…貴様、何を…」
ルカに視線を向ける。少年は、未だゲルトアルヴスの胸に手を当てていた。そして――魔力を送り続けている。ゲルトアルヴスの回復を促す魔力を。
「貴様…まさか…!」
少年は顔を上げ…ゲルトアルヴスを睨みつけた。
彼の狙いはただひとつ。ゲルトアルヴスの『過剰回復』。そして、
「わ、私の体が…体が…!」
ゲルトアルヴスの顔に、始めて恐怖の色が浮かぶ。彼の体は、回復し続けていた。そして、それに伴う硬化により――全身が、固められようとしていた。まるで石像の如く。
例えアレクシアの奥義で再生能力を削ろうと。例え魔力増強で自身の全魔力をぶつけようと。邪神の牙を破壊する事などできない。椿にはそれが分かってしまった。
――逃げるべきか。
倒せないのならば逃げるしかない。だが、アレクシアは練気を急激に消費したため動けない。彼女を抱えてゲルトアルヴスから逃げる事ができるのか。
(無理だ…)
黒炎で追撃されればそれを防ぐ事はできないだろう。つまり、全滅だ。ゲルトアルヴスは倒せず、ルカたちは死亡。最悪の結末だ。
(いや、まだ終わりじゃない!出来る事はある…!)
一か八か、駄目元で核に魔術を打ち込む。やはり、それしかない。
(当初の予定通り、炎属性の魔術で核を焼き尽くす…!)
ルカの使用できる攻撃魔術は炎、風、水、土の四属性。炎は焼却、風は吹き飛ばし、水は貫通、土は衝撃。核を破壊するならば炎属性の魔術が最も有効だろう。
(いや、本当にそうなのか…?)
ルカは考える。一秒にも満たない僅かの間。少年の頭脳は高速で回転し…ひとつの答えを導き出した。
(ゲルトさんの特性…再生すればするほど防御力が強化される。なら、これなら…だけど…!)
その答えは、あくまで推測だ。全くの見当違いという可能性も高い。もしそうだとすれば、全滅は必至。
(でも、どっちにたって…普通の攻撃魔術じゃ倒せないんだ。やるしかない!)
少年は覚悟を決めた。そして、核に手を当て…詠唱を開始する。
「清浄なる力よ、傷を癒せ」
「なっ!?」
その詠唱を聞き、ジョゼフは驚愕の表情を浮かべた。彼も聞き覚えのある詠唱。それは、攻撃魔術のための呪文ではない。ルカの詠唱が終了し、魔術が発動する。
「『ホーリー・トリートメント』」
初伝魔術、『ホーリー・トリートメント』。それは――対象の治癒力を高め、肉体の損傷を回復するダメージ回復魔術。
「ル、ルカ君、何やって…」
ジョゼフがそう呟いた時には、ゲルトアルヴスの体は異常な速さで再生していた。切断された肩から脇腹にかけて肉のようなものが盛り上がり…それがゲルトアルヴスの上半身を形作る。そして、最後に首、そして顔が再生した。
「はは…!」
再生されたゲルトアルヴスの顔に嘲笑が浮かぶ。
「敵である私に回復魔術とは…錯乱しましたか?いや、私に媚びを売って助かろうという算段ですか?ははは。なるほどなるほど」
ルカはゲルトアルヴスの胸に手を当てたまま、地面に俯いている。それはゲルトアルヴスに対し怯えているようにも…服従を誓っているようにも見えた。
「いいでしょう。服従を誓うというのであれば、あなただけは命を助けてあげましょうか。ただし、この厄介な女剣士は始末させていただきますが…」
そう言って、ゲルトアルヴスは足元に倒れるアレクシアを踏みつけようと足を上げる。いや、そうしようとしたのだが――上げる事ができなかった。
「ん…?」
ゲルトアルヴスの眉根が寄る。何故だが、体が重い。それ故に足を上げる事ができなかったのだ。
いや――正確に言えば重いのではなく、固い。例えば関節を稼働しない鎧を着せられたらこのような状態にになるのではないかと思える程に…固い。
「なんだ、これは…貴様、何を…」
ルカに視線を向ける。少年は、未だゲルトアルヴスの胸に手を当てていた。そして――魔力を送り続けている。ゲルトアルヴスの回復を促す魔力を。
「貴様…まさか…!」
少年は顔を上げ…ゲルトアルヴスを睨みつけた。
彼の狙いはただひとつ。ゲルトアルヴスの『過剰回復』。そして、
「わ、私の体が…体が…!」
ゲルトアルヴスの顔に、始めて恐怖の色が浮かぶ。彼の体は、回復し続けていた。そして、それに伴う硬化により――全身が、固められようとしていた。まるで石像の如く。
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