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ラナキア洞窟攻略6
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結局、ボグリザードは岩陰から次々に出現し、最終的には15体ほどが現れた。しかし、ルカたちはさしたる苦労もなく撃破する事ができた。
アレクシアとジョゼフが前衛としてボグリザードの相手を行い、その間にゲルトが炎属性の魔術を詠唱する。ルカは中衛として時に剣で戦い、時に炎属性の魔術を使用する。数日前に結成したばかりのパーティにしては上手く連携が取れていた。
アレクシアはもちろん、ジョゼフとゲルトの二人もそれぞれ前衛と後衛として申し分のない働きをした。
前衛としてのジョゼフの実力は、アレクシアに劣る。だが、冒険者として長年過ごしてきただけあって連携して戦うという事が非常に上手かった。
アレクシアが近くにいる場合は、彼女の邪魔にならないよう突き技主体で戦闘を行う。逆に、ボグリザードが後衛を狙う動きを見せれば、槍を振り回して敵を薙ぐ、叩くなど攻撃面積の広い動きで敵を牽制する動きを見せた。
ゲルトの方は、常に淡々としていた。ボグリザードに対して最も効果の高い炎属性の攻撃魔術、それも中伝魔術をただひたすら撃ち続ける。それだけだ。修伝の攻撃魔術を使用しなかったのは、ボグリザードに対してオーバーキルになるからだ。中伝で十分ならば、詠唱に時間のかかる修伝は使用しない。合理的な判断と言えよう。
危なげない勝利だ。このメンバーならば、Dランク程度の魔物であれば束になってかかってきた所で問題はない。ルカはそう確信した。
ボグリザードを撃破し、さらに地面の溝に沿って進む。途中、ケイヴニュウト、ボグリザード、ニードルバットなどの魔物に遭遇したが、いずれも1匹か多くても3匹程度小さな群れであったので問題なく対処できた。
ちなみに、ニードルバットとはサソリのような尖った尾を持つコウモリだ。魔物としてのランクはD-。動きは速いが、サソリと違って尾に毒はない。
さらにしばらく進むが、洞窟の深部へはまだ到達する気配はない。一行としてはまだ体力に余裕があったが、今日はこの辺りでキャンプを張る事にした。
キャンプを張ったのは、岩壁に空いた穴の中である。高さ4m、奥行き、幅が5m程度の岩穴。キャンプを張るのにもってこいの場所だ。
「それじゃあ、夕食を作りますね」
ルカは腰を落ち着ける間もなく、穴の外で夕食の準備を開始した。
まずは背嚢から木炭を取り出し、炎属性の初伝魔術『ハンド・フレイム』で火をつける。その上に、半分に斬ったカルキノスの鋏をかざして焼く。それだけだ。
ちなみに、カルキノスの鋏を斬るのはアレクシアに手伝ってもらった。
ルカとアレクシアが夕食を作っている間、ジョゼフとゲルトはキャンプの準備だ。
まずはジョゼフが岩穴の中を点検する。天井や壁を触り、崩落の危険性がない事を確認。次に、ゲルトが岩穴とその出口周辺に簡易的な魔方陣を描く。そして詠唱を行った。
「ここは我が館、我が領域。侵す者あらば天なる光が姿を照らさん『サーベイランスフィールド』」
中伝魔術、サーベイランスフィールド。この術の発動領域に魔物が侵入すると術者に知らせてくれる領域魔術だ。
そうやってジョゼフとゲルトがキャンプを整えている間に、岩穴の外でルカとアレクシアは夕食の準備を終えていた。本日の献立は、カルキノスの鋏焼きと携帯保存食のビスケットだ。
カルキノスの鋏は、その外殻がちょうど鍋の代わりになっていた。そのため、焼くというよりは煮るに近い料理だ。ルカの火加減は絶妙で、カルキノスの鋏の中の身はムラなく火が通っている。
最初、ジョゼフとゲルトはカルキノスの鋏を食べるという事についてやや否定的な様子だった。冒険者の中には、魔物を食べる事に対して積極的な人間と消極的な人間がいる。ルカやアレクシアは積極的、ジョゼフとゲルトは消極的な部類に入るのだろう。だが、カルキノスの鋏に火が通り、食欲をそそる香りが漂うと…ジョゼフの腹はぐう…と物欲しげな音を立てた。
結局、ジョゼフは自身の食欲には勝てず…ゲルトも、何がなんでも魔物を食べるのが嫌、という拘りもなかったようで、四人でカルキノスの鋏を食す事になった。
鋏の外殻をそのまま皿代わりにして、木製のスプーンで身をほじる。そこで、
「良かったらこれをかけてみてください」
と、ルカが背嚢の中から小さな瓶を取り出した。
「これは…?」
アレクシアが瓶を受け取り、その蓋を開けた。少しツンとする匂いが漂ってくる。
「酢です。蟹にお酢をかけると美味しいんですよ」
「…いっつも酢を持ち歩いてんのか?」
ジョゼフがルカの顔をまじまじと見ながら言った。
「はい。調味料は色々持ってた方がいいですから」
「ふうむ…」
と、ジョゼフは感心したように唸った。冒険者というのは大雑把な性格をした人間が多い。魔術師の中には几帳面な人間もいるが、そういった人物はだいたい偏屈な性格で他者とあまり関わりたがらない。ルカのように細々とした事にまで気を配り、他者を思いやれる人間というのは珍しかった。
「…こりゃあ、将来大物になるかもな」
ボソリと呟くジョゼフ。
「え、何か言いましたか?」
「いや…なんでもない。それより、俺にもその酢を貸してもらえるか?」
アレクシアから酢の入った瓶を渡され、それをカルキノスの鋏に垂らして身を口に運ぶジョゼフ。
「うめえ…!」
と一言唸り、彼は貪るようにカルキノスを口に運び続けた。
アレクシアとジョゼフが前衛としてボグリザードの相手を行い、その間にゲルトが炎属性の魔術を詠唱する。ルカは中衛として時に剣で戦い、時に炎属性の魔術を使用する。数日前に結成したばかりのパーティにしては上手く連携が取れていた。
アレクシアはもちろん、ジョゼフとゲルトの二人もそれぞれ前衛と後衛として申し分のない働きをした。
前衛としてのジョゼフの実力は、アレクシアに劣る。だが、冒険者として長年過ごしてきただけあって連携して戦うという事が非常に上手かった。
アレクシアが近くにいる場合は、彼女の邪魔にならないよう突き技主体で戦闘を行う。逆に、ボグリザードが後衛を狙う動きを見せれば、槍を振り回して敵を薙ぐ、叩くなど攻撃面積の広い動きで敵を牽制する動きを見せた。
ゲルトの方は、常に淡々としていた。ボグリザードに対して最も効果の高い炎属性の攻撃魔術、それも中伝魔術をただひたすら撃ち続ける。それだけだ。修伝の攻撃魔術を使用しなかったのは、ボグリザードに対してオーバーキルになるからだ。中伝で十分ならば、詠唱に時間のかかる修伝は使用しない。合理的な判断と言えよう。
危なげない勝利だ。このメンバーならば、Dランク程度の魔物であれば束になってかかってきた所で問題はない。ルカはそう確信した。
ボグリザードを撃破し、さらに地面の溝に沿って進む。途中、ケイヴニュウト、ボグリザード、ニードルバットなどの魔物に遭遇したが、いずれも1匹か多くても3匹程度小さな群れであったので問題なく対処できた。
ちなみに、ニードルバットとはサソリのような尖った尾を持つコウモリだ。魔物としてのランクはD-。動きは速いが、サソリと違って尾に毒はない。
さらにしばらく進むが、洞窟の深部へはまだ到達する気配はない。一行としてはまだ体力に余裕があったが、今日はこの辺りでキャンプを張る事にした。
キャンプを張ったのは、岩壁に空いた穴の中である。高さ4m、奥行き、幅が5m程度の岩穴。キャンプを張るのにもってこいの場所だ。
「それじゃあ、夕食を作りますね」
ルカは腰を落ち着ける間もなく、穴の外で夕食の準備を開始した。
まずは背嚢から木炭を取り出し、炎属性の初伝魔術『ハンド・フレイム』で火をつける。その上に、半分に斬ったカルキノスの鋏をかざして焼く。それだけだ。
ちなみに、カルキノスの鋏を斬るのはアレクシアに手伝ってもらった。
ルカとアレクシアが夕食を作っている間、ジョゼフとゲルトはキャンプの準備だ。
まずはジョゼフが岩穴の中を点検する。天井や壁を触り、崩落の危険性がない事を確認。次に、ゲルトが岩穴とその出口周辺に簡易的な魔方陣を描く。そして詠唱を行った。
「ここは我が館、我が領域。侵す者あらば天なる光が姿を照らさん『サーベイランスフィールド』」
中伝魔術、サーベイランスフィールド。この術の発動領域に魔物が侵入すると術者に知らせてくれる領域魔術だ。
そうやってジョゼフとゲルトがキャンプを整えている間に、岩穴の外でルカとアレクシアは夕食の準備を終えていた。本日の献立は、カルキノスの鋏焼きと携帯保存食のビスケットだ。
カルキノスの鋏は、その外殻がちょうど鍋の代わりになっていた。そのため、焼くというよりは煮るに近い料理だ。ルカの火加減は絶妙で、カルキノスの鋏の中の身はムラなく火が通っている。
最初、ジョゼフとゲルトはカルキノスの鋏を食べるという事についてやや否定的な様子だった。冒険者の中には、魔物を食べる事に対して積極的な人間と消極的な人間がいる。ルカやアレクシアは積極的、ジョゼフとゲルトは消極的な部類に入るのだろう。だが、カルキノスの鋏に火が通り、食欲をそそる香りが漂うと…ジョゼフの腹はぐう…と物欲しげな音を立てた。
結局、ジョゼフは自身の食欲には勝てず…ゲルトも、何がなんでも魔物を食べるのが嫌、という拘りもなかったようで、四人でカルキノスの鋏を食す事になった。
鋏の外殻をそのまま皿代わりにして、木製のスプーンで身をほじる。そこで、
「良かったらこれをかけてみてください」
と、ルカが背嚢の中から小さな瓶を取り出した。
「これは…?」
アレクシアが瓶を受け取り、その蓋を開けた。少しツンとする匂いが漂ってくる。
「酢です。蟹にお酢をかけると美味しいんですよ」
「…いっつも酢を持ち歩いてんのか?」
ジョゼフがルカの顔をまじまじと見ながら言った。
「はい。調味料は色々持ってた方がいいですから」
「ふうむ…」
と、ジョゼフは感心したように唸った。冒険者というのは大雑把な性格をした人間が多い。魔術師の中には几帳面な人間もいるが、そういった人物はだいたい偏屈な性格で他者とあまり関わりたがらない。ルカのように細々とした事にまで気を配り、他者を思いやれる人間というのは珍しかった。
「…こりゃあ、将来大物になるかもな」
ボソリと呟くジョゼフ。
「え、何か言いましたか?」
「いや…なんでもない。それより、俺にもその酢を貸してもらえるか?」
アレクシアから酢の入った瓶を渡され、それをカルキノスの鋏に垂らして身を口に運ぶジョゼフ。
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