きっとこの世はニャンだふる♪

Ete

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ついに家族になりました!

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車からバスケットのまま降ろされて、俺は家の中に連れて行かれた。
心拍数急上昇!
ドキドキが止まらない。
部屋のドアが閉められて、バスケットの入口がそーっと開けられた。

「今度は何するにゃ?」
俺は警戒しながら入口を覗いてみる。
顔を出すと、そこは居間で、両親や妹が俺に注目していた。
驚いた俺は捕まらないように、急いでバスケットから飛び出して、テーブルの下に身を隠した。

「クロ、クロや。お帰り」
母親が覗き込みながら俺を呼んでいる。

お帰り?

「ほれ、今日からここがお前の家だよ」
妹が言う。

なんと⁉︎
俺の家と言ったか?
まだ汚れてるぞ?
いいのか?本当にいいのか?

「暗いところに居ると、目だけが光って体が見えないなぁ(笑)」
妹が笑う。
黒猫だから、暗闇に潜むと目だけが光る。
俺はしばらくジッとしていた。

そのあと、トイレ、寝床、ご飯の場所が決められた。

そして段ボール箱から出されたでっかい代物!
こ…これは⁉︎

にゃんと⁉︎
キャットタワーじゃないか~!
猫じゃらし‼︎
クッション!
穴つきボックス!
爪研ぎまで付いている!

俺専用のキャットタワ~!
最高~‼︎

いやいやいや、
喜んでる場合じゃない。
つい嬉しくなってしまった。

「ほ~ら。ご飯だよ~!」

⁉︎
ニャニャにゃんと‼︎
山盛りキャットフード!
いつの間にか、ご飯から変わっている‼︎
買ってきてくれたんだ⁉︎
しかもいい匂い‼︎

ゴキュリ…。
俺は唾を飲んだ。

ああ、足が勝手に…。
一歩、また一歩…そしてさらに1歩 2歩…

…散歩~♪いや、そう散歩なんだよ~。
俺は『ご飯が気になってる訳じゃありませ~ん』みたいな顔をして
低姿勢でキャットフードまでゆっくり近づき…

「いっただきまーす!」
ニャゴニャゴニャゴ
ニャゴニャゴニャゴ…ニャゴニャゴニャゴ…
うみゃい!

その姿をみんなが嬉しそうに見守っていたことなんて、全然気が付かなかった。
食べたらまた速攻でテーブルの下に潜り込む。
「ゲフッ」
腹一杯だ。

今度はトイレ行きたいなぁ。
そう言えば縁側に用意してあったよな。

我慢してると余計に行きたくなる。
ここで失敗する訳にはいかない!
俺は縁側目掛けてスタコラと走り出した!
場所は自分の家だから目を瞑っていてもバッチリ分かる!

「お?どこか行くぞ?」
妹が後を付いてくる。

俺のトイレ事情を覗くとは‼︎失礼な!

なんて言ってる間に漏れそうになる。
トイレみっけ‼︎

「…………」
ほぉ~…スッキリ。

ホリホリ…こっちもホリホリ…
隠しておかないと臭いがね。

「うっわっ~。クロったら一気にトイレまで成功したわ!」
妹が感心している。

ふふふ。驚いたか?
俺様はただの猫ではにゃい!
那智和彦の記憶を持った…やっぱただの猫か。

でも違う!
俺は今日から那智家の一員!
那智クロ!であ~る‼︎

那智クロ…ナチクロ…
ちょっとイマイチにゃのだ。

トイレが終わって居間に戻ろうとすると、仏間が見える。
そうだ。祖父さん、祖母さんに挨拶しとくか?
俺は仏壇の前に座って遺影を見上げた。

「祖父さん、祖母さん、俺、今日からここの家族になったよ!見えてる?」

すると頭の中に、祖父さんの声がしてきた。

『よかったな和彦!私たちと一緒に、この家を守っていこうな』

祖父さん笑ってるように見える。
祖母さん、…笑ってないな。
夢とか突然出てくるのだけはやめてくれよ。

挨拶が終わると居間に戻った。
妹が話したのか、母親も俺がトイレを成功させたことをすごく喜んでくれた。
でもまだ撫でてもらうほど距離は近くない。
そこはおいおいに。

またこの家に戻って来れるとは夢のようだ。
猫とは言え、家付き、飯付き、トイレ付き。
こんなありがたい事ってあるのかな。

これから俺は、みんなを守って、癒しを与える側になるぞ‼︎

えっへん!
今日から俺は、この家の家族でっす‼︎


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