きっとこの世はニャンだふる♪

Ete

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母を探して

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俺は無我夢中で逃げた。
線路を飛び越えて、真っ暗な道を思いっきり走った。
背中がヒリヒリする。
傷が深く無ければいいが。

猫集会はやばい。
知らないよそ者はコテンパンにやられてしまうなぁ。
ついつい、見入っちまった。


一息走ったところで時折立ち止まって振り返る。
どうやら追手はいない。

ホッ…

ここはどこだ?
結構遠くまで走ってしまった。
見えると言っても草ばかり。
明るくなるまで何処か身を隠そう。
それにしても腹が減ったぁ~‼︎

俺はよその家の納屋で夜を明かした。
朝になってこっそり外へ出てみる。
製材所からは遠くなってしまったが、戻ればまた行ける距離。
背中は少し痛んだが、さほどでもなさそうだ。

さて、どうする?
もう一回行ってみるか?
それともやめておくべきか。

せめて母親だとハッキリ知りたかった。
産んでくれなかったら俺も転生できなかっただろうし。

俺はやっぱり母親に会って話を聞きたい。

俺たちをなぜ置き去りにしたかも知りたい。
そしたらチャチャに会った時に教えてやれる。
でもどうやってあそこへ潜り込む?

裏から行ったのがマズかったか。
いっそのこと堂々と正面から行くってのはどうだ。
よく日向ぼっこしている奴らがいる。
人の…いや、猫の良さそうなのを掴まえて聞いてみるか?
子猫でもいい。

ダメもとでやってみようか…。

俺は万が一の時の逃げ場とか考えてから、昼間の製材所の様子を見に行ってみた。
抜き足差し足…忍び足…。
猫の足音なんて聴こえないだろう。
肉球素晴らしい!

俺は草の間に身を潜め、猫たちの動向を探る。
親子と思われるのが3匹…寝転んでるのは白黒…?デカいな…。
白は見当たらない。
あっちの杉の木が積んである上にいるのは…黒。
そこからみんなを見てるのか?
って事は親父は大将か?

茶トラは居ない。
三毛猫も居ない。

どうしよう。
迷った時はやめておく!
人間の時の教訓‼︎
今日はやめておこう。

俺は翌日出直すことにした。

翌朝は小雨。
マジか…。
腹が減ったから何処かで何か食べないと。
水はたくさんあるが、食べ物はそうもいかない。

人間の記憶がある自分がゴミあさり…。
残飯…
ネズミ…
トカゲ⁈

うえぇええええええええ‼︎

今までいっぱい贅沢してきたから今更食えね~‼︎

…なんて言ってられない。
残飯って言っても最近はみんなゴミに出してしまうし、ゴミも鍵のかかる場所に入れ込まれる。
生きるって難しい。

そういえば!

この近くに一人暮らしをしているおばさんの家がある。
もしかしたら、何かくれるんじゃないか?
確か穏やかで優しい人だし。

ダメ元で行ってみよう‼︎

俺は濡れながら、スタコラと小走りでその家に向かった。
玄関先でニャーニャー鳴いてみたが、留守なのか?誰も出てこない。
何処かへ出掛けているのかもしれない。
俺は物陰に隠れて帰って来るかも分からない人を待った。

夕方になって雨も上がった。
そこへおばさんの足音‼︎
帰って来た!
俺はまたニャーニャー鳴いてみる。

すると
「あれ、猫ちゃん。どこから来たの?」
と来た!

イケる‼︎
俺は足元にスリスリと擦り寄って、猫撫で声ってやつを繰り返した。

「人懐っこい仔ね。どうしたの?お腹空いたの?」

そーそー!
そーなんです‼︎
そーなんですよ!

俺はさらに鳴いてみた。

「ちょっと待っててね」

おばさ~ん♡

待っていると、おばさんは茶碗にご飯を入れて持って来てくれた!
雑魚が載ってる⁉︎
ありがとうございます‼︎

アチチッ!

「ああ、ごめんね。熱かったか?炊飯器から出したてだったから」
おばさん笑ってる。
俺、猫舌だから。
でもありがたく食べるよ!

俺はハフハフ言わせながら全部たいらげた。
おばさんは食べ終わるまで、俺を何度も撫でてくれた。
嬉しいにゃ。
皿は綺麗に舐めといた。

「またおいで。でもみんなには内緒だからね。野良猫にエサやったって叱られるから」
絶対言いませんニャ‼︎

俺は何度も振り向いてその場を去った。
ありがたい!本当にありがたい!
その夜は家の軒下に入り込み、ゆっくり寝ることが出来た。

朝がきて、天気も晴れ。
腹も大丈夫!

今日も製材所に行くぞ!




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