きっとこの世はニャンだふる♪

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長旅の準備

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 今日は休日。
朝から嫁の叶和子(かなこ)と一緒に買い物に出かける。
特に欲しいものがあった訳ではないが、たまには嫁のご機嫌取りもしておかないと。
百均とか、衣類とか、適当にクルクル見て回った。

 シャツでも買うかなぁ~。
自分の好きな色は白とか青、あとは薄いピンク系。
一番無難。
長袖でも一枚買っとくか?

どれにしようか…。


目に入ったのは『黒いシャツ』

何故かそれから目が離せない。
こんなに種類があって何で黒いシャツ?
よく分からないが すごく欲しい。

「黒 買うの?」叶和子が不思議そうに聞く。

そりゃそうだ。
黒なんて制服か喪服ぐらいしか着たことがない。


「うん、これ買うわ」


結局買ってしまった。

でもこのシャツ 自分がいつ着るのか全く想像が出来ない。
何で買ってしまったんだろう?



 翌々日。
自分は休み、叶和子は仕事だった。
いつもは嫁が朝食の準備から片付けまでしてくれるのだが
今日は自分がしなくてはならない衝動に駆られる。

「俺が片付けしとくから。職場にも送って行ってやる」

 叶和子がキョトンとしている。
そう、自分で言うのもなんだが、
いつもはこんなことは言わないし、こんなに優しくもない。

 だけど、とにかく『こうしなければいけない』と
俺の中の『俺』がそう言っているんだ。

 先に叶和子を職場に送る。
夕方には迎えに行くと約束をして別れた。
アパートに戻って皿を洗う。
ついでに流しも綺麗にしておこう。
洗面所にトイレ、床も掃除機をかけよう。
そうだ!天気もいいし、車も2台洗っておくか。

 俺はとにかく、気がつく場所をあちこち綺麗にしまくった。
普段絶対しない事だが…
何故か身体が勝手に動く。
「しておかなくてはいけない」んだ。

 その後、行きつけの病院を受診する。
別に今日でなくてもいいけど行っておこう。
いつものように採血をしてもらい、先生にお礼の挨拶をした。

この後は…
そうだな、実家に行くか?
うん。実家に行こう。

母親に会いに行こう。

 俺はバイクに乗って実家に向かった。
家に帰ると母親は夕飯の準備にかかっていた。
もうそんな時間か。

少しつまみ食いする。
相変わらず料理が上手い。
お腹が空いていたからか?しっかり食べてしまった。

 その後 母親と古い家の前で立ち話をした。
「屋根もボロボロになってきているし、雨漏りも心配だからいつか修理しないとな」
「それから蜂が巣をするから気をつけろよ」
そう母親に話す。

 自分が修理するからとは言わなかった。
練習場で使ってるのは俺だし、俺が直すのが本当だと思うが?
何でそう言わないんだろう?
今日の俺はどこか変だ。

 17時になり、叶和子を迎えに行かなくてはいけない。

「じゃあ今日は帰るわ。また戻ってくるから」

バイクにまたがり、そう言って手を振って母親と別れた。
母親は俺が見えなくなるまで見送っていた。


 家を出てから10分ぐらい経った頃、急にあの胸のザワザワが襲って来た。
「何だ?」変な違和感。

対向車のライトが異常に眩しい。
馴染みの道が、何となく歪みだす。

        

イッタイ ナニガ オコッテイルノカ?
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