そして兄は猫になる

Ete

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Happy birthday!

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葬儀の翌月、兄の誕生日が待っていた。
生きていれば、義姉や仲間、もしくは家族みんなで、ワイワイ賑やかにお祝いしていた事だろう。
今年は主役のいない、寂しいイベントになってしまった。
一体どうするんだろう?
祝う?それともやめとく?


そんな事を考えていたら、
「お仏壇は実家にあるし、ここでみんなでやりませんか?」と義姉の方から提案があった。もちろんみんな賛成~!

誕生日は平日だったので、みんな都合が悪く、一週前の日曜日にお祝いするか?ってことになった。
両親と義姉、私と夫と娘、そして『兄』の7人(笑)

「必要なものは私が買ってきます!」
義姉が張り切っている。
兄の好きなものは、義姉が一番よく知ってるもんね。

兄は油物とか甘いものとかコッテリしたものが好きだった。
意外に餡子とかも好きだったなぁ。
はやい話が何でも食べてた。

そう言えば猫舌だったよな?

お茶とかラーメンとか鍋とか…子どもみたいにフーフーしてたなぁ?
「どーせ俺は猫舌だ!」なんて、猫が顔を洗うカッコして見せたり、ちょっと可愛いとこもあった。
逆に私は熱いものが好きで、たまに口の中をヤケドしたり…
うん。体には良くないね(笑)


当日 義姉はたっぷりと、本当にたっぷりとお買い物をして来た。
車から次々と荷物が下ろされる。
ケーキでしょ~?寿司でしょ~?唐揚げにポテト、お肉にパンにお菓子にコーラ♪それから果物も!パイナップルよく食べてたからね~!」

そうだ、確かにパイナップル食べてた食べてた。
みかんは甘いのが好きだったな。
酸っぱいのは「お前食べろ」って食べかけを義姉に全部渡したり。
色々わがままは人だったわ。

それにしてもこの量…
ウップ…胸焼けしそうだ…。

「これ何人分?」
「お兄ちゃんは いつもいっぱい食べてたでしょ?だから8人分ぐらいかな」
義姉はサラッと言った。

……はははははははは……8人分以上ありそうですけど~?

料理は机からはみ出る程のボリューム。
皿もコップも乗り切らず、別のテーブルも用意。
ケーキはホールではなく、色んな種類をたーくさん!

「好きなの選んでね!」義姉は嬉しそうだった。
まるでケーキ屋さんのようだ。
兄を思いながら 選ぶのきっと楽しかっただろうな。
本人がいれば、もっと楽しかっただろうに。

兄の仏前に、お皿に取り分けたケーキや好物を山ほど載せて ドーン!と置く。
パーティの始まりダァ!
「んじゃみんなで歌いますか~?」私が言うと、すぐハッピーバースデーの歌って分かったみたい。

みんなで兄の遺影に向かい、ハッピーバースデーを歌う。
名前を言うたび、写真に向かって両手でヒラヒラ。
歌い終わるとみんなで「おめでとう!」と拍手した。

「生きていたらなぁ…」母が呟く。
「そこに一緒に居ますから。さぁ食べましょう!」
義姉も気を使う。

みんなで兄の好物いただきま~す!

モグモグ モグモグ モグモグ モグモグ…
ひたすらモグモグ…
…ゲップ!

「まだありますよ~♪」

嬉しいけど。も~食べれませ~ん(汗)

コリャお兄太るわけだ(笑)

「写真撮ろうよ」私は携帯を出した。

「後ろの方でお兄が一緒に写ってたりしてね」
「ありそう~(笑)」
みんなでジョークを言いながら適当にポーズ。

私も兄が写るんじゃないかと、内心期待しながらパシャリ!
ま、そりゃないわよね。

どれどれ~?


…これは…何ですか…?


「何?写った⁉︎」
義姉が覗き込む。

みんなで撮った写真の上の方に、何やらスーッと光が入っている。
これって…何?
霊ですか?

もう一回パシャリ。

「お⁉︎」

今度は白い球体のようなものが何個か写っている。

「オーブじゃないですか⁉︎」義姉が言う。

オーブって何?
ググってみる。

・人の念が強く残っている
・自然が多く神聖な場所に多い
・気づいて欲しい・理解して欲しいの意味
・霊が偶然通っただけ(?)
・先祖からの警告やお告げ
・感謝の意味
・神様からのメッセージ
・単なる偶然
・水滴 ホコリ
・カメラの不具合
などなど
色んなことが書かれていたけど、私はスピリチュアルの方を信じた。
じゃあ兄ってこともあるのかな。

その時
なぜか母はテンションは高く、やたらケタケタ笑っていた。
そんなに楽しいのかな。
ちなみに今日はお酒は用意していない。
その割に「自分には写らんよ」と控えめ発言。
なのに何だか嬉しそう。

パシャリ!
母だけを写してみた。

そしてびっくり‼️

「うっわぁあああ!すごい!」思わず声が出る。

「なになに⁉︎」さすがにみんなも見て驚く。

ものすごい数の白い球体が まるで母を守るようにぐるりと写っていたからだ。

他にも何枚か写してみたが、ここまで多く写っていない。
もちろん何も写ってない写真もある。

兄が参加したに違いない。
うん、絶対だ。
自分の誕生日だもん。
好きな食べ物いっぱいだし、好きな家族も揃ってるし。
一緒に居ないわけがない。

母のこと 心配してるんだよね。
義姉の頭上にもポワポワと写り込む兄と思われる球体。

でも
…何で私には写りませんか~⁉︎

コンニャロー!

初めてのオーブ体験。
賑やかな誕生日になってよかった。
これもお兄のおかげかな。



兄はまた一つ、歳をとりました。









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