そして兄は猫になる

Ete

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誰が仕切るの?私でしょう(泣)

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病院で兄の死を確認してからというもの、
一気に時間との戦いが始まった。

両親と義姉は、亡骸に縋って動かない。
いや正確には動けない。
あまりのショックに脳も身体も固まったままだ。

でもみんな泣いている場合じゃない!
いつまでもここには居られない。
看護師さんも、エンゼルケアをしようと待ち構えていらっしゃる。
早く遺体を連れて帰らねば!

どうする⁉︎
誰が仕切る⁉︎
ええ~い(汗)
私しかいないでしょ💢

とにかく電話だ!
電話しまくるしかない!

まず一番近い親戚に電話。
兄が亡くなったこと、自宅に行って受け入れ準備をして欲しいこと、親戚中に連絡を入れて欲しいことを伝えた。

「何~⁉︎死んだって⁉︎」
叔母は驚き、慌てふためき 何度も繰り返し聞いてきた。
とは言え 悠長に説明している暇がない。

でも
「よし!分かった!」と引き受けてくれた。
「バイクは移動したから大丈夫!心配するな」との返事も聞けて、事故現場の事を考えなくていいってだけでも力が抜けそうになった。
やれやれ…。

次は翌日行くはずだった京都のホテル!
やっとの思いで取った 窓から二条城が見える部屋だったのに~!
理由を説明してキャンセル。
くっそーーー!キャンセル料金3分の1取られた(泣)

いやそんな事言ってる場合じゃない(汗)
今度は葬儀屋だ!

って、電話番号なんて知らんわ💢
知り合いにTELして探してもらう。
それから葬儀社に連絡して、病院から自宅までの送迎をお願いした。

次!
私の子どもたち。息子と娘!
娘は高校生で、電話をした時ちょうど電車に乗ろうとしていた。
「待て!乗るな!兄を向かわせるからそこで待て!」と指示を出す。
間に合った!

今度は息子!
こっちも仕事が終わって帰宅中の車内。
事情を話し、妹を駅で拾って 2人無事に家に帰るよう指示した。
家は誰もいないから 途中、弁当かおにぎりを買って帰るようにと付け足した。

次!
お寺!
「こんな時間にすみません!(中略)そっちのスケジュール教えてください!」

ハァハァハァ…

次!
お兄のお友達!
義姉からあっという間に広がってたからそこはヨシ!

次!
両親を家に帰す方法模索‼︎
ちょうど病院の廊下を 駆けつけてくれたバンドの人が歩いていたのを発見!
大声で呼び止める!
(院内は静かにしましょう)

「〇〇さーーーーーん‼︎」
よかった!振り向いてくれた‼︎

「あの人名前違うよ?〇〇さんだよ」
夫がポソっと呟く。

「え⁉︎」

でもいい!今は誰でもいい!
(恥ずかしい~!)
私たちは手続きしてからでないと帰れないから、両親を家まで送って欲しいとお願いした。
ちょっと距離遠かったけど、快く引き受けてくださった。

次!職場の上司!
「って事なのでしばらくお休みしますっ!」

次!
オットノ ジッカ…

実は私 夫の両親と同居していましたが、折り合い悪く、
3ヶ月ほどで『オット ヲ ツレテ』逃げだしました(笑)
(ここだけデスマス調だな)

そして私の実家の近くに家を建てたと♪

ん?
これって…
まさか⁉︎

《後取り居なくなるから お前戻ってこいってことだったんじゃ⁉︎》

生唾ゴクリ…あり得る…
もしやご先祖様の仕業かぁ⁉︎

…寒いぃぃいいいいいいいい‼︎
話 出来すぎてて鳥肌立つわ‼︎



1人騒いでいた私を見て
痺れを切らした看護師さんが
「処置をしたいのですが…いつ頃がよろしいですか?」と声をかけてくる。
また私かよ…トホホ(泣)
義姉と両親に離れるよう促し、帰りの身支度を整えていただいた。
「衣類がないので 病院の用意した着物でいいですか?」
「はい。お願いします」
と言ったものの…

お兄…着せられた浴衣…似合わない。


その頃、葬儀社からもうすぐ到着しますと連絡が入った。
え?もう⁉︎

忙しい(汗)忙しいぃぃいいいいい‼︎

車には1人しか乗れないと言われたので、
義姉が乗って アパートに寄ってから家に帰る事になった。
死亡診断書を持たせて見送る。
兄の着ていた衣類は、病院でぐちゃぐちゃに切られていて、血がのっぺりと付いていた。事故とその後の悲惨さを物語っている。
捨てるわけにもいかずビニール袋に入れて持ち帰る事に。

病院のあれこれの手続きをして さぁ、私達も帰ろう!

グゥゥ~…

こんな時でも お腹空くんだ…。
途中コンビニに寄って サンドイッチを購入。
頬張りながら帰路に着く。
もうどっぷり夜だ。
帰ってからまた忙しくなる。

旅行の準備をする気が出なかったのは、こうなるから行くなっていうお知らせだったのかなぁ。
だとしたらすごいタイミング。
一日違ってたら 途中で帰って来なくちゃいけないところだった。
きっとお兄が止めたんだなぁ…なんて、夫と話した。


さて。
これからの段取り。どうしたものか?
すごく大変な予感。

家に帰ると叔母や母が遺体を安置する場所の片付けや準備に追われていた。
母から「嫁や息子はいつ帰ってくるの?」と聞かれる。
「え?まだ帰って来てないの?」
私達は彼女達を見送って、それから病院を出たことを母に話す。
「多分、アパートの荷物か何か持って帰ろうと用意してるんじゃないかな」そう言って母をなだめる。

…にしても帰って来なさすぎだろ~⁉︎
痺れを切らして電話する。
「ごめんなさい。もう直ぐ着きます。アパートを見せていたんです。もう帰れないから…」
義姉はぐすんぐすんと鼻を鳴らしながら呟く。

仕方ないか。一番辛いのは義姉なんだろうし。
帰って来たらあーして こーして…と考えながら、私達はお茶を飲んで待った。

待ったけど、帰って来ない。
           もう直ぐって一体あと何分⁉︎ ってか今どこ⁉︎

我慢我慢と言って待ち続け、
葬儀社の車が着いたのは、日付が変わった頃だった。

兄の遺体は葬儀社の人によって、西向きに安置された。
北枕にしたかったが、部屋が狭くて入らなかったから仕方ない。
葬儀社の人から翌日(と言っても今日のことだけど)の段取りを淡々と聞き、「また明日来ます。これから色々準備があります。皆様少しでも横になってお休みください」と合掌して帰って行かれた。

でも待てよ?
人が亡くなったら 遺体の前の線香は絶やさずにって言わないっけ?
死臭を消すためとか何とかの理由で。
お休みくださいって言われても…ねぇ?
誰が観る⁉︎
とみんなで顔を合わせる。

叔母が「お前達はこれから忙しくなるから休め。叔母さんが見てるから」と気を利かせてくれた。
お言葉に甘えて家に帰ることにした。

義姉は遺体の横に座り込んでいた。
肩を落とし、涙が止まらず、時々顔の布を外したり また掛けたり。
声のかけようもないほどの痛々しい姿で。

私と夫は 黙って家に帰った。

翌朝。
(と言ってもほんの数時間後の事だが)
叔母は「ずっと起きてたよ。ちゃんと線香立ててな」と眠そうな目をして言った。
叔母ちゃんほんと感謝だよ~。

「今日はどうなるんだろうね~?」
何て話をしていた時、遺体の枕元に、葬儀社が置いて行った袋が置いてあることに気がついた。

何が入っているんだろうと中を覗いてみたら、普通の線香じゃなくて、蚊取り線香みたいにぐるぐる巻かれた 長時間専用のお線香が入っている。
もしかして、ほんとはこれ使えば良かったんじゃないの?(滝汗)
みんな寝れたんじゃないか⁈

もっと早く気がつけばよかった。
叔母ちゃんごめんよ~!
なんか申し訳ない(汗)

ま、いっか…。
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