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最後の約束
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人は死ぬ前に 身辺整理をするという話を耳にしたことはないだろうか?
これは兄が亡くなる3日前にあった出来事である。
兄が居なくなる数ヶ月前から、父が原因不明の『症状』を起こしていた。
脳の異常じゃないかと思ったが、ネットで調べても何の病気なのか検討が付かない。
父の様子がおかしい事は、私だけが気がついていた。
本人は無自覚。
結果的にはそういう病気だったから仕方ないのだが。
家族にも父の状況を説明し、病院へ行くよう勧めたが 普段が全く変わりないために 誰も信じてくれず、受診に至るまでかなりの時間を要した。
しかし、最終的には大学病院で検査するところまで行き着いた。
これで病気が分かる。
内心ホッとしていた。
検査結果が出る日。
父を連れて、母と私と夫が病院に付き添った。
兄はその日仕事だったが『どうしても自分も行くから』と 途中抜け出して合流して来た。
普段父のことなど関心がない人なのに。
しかもその時、病院だというのに 職場で使う名札を首からぶら下げていたのが、とても不思議だったのを覚えている。
先生から病名を告げられ、みんなに丁寧に説明があった。
治ることはなく、薬でどこまで抑えられるのか、いつまた何処で症状が出るのか分からないと言われた。
両親はあまり納得出来ない様子だったが、最後は仕方ないと諦めたようだった。
診察が終わり、看護師に診察室の外で待つように言われ みんなで待合室に移動した。
両親は前列の方で、私と夫は後ろの方に並んで座り、呼ばれるのを待った。
兄は長椅子に1人どかっと座り、椅子の背もたれに右腕を回して足を組む。
何を思ったのか左手で私に《来い来い》と手招きした。
何だろうと思いながら立ち上がると 何も言わずに左手で椅子をポンポンと叩き 自分の左横に座るように指示して来た。
なんだか気持ちが悪かったので、少し離れて座る私。
そして私の夫に一言。
「兄妹が並んで写真撮るなんて滅多にない。撮るなら今だぜ」
何のこっちゃ???
確かにそうだが…でも今までそんな事を兄から口にしたことは一度もない!
夫は言われるまま 笑いながら携帯を出して2~3枚写真を撮ってくれた。
私は仕方なく、苦笑いをしながらピースサインをしてみせた。
後で見たら、兄は一枚は真顔だったが、もう一枚は思いっきりふざけた顔をしていた。
兄らしいなぁと夫と笑った。
これが兄妹で撮った『最後の写真』になった。
看護師から書類等を受け取り、さぁ帰ろうと下りのエスカレーターに向かった。
両親と夫は先に進み 兄と私は最後に乗りかけた。
私が一足踏み出すと 兄が一緒の段に並んで来た。
「お前 これから爺さんのこと(父の事)頼んだぞ」
「はぁ???」
私は目を白黒させながら言い返す。
「何言ってんの⁉︎親の面倒看るのは長男の自分らでしょう?私は関係ないよ」
「とにかく 頼んだぞ!」
それだけ言うと エスカレーターを駆け降りて行った。
これが
兄と私が最後に交わした『言葉』で
最後の『約束』になった。
この3日後
兄は帰らぬ人となる。
兄は死期を悟っていたのかもしれない。
父の病気が何か見届けて、私に父のことを託し、2人で写真を撮って…
《最後の思いを叶えるために
わざわざ仕事を抜けてやって来た…?》
そうとしか考えられない。
普段の兄からは想像できない『らしくない行動』だったから。
この世に未練を残さず
安心して逝けるように…。
後に…
兄と撮った写真は、ふざけた方を選び、木枠の写真立てに入れてタンスの上に置いた。
こっちの方が兄らしい気がしたからだ。
幼い頃に浴衣を着て 仲良く2人並んで撮ってもらったお気に入りの写真がある。
モノクロだが、その兄は優しい顔をしている。
今回の写真も、ふざけてはいるけど どこか幼く、その時のような優しい顔に見える。
写真を見るたびに
『私が笑ってくれるように』
『飽きないように』
『自分を忘れないように』
ワザとこんな顔したのかもしれないなぁ。
あの時 写真を撮っておいてよかった。
撮らなかったら 私は一生後悔していただろう。
怖がらず、もっと近くに座ればよかったな。
ねぇ お兄。
今だから言えるけど
あの時 私を呼んでくれてありがとう。
いい思い出になったよ。
嫌でも忘れられない『記憶』になったよ。
時々写真を見ては 兄の顔を指でピンと弾いて
心の中で、『何でそんな狭いとこにいるんだ?バカだなぁ』と声をかけている。
きっと『痛いがな!』と怒っている事だろう。
いや?
仕返しされるか(汗)
でも困った時は 兄頼みをしている。
都合のいい妹だと思われている事だろう(笑)
それぐらいは許して‼︎
お兄ちゃんなんだから♪
これは兄が亡くなる3日前にあった出来事である。
兄が居なくなる数ヶ月前から、父が原因不明の『症状』を起こしていた。
脳の異常じゃないかと思ったが、ネットで調べても何の病気なのか検討が付かない。
父の様子がおかしい事は、私だけが気がついていた。
本人は無自覚。
結果的にはそういう病気だったから仕方ないのだが。
家族にも父の状況を説明し、病院へ行くよう勧めたが 普段が全く変わりないために 誰も信じてくれず、受診に至るまでかなりの時間を要した。
しかし、最終的には大学病院で検査するところまで行き着いた。
これで病気が分かる。
内心ホッとしていた。
検査結果が出る日。
父を連れて、母と私と夫が病院に付き添った。
兄はその日仕事だったが『どうしても自分も行くから』と 途中抜け出して合流して来た。
普段父のことなど関心がない人なのに。
しかもその時、病院だというのに 職場で使う名札を首からぶら下げていたのが、とても不思議だったのを覚えている。
先生から病名を告げられ、みんなに丁寧に説明があった。
治ることはなく、薬でどこまで抑えられるのか、いつまた何処で症状が出るのか分からないと言われた。
両親はあまり納得出来ない様子だったが、最後は仕方ないと諦めたようだった。
診察が終わり、看護師に診察室の外で待つように言われ みんなで待合室に移動した。
両親は前列の方で、私と夫は後ろの方に並んで座り、呼ばれるのを待った。
兄は長椅子に1人どかっと座り、椅子の背もたれに右腕を回して足を組む。
何を思ったのか左手で私に《来い来い》と手招きした。
何だろうと思いながら立ち上がると 何も言わずに左手で椅子をポンポンと叩き 自分の左横に座るように指示して来た。
なんだか気持ちが悪かったので、少し離れて座る私。
そして私の夫に一言。
「兄妹が並んで写真撮るなんて滅多にない。撮るなら今だぜ」
何のこっちゃ???
確かにそうだが…でも今までそんな事を兄から口にしたことは一度もない!
夫は言われるまま 笑いながら携帯を出して2~3枚写真を撮ってくれた。
私は仕方なく、苦笑いをしながらピースサインをしてみせた。
後で見たら、兄は一枚は真顔だったが、もう一枚は思いっきりふざけた顔をしていた。
兄らしいなぁと夫と笑った。
これが兄妹で撮った『最後の写真』になった。
看護師から書類等を受け取り、さぁ帰ろうと下りのエスカレーターに向かった。
両親と夫は先に進み 兄と私は最後に乗りかけた。
私が一足踏み出すと 兄が一緒の段に並んで来た。
「お前 これから爺さんのこと(父の事)頼んだぞ」
「はぁ???」
私は目を白黒させながら言い返す。
「何言ってんの⁉︎親の面倒看るのは長男の自分らでしょう?私は関係ないよ」
「とにかく 頼んだぞ!」
それだけ言うと エスカレーターを駆け降りて行った。
これが
兄と私が最後に交わした『言葉』で
最後の『約束』になった。
この3日後
兄は帰らぬ人となる。
兄は死期を悟っていたのかもしれない。
父の病気が何か見届けて、私に父のことを託し、2人で写真を撮って…
《最後の思いを叶えるために
わざわざ仕事を抜けてやって来た…?》
そうとしか考えられない。
普段の兄からは想像できない『らしくない行動』だったから。
この世に未練を残さず
安心して逝けるように…。
後に…
兄と撮った写真は、ふざけた方を選び、木枠の写真立てに入れてタンスの上に置いた。
こっちの方が兄らしい気がしたからだ。
幼い頃に浴衣を着て 仲良く2人並んで撮ってもらったお気に入りの写真がある。
モノクロだが、その兄は優しい顔をしている。
今回の写真も、ふざけてはいるけど どこか幼く、その時のような優しい顔に見える。
写真を見るたびに
『私が笑ってくれるように』
『飽きないように』
『自分を忘れないように』
ワザとこんな顔したのかもしれないなぁ。
あの時 写真を撮っておいてよかった。
撮らなかったら 私は一生後悔していただろう。
怖がらず、もっと近くに座ればよかったな。
ねぇ お兄。
今だから言えるけど
あの時 私を呼んでくれてありがとう。
いい思い出になったよ。
嫌でも忘れられない『記憶』になったよ。
時々写真を見ては 兄の顔を指でピンと弾いて
心の中で、『何でそんな狭いとこにいるんだ?バカだなぁ』と声をかけている。
きっと『痛いがな!』と怒っている事だろう。
いや?
仕返しされるか(汗)
でも困った時は 兄頼みをしている。
都合のいい妹だと思われている事だろう(笑)
それぐらいは許して‼︎
お兄ちゃんなんだから♪
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