1 / 1
やさしいくらげ
しおりを挟む
あるうみのなか いっぴきの やさしいくらげがいました
くらげは やわらかくて とうめいなからだで
うみのながれにみをまかせて いきていました
あるひのこと ふわふわ と くらげはただよって
とおりすぎる さかなにいいました
「きみはおよぐことがじょうずだね きみのように ひれがあったら いいのになあ」
さかなはすこし うれしくなって
くらげのまわりをぐるぐるおよぎます
するとくらげは くるくると からだがかってにまわってしまいました
そして さかなはいいました
「でもきみは とても やさしい
おしよせるなみも うみのながれも ぼくがつくったちいさなうずも ぜんぶ うけとめてくれる
かってに そうなってしまうのだとしてもきみはそれができるから やさしいね」
そうか そうだね ありがとう
くらげはそういって また あらたなうみのながれにのってとおくへいきました
ながいこと ながされていると
「くらげさん くらげさん」
と うみがめがやってきました
「なんだい ぼくになにかあるのかい?」
そう くらげがたずねます
「わたしはもうすぐたまごをうみます
しかし おなかがとてもすいてしまって すこしだけでいいので かじらせてもらってもいいでしょうか」
なんと くらげはびっくりしました
でも うみがめからはにげられないことをしっていたくらげは
「いいよ きみと きみのこどものためだもの」
と うみがめのおねがいをきくことにしました
「ありがとうございます やさしいくらげさんでは しょくしゅを いっぽんだけ」
うみがめはくらげのしょくしゅにかみついて
できるかぎり いたくないようにきをつけて ひっこぬきました
「ほんとうに たすかりましたあなたは とてもやさしいおかた
たとえにげられないのだとしても それでもわたしのこどものため なんて ありがとうございます」
いえいえ と くらげはいってまたおおきなながれにのっていきました
あるひ おおきなうみのうえに おおきなあまぐもがやってきて
たくさんのあめをふらしました
ながくふりそそいだあめが つよいながれをつくりだし
くらげは なんにちかんもずっと ながされつづけていました
そしてきがつけば そこはふかいうみのそこ あたりいちめんまっくらな しんかいにたどりつきました
「もしもし だれか いませんか」
くらげはおおきなこえをだせません
「もしもし もしもし」
それでも しんかいはしんとしずまりかえって くらげのちいさなこえがひびいていました
「もしもし だれか もしもし」
ずっと そうやっていると
「ひからないくらげなんて はじめてみたよそれに しょくしゅもちぎれて からだもぼろぼろじゃないか」
くらげのまえに ぬうっと かおをだしたのは おおきな おおきな だいおういかでした
「おおきな だいおういかさん ぼくは ながい ながいあめで ここにながされてきたんだ どうしよう」
くらげはふあんそうなこえでたずねます
「なら うえまでおよげばいいじゃないか」
だいおういかは ふしぎそうに そういいました
しかしくらげは およぐちからがよわいじぶんが あたたかいうみまで なんにちもかけて
ずっと およいでいくのは どんなにたいへんなことか とおもいました
「それが むずかしいんだぼくは いままでうみのながれにただよって いきてきたから
うえまでおよぐなんて きっと とちゅうでちからつきてしまう」
くらげがそういうと だいおういかは ためいきをはきました
「この つめたいしんかいではきみのようなひからないくらげは いきてはいけないよ」
だいおういかは しょくしゅでくらげにゆびをさし つづけました
「きみはきっと はやくおよごうとしなかった たべられないようにつよくなろうともしなかった
おおきなこえをだそうとすらしなかった だから きみは くらげになったんだ」
そのことばをきいたくらげは むっ として
「くらげになるって どういうことだい」
と いいました
「いきものは じぶんがやってきたことを うまくできるようなかたちになっていくんだ
くらげは ただ うみのながれをうけとめて ながれていくようにね
そしてきみは どく や ひかりを もつことすら しないで ただ おおきなうみにみをまかせて
いきていけるようになったんだやさしいふりを ずっとしながらね」
くらげは はっとして なにもいいかえせなくなりました
そして これからどうしよう… となやみはじめると
「うえまでおよいでごらん きみのうみまで ずっと ずっと とおいけど
きっと きみはできるはずさ できるように かわっていくんだ」
じゃあ またね と だいおういかはつめたいうみのやみに きえていきました
そしてくらげは すこしだけ まよったあとかくごをきめて うえまでおよぎはじめます
ながいながいじかんをかけて きのとおくなるような
あたたかいうみまでのきょりを すこしでも はやくたどりつくため
くらげは ひっしでおよぎつづけます
すると くらげにははやくおよぐための ひれがはえてきました
また おしよせる うみのながれにさからえば
ぼろぼろになった しょくしゅはいっぽんずつ ちぎれていき からだもやぶれそうになりますが
くらげは まけないようにすすみつづけます
そしてくらげのからだはおおきく かたくなり うみのながれなんかではびくともしないようになりました
しずかで まっくらなうみのなか
さみしさをごまかすために そしてうえにいる ともだちに きづいてもらえるよう
くらげはまいにち がんばっておおきなこえでうたいつづけます
だんだんと くらげのくちはおおきくなり くらげのうたは ひろいうみにひびきわたるようになりました
ずっと ずっと およいでいるとおひさまのひかりがみえました
あとすこし そうしておもいっきりおひさまにむかっておよぐと
ざっぱーん!
おおきなみずしぶきといっしょにうみのうえに とびあがりました
「やっとついたんだ だいおういかさんのいうとおりだったんだ!」
うみのうえにかおをだしてあたたかいおひさまのひかりをあびているといっぴきのかもめが やってきました
「もし すみませんすこし とぶのにつかれてしまってくじらさんのうえでやすませてください」
もちろん と やさしいくじらはあたまのうえにかもめをのせました
くらげは やわらかくて とうめいなからだで
うみのながれにみをまかせて いきていました
あるひのこと ふわふわ と くらげはただよって
とおりすぎる さかなにいいました
「きみはおよぐことがじょうずだね きみのように ひれがあったら いいのになあ」
さかなはすこし うれしくなって
くらげのまわりをぐるぐるおよぎます
するとくらげは くるくると からだがかってにまわってしまいました
そして さかなはいいました
「でもきみは とても やさしい
おしよせるなみも うみのながれも ぼくがつくったちいさなうずも ぜんぶ うけとめてくれる
かってに そうなってしまうのだとしてもきみはそれができるから やさしいね」
そうか そうだね ありがとう
くらげはそういって また あらたなうみのながれにのってとおくへいきました
ながいこと ながされていると
「くらげさん くらげさん」
と うみがめがやってきました
「なんだい ぼくになにかあるのかい?」
そう くらげがたずねます
「わたしはもうすぐたまごをうみます
しかし おなかがとてもすいてしまって すこしだけでいいので かじらせてもらってもいいでしょうか」
なんと くらげはびっくりしました
でも うみがめからはにげられないことをしっていたくらげは
「いいよ きみと きみのこどものためだもの」
と うみがめのおねがいをきくことにしました
「ありがとうございます やさしいくらげさんでは しょくしゅを いっぽんだけ」
うみがめはくらげのしょくしゅにかみついて
できるかぎり いたくないようにきをつけて ひっこぬきました
「ほんとうに たすかりましたあなたは とてもやさしいおかた
たとえにげられないのだとしても それでもわたしのこどものため なんて ありがとうございます」
いえいえ と くらげはいってまたおおきなながれにのっていきました
あるひ おおきなうみのうえに おおきなあまぐもがやってきて
たくさんのあめをふらしました
ながくふりそそいだあめが つよいながれをつくりだし
くらげは なんにちかんもずっと ながされつづけていました
そしてきがつけば そこはふかいうみのそこ あたりいちめんまっくらな しんかいにたどりつきました
「もしもし だれか いませんか」
くらげはおおきなこえをだせません
「もしもし もしもし」
それでも しんかいはしんとしずまりかえって くらげのちいさなこえがひびいていました
「もしもし だれか もしもし」
ずっと そうやっていると
「ひからないくらげなんて はじめてみたよそれに しょくしゅもちぎれて からだもぼろぼろじゃないか」
くらげのまえに ぬうっと かおをだしたのは おおきな おおきな だいおういかでした
「おおきな だいおういかさん ぼくは ながい ながいあめで ここにながされてきたんだ どうしよう」
くらげはふあんそうなこえでたずねます
「なら うえまでおよげばいいじゃないか」
だいおういかは ふしぎそうに そういいました
しかしくらげは およぐちからがよわいじぶんが あたたかいうみまで なんにちもかけて
ずっと およいでいくのは どんなにたいへんなことか とおもいました
「それが むずかしいんだぼくは いままでうみのながれにただよって いきてきたから
うえまでおよぐなんて きっと とちゅうでちからつきてしまう」
くらげがそういうと だいおういかは ためいきをはきました
「この つめたいしんかいではきみのようなひからないくらげは いきてはいけないよ」
だいおういかは しょくしゅでくらげにゆびをさし つづけました
「きみはきっと はやくおよごうとしなかった たべられないようにつよくなろうともしなかった
おおきなこえをだそうとすらしなかった だから きみは くらげになったんだ」
そのことばをきいたくらげは むっ として
「くらげになるって どういうことだい」
と いいました
「いきものは じぶんがやってきたことを うまくできるようなかたちになっていくんだ
くらげは ただ うみのながれをうけとめて ながれていくようにね
そしてきみは どく や ひかりを もつことすら しないで ただ おおきなうみにみをまかせて
いきていけるようになったんだやさしいふりを ずっとしながらね」
くらげは はっとして なにもいいかえせなくなりました
そして これからどうしよう… となやみはじめると
「うえまでおよいでごらん きみのうみまで ずっと ずっと とおいけど
きっと きみはできるはずさ できるように かわっていくんだ」
じゃあ またね と だいおういかはつめたいうみのやみに きえていきました
そしてくらげは すこしだけ まよったあとかくごをきめて うえまでおよぎはじめます
ながいながいじかんをかけて きのとおくなるような
あたたかいうみまでのきょりを すこしでも はやくたどりつくため
くらげは ひっしでおよぎつづけます
すると くらげにははやくおよぐための ひれがはえてきました
また おしよせる うみのながれにさからえば
ぼろぼろになった しょくしゅはいっぽんずつ ちぎれていき からだもやぶれそうになりますが
くらげは まけないようにすすみつづけます
そしてくらげのからだはおおきく かたくなり うみのながれなんかではびくともしないようになりました
しずかで まっくらなうみのなか
さみしさをごまかすために そしてうえにいる ともだちに きづいてもらえるよう
くらげはまいにち がんばっておおきなこえでうたいつづけます
だんだんと くらげのくちはおおきくなり くらげのうたは ひろいうみにひびきわたるようになりました
ずっと ずっと およいでいるとおひさまのひかりがみえました
あとすこし そうしておもいっきりおひさまにむかっておよぐと
ざっぱーん!
おおきなみずしぶきといっしょにうみのうえに とびあがりました
「やっとついたんだ だいおういかさんのいうとおりだったんだ!」
うみのうえにかおをだしてあたたかいおひさまのひかりをあびているといっぴきのかもめが やってきました
「もし すみませんすこし とぶのにつかれてしまってくじらさんのうえでやすませてください」
もちろん と やさしいくじらはあたまのうえにかもめをのせました
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
頑固な魔法使いは、絶滅危惧種
波間柏
恋愛
いまではめっきり減っている魔法使い。
その迷惑な血を受け継ぐのが私だ。
私は、父親の海外赴任を機に叔母の家に夏から預けられる事になった。都会とは違いそこには奇麗な海がある。
私は叔母のカフェを手伝いながら毎日海へ行く。魔法なんていらない、なくならないなら空気になりたいと思いながら。
*別視点あり。*残酷な表現はないとおもいますが、津波など出てくるかもしれません。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる