【完結】優しき世界にゼロ点を 〜Sランクヒーラーだった俺、美少女を蘇生した代償に回復能力を失いました〜

七星点灯

文字の大きさ
上 下
19 / 58
第二章 オーバーヒールの代償

第十八話 二人の獣は欲に溺れる

しおりを挟む

 水兵達の制圧射撃が始まると、一時的に工作員からの射撃が止んだ。
 もう、今しかないな。
 俺は無我夢中でヘリに向かって走った。
 走りながら銃を撃ちながら、とにかく走った。
 途中、弾が切れた小銃を放り投げ、腰の拳銃を抜いてそのままヘリの中に入り込むと、操縦席で操作中だった工作員の頭めがけて至近距離から数発、拳銃を発射した。
 、、、これほど至近距離で人を撃ったことは、もちろん初めてだった。
 わかってはいたが、これが戦争だ。
 目の前の敵は、操縦桿を握ったまま、血塗れになってもう動く気配が無かった。
 ヘリの下では、先ほどまで銃撃戦を繰り広げていた工作員が、水兵との銃撃に負け、死体になっていた。

 、、、終わったのだ。
 
 ヘリのローターはまだ回ったままだが、制圧し、ヘリを確保したことを水兵に親指を立てて合図すると、向こうから歓声が上がった。

 ぞろぞろと、飛行甲板上に水兵が出てくる。
 、、、え、こんなにいたの?
 おまえ等、少しは手伝えよ、と思いつつ、この単身乗り込んだ陸軍軍曹である俺を、彼らは歓喜で迎え入れてくれた。

「おい、だれか、医務室に運ばれた女性士官がどうなったか知らないか?」

「ああ、彼女は今、緊急手術をしています、案内します」

 甲板上に出る時は、随分混乱したが、案内がいると早いものだ。
 それでも原子力空母の艦内はまるで迷路だ。
 
 敵は倒した、空母も洋上に出ることが出来た。
 これで歴史は、第3次世界大戦を回避出来たのだ。
 あとは、彼女の怪我だけが心配だ。

 医務室に到着すると、既に手術は終わっていた。
 軍医が言うには、命に別状はないとのことであったが、出血があるため、もう少し療養が必要となるだろうとのことだった。

 ああ、もう気が抜けた。
 
 彼女が助かる。
 俺の命の恩人だ。
 そう、彼女は俺にとって、特別な存在なのだ。
 知り合って何日とか、そう言う時間の問題ではない、俺のせいで、こんな大けがをしてしまったのだから、俺は彼女の一生に対して、責任を追わなくてはならないな。
 
「、、、、ああ、雄介様、ご無事で」

 彼女が目を覚ました。
 手術に麻酔を使っていなかったらしく、彼女は酷く辛そうにしていた。
 
「まったく、君は無茶をする、、、申し訳ない、まさか君をこれほど危険な目に合わせるとは思っていなかった。」

「雄介様、ここは?」

「安心したまえ、ここは原子力空母の艦内だ」

 すると、彼女の顔は、見る見る蒼白となっていった。

「どうした?何か不安でもあるのか?」

「雄介様、そのままお耳をおかしください、この空母は、もうだめです、脱出のご準備を」

「何を言っている、この艦の工作員は全て排除した、安心してくれ」

「いえ、そうではありません。マーシャンからの通信が入っています。艦内の工作員は、恐らく排除仕切れていません」

 マジか?まだ潜入しているのか?
 どうする?脱出ったって、ここ、原子力空母だぞ。
 無事に沖合に出れれば、こちらの勝ちと思っていたのに、クソ!
 
「おい、だれか、話を聞いてくれ、艦内にまだ、武装工作員が潜入している可能性がある、調査を、、、」

 そう言い終える前に、空母が大きく動揺した。
 もの凄い音の爆発が、艦内深部から伝わって来た。

「なんだ、どこからだ?」

「機関部から、爆発音」

 艦内スピーカーから、爆発音が機関室の方であることが流れてきた。
 、、、ん?機関部?
 おいおい、それって原子炉じゃん。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしようもないヤンキーだった俺の転生物語。回復職なのに前線でバトルしまくる俺は、いつしか暴れ僧侶と呼ばれているようです。

蒼天万吉
ファンタジー
モンスターや魔法が溢れるファンタジーな世界に転生してきたアマタは元超絶ヤンキー。 女神の使いに与えられた加護を使って人々を癒す、僧侶になったものの…… 魔法使いのルルがと共に、今日も前線で戦っているのでした。 (小説家になろうにも掲載しております。)

【完結】魔術師リュカと孤独の器 〜優しい亡霊を連れた少女〜

平田加津実
ファンタジー
各地を流れ歩く旅芸人のリュカは、訪れた小さな町で、亜麻色の髪をした自分好みの少女アレットを見かける。彼女は中世の貴族のような身なりの若い男と、やせ細った幼女、黒猫の三体の亡霊を連れていた。慌てて彼らを除霊しようとしたリュカは、亡霊たちを「友達だ」と言い張るアレットに面食らう。リュカは、黒猫の亡霊に彼女を助けてほしいと頼まれ、なりゆきで一人暮らしの彼女の家に泊まることに。彼女らの状況をなんとかしようとするリュカは、世間知らずで天然な彼女と、個性的な亡霊たちにふりまわされて……。 「魔術師ロラと秘された記憶」の主人公たちの血を引く青年のお話ですが、前作をお読みでない方でもお楽しみいただけます。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜

KeyBow
ファンタジー
 1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。  各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。  ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。  その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。  彼らは通称カーヴァント。  カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。  カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。  しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。  また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。  探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。  つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。  数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。  月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。  彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。  そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。  勿論二世だ。  斗枡が持っている最大の能力はカード合成。  それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。  彼はその程度の認識だった。  実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。  単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。  つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。  また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。  斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?  女子が自然と彼の取り巻きに!  彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。

処理中です...