星の降る夜に

ベガ

文字の大きさ
上 下
7 / 10

私と星岬

しおりを挟む
「わーーーい!抱っこしてー!」
「岬は本当に甘えん坊だなー、」
「全く、岬は誰に似たんですかねー」
どこにでも聞く幸せそうな家族の会話。
それが私が誕生日の夜に見た夢だった。
あー、この夢はきっと私が小さかった頃のいつも星岬で遊んでいた時の私とおじいちゃんとお母さんの会話かー。懐かしいな。なんて思いつつも夢を見続ける。
「わしわこんな孫を見れて幸せ者じゃ。これで心置きなく死ねるってもんじゃー。」
「そうですねー。」
遠くに座っている人影から声がする。
「ちょっとお義父さん、お義母さん、まだまだ長生きしてくださいよ。」
「そうだぞ、親父、お袋、親父には岬の子供が生まれてくるまで生きててもらわないと困るんだから」
どうやら5人いるらしい。
私と、母と、祖父と、祖母と。



待って。あと1人どうしても足りない。私が抱っこを求める人。どこか懐かしい匂いが私の鼻の奥を刺激する。どこかで感じたあの香り。




頭の中で何か暴れている。感じたことのない痛み。
夢の中が白く靄がかかったように霞んでいく。
そこにいるのは誰か分からない。しかし私が楽しそうに話す男の人の声が響く。
「岬ー、星岬は好きか?」
「うん!だいすき!」
無邪気な笑顔で返す。
「この星岬の一本松の木下にタイムカプセルを埋めよう!岬がおねいさんになったら掘り返しに来よう。
といっても、私がそこまでこの世にいられたらの話だけどね。」
周りに重い空気が流れる。




目の前が真っ暗になった。かすかに聞こえる潮騒が私の耳をなぞりながら遠くへ消えていく。それに混じり宮崎菫の可愛らしい吐息が聞こえる。
夢から覚めた。不思議な夢だった。
私はふと思う。私には父がいて私は小さい時まで父と暮らし一緒に遊んだり暮らしたりしていた。
あの夢のように。なぜだかそんな気がしてきた。
でもなぜだろう。それなら家族揃って私が生まれるのと同時に父は亡くなったなんて嘘は言わないはずだ。何かそう言わざるおえない理由があるのだろうか。 
なぜなぜが頭を占領しとてもじゃないが寝れる気なんてしなかった。そんなこんなで二度寝時計は4時半を回っていた。このまま考えてもバカな頭がさらにバカになると思い外に出た。



残暑残る昼間に比べ一変。澄んだ空気がとても気持ちよく白みかかった空がなんとも言えない幻想的な美しさがそこにあった。辺りの景色に見とれながら
私はいつものように星岬へ向かった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

バレー部入部物語〜それぞれの断髪

S.H.L
青春
バレーボール強豪校に入学した女の子たちの断髪物語

無名の電話

愛原有子
ホラー
このお話は意味がわかると怖い話です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

処理中です...