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特別編

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  ……敵機なし

 誰に言うまでもなく、口が動く
  無線は遠に壊れている

  愛機の姿も見えない事も今だけは幸いということか

  〝死〟か、意外と呆気ないものだな

  瞼がゆっくりと下がり、視界がなくなる

  ふと、身体が軽くなった

  空の戦士はそのまま天に昇れるという

  コツ……ある筈のない音が聞こえた

  目を開ける、でも視界は暗い。理由はすぐに分かった

  誰かの機体が覆いかぶさっていたのだ


  その機体は前触れなく、下方へ消える

  遂に視界が開けた

  見えたのは〝彼らの姿〟だった

  奇跡か……突如現れた数十の彼らは揚力を生み、私を持ち上げる

 ────

 貴方が進む道、進んできた道。貴方が踏み出した一歩一歩。

  苦しい一歩 辛い一歩……楽しい一歩 

  様々な一歩にそれぞれの記憶があります

  貴方の記憶と共にある者を願います
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