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花人の秘密
不幸ヤンキー、”狼”に咲き誇る。【4】
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「なんや、これっ!!!?」
突如として玉緒に巻き付いてきた赤い彼岸花の存在に、彼は驚いて引きちぎろうとした。しかしその青い彼岸花は哉太を守るように玉緒の拳から、腕から、背中からと徐々に彼を拘束していく。得体の知れないその気持ち悪さと、襲い掛かる彼岸花の恐怖に玉緒は畏怖を感じてしまった。
だがなんとか振り払おうとするのだが…できない。そんな光景を呆然と見つめる哉太ではあるが気味の悪さをあまり感じることは無かった。…それは哉太が縛られているロープを青い彼岸花が解こうとしていたからであろう。
…この青い彼岸花、どうして俺の拘束を、解こうとしている?
触れてみたいがきつく拘束されているので動けずにいる哉太を彼岸花は懸命に助けよとしているように思えた。何束も哉太のうっ血している手首から花が入り込んでくる。どういうわけなのかさえ哉太にも分からない。
しかし赤い彼岸花は玉緒をまるで仕留めるように次々と巻きついていく。その君の悪さに弱者は悲鳴を上げようとして…止めた。このような物体に”狼”の強者に勝つことが出来た己を恥じて冷静になろうとしている。
―しかしそのプライドが崩れていくほど、真紅の花は拘束していくのだ。
「ひぃっ!?? き…気持ち、悪いなぁ~! でもワイを怒らせたらあかんで…」
すると玉緒は右中指のリングに力を込めて呪文を唱える。
「…”スカルウェポン”、ワイを…守れ!!!」
指輪から現れたガイコツの騎士達が腰に携えている剣を抜き、襲い掛かる軍勢の彼岸花に斬りかかっていく。鋭い刃で切り落とされてしまう彼岸花の儚げな姿を見た哉太は深い悲しみを覚えた。…それは哉太自身にも分からない。
―だが玉緒の馬鹿らしくて威力の無い拳の痛さよりも深く、そして苦しく、胸を突きさされたような痛みを伴うのだ。…それはなぜなのかを哉太は自身へ問い掛けようとし視線を落とすと、不自然さを感じた。なんとなくだが地面に咲き誇る彼岸花が増えた気がしたのだ。しかも血のような赤い彼岸花も交えて。
…あかい、彼岸花?
―――グシャッ…クシャッ…クシャリ…。
…花を、踏みしめる、音?
だから哉太は虚ろな赤い瞳を音のする方へ視線を向けた。その先は真っ赤な髪をなびかせた青年。だが哉太の姿を見た途端、彼は踵を返し、鋭い眼光を玉緒に向ける。…射抜くような視線よりもその声に聞き覚えがあった。…いや違う。知っていた。分かっていた。
「お前なんかに、”オニイサン”は傷つけられた」
…この声は、この声は…。
「…お前みたいな、クズ。…死んじゃえ」
……幸?
現れた赤い髪の青年は自分の背後の兵隊を、彼岸花という名の僕を操り玉緒の兵士を呑み込んだ。そしてそれは玉緒もそうであった。赤く染まる彼岸花に埋もれる玉緒はもがき苦しむが、青年は…彼岸花 幸はそれでも彼を許さない。彼は言葉を吐き出すように罵り、彼の命を奪おうとしているのだ。その姿に、哉太は激しい違和感を持ったのだ。
「死んじゃえ。死んじゃえ。死んじゃえ!!!」
…幸、さち…なの? でも、こんなクズ野郎でムカつくけれど、さ…。
―どうしてそんなむごい言葉を、行為をするの?
しかしその疑問はすぐに解けてしまった。それは単純明快な、ただのワガママで身勝手な理由にしか哉太は聞こえなかった。
「…オニイサンは俺のものだ!!!」
「うっがぁ…!??」
玉緒の身体に張り巡らされた赤い彼岸花に哉太は心の底から恐怖を覚えた。姿は幸だ。しかし違う。違う人間だ。幸は…いや、”彼岸花 幸”という人間は、どんな状況であっても、愛しい相手の為であっても、加害者の命を簡単に奪うことはしない。そんな残酷で単純なことなどしない。
―それは互いの為だと、幸は勉学へ真剣に励む前から哉太は感じ取っていた。幸は馬鹿ではあるが愚者では無い。だから分かるのだ。
「君は…誰?」
「……」
「”サチ”では…ないでしょ?」
するとは彼は悲しそうに微笑んではロープで縛られている哉太の縄を解いた。傍らでは玉緒が気持ちの悪いうめき声を上げて赤い彼岸花に囚われている。そんな彼の様子に…サチは笑った。その人を見下すような、虫けらでも見るような笑い方に哉太は寒気を催す。今のサチはとても冷たい。まるで…。
…心が、死んだ人間みたいだ。こんなの、本物の幸じゃない。違う。
だから哉太はニヤついてクスクスと笑う幸へ真剣な眼差しで彼を見る。しかし彼は違った。哉太に向き直ると、彼は妖美で熱を帯びた瞳で彼を誘うように見る。
―それはこのような状況であるのに性行為でもしそうな、そんな色気のある微笑であった。
「……オニイサン、俺と、えっちしようよ」
「…なに馬鹿なことを言っているのかな。君はこの状況でも―」
「俺は”サチ”だよ。ねぇ、シようよ?」
誘うようにサチは哉太を抱擁した。すると青い彼岸花は彼らの行為を邪魔をさせぬようにか、一歩引いたように見えたのは哉太の気のせいなのだろうか。
突如として玉緒に巻き付いてきた赤い彼岸花の存在に、彼は驚いて引きちぎろうとした。しかしその青い彼岸花は哉太を守るように玉緒の拳から、腕から、背中からと徐々に彼を拘束していく。得体の知れないその気持ち悪さと、襲い掛かる彼岸花の恐怖に玉緒は畏怖を感じてしまった。
だがなんとか振り払おうとするのだが…できない。そんな光景を呆然と見つめる哉太ではあるが気味の悪さをあまり感じることは無かった。…それは哉太が縛られているロープを青い彼岸花が解こうとしていたからであろう。
…この青い彼岸花、どうして俺の拘束を、解こうとしている?
触れてみたいがきつく拘束されているので動けずにいる哉太を彼岸花は懸命に助けよとしているように思えた。何束も哉太のうっ血している手首から花が入り込んでくる。どういうわけなのかさえ哉太にも分からない。
しかし赤い彼岸花は玉緒をまるで仕留めるように次々と巻きついていく。その君の悪さに弱者は悲鳴を上げようとして…止めた。このような物体に”狼”の強者に勝つことが出来た己を恥じて冷静になろうとしている。
―しかしそのプライドが崩れていくほど、真紅の花は拘束していくのだ。
「ひぃっ!?? き…気持ち、悪いなぁ~! でもワイを怒らせたらあかんで…」
すると玉緒は右中指のリングに力を込めて呪文を唱える。
「…”スカルウェポン”、ワイを…守れ!!!」
指輪から現れたガイコツの騎士達が腰に携えている剣を抜き、襲い掛かる軍勢の彼岸花に斬りかかっていく。鋭い刃で切り落とされてしまう彼岸花の儚げな姿を見た哉太は深い悲しみを覚えた。…それは哉太自身にも分からない。
―だが玉緒の馬鹿らしくて威力の無い拳の痛さよりも深く、そして苦しく、胸を突きさされたような痛みを伴うのだ。…それはなぜなのかを哉太は自身へ問い掛けようとし視線を落とすと、不自然さを感じた。なんとなくだが地面に咲き誇る彼岸花が増えた気がしたのだ。しかも血のような赤い彼岸花も交えて。
…あかい、彼岸花?
―――グシャッ…クシャッ…クシャリ…。
…花を、踏みしめる、音?
だから哉太は虚ろな赤い瞳を音のする方へ視線を向けた。その先は真っ赤な髪をなびかせた青年。だが哉太の姿を見た途端、彼は踵を返し、鋭い眼光を玉緒に向ける。…射抜くような視線よりもその声に聞き覚えがあった。…いや違う。知っていた。分かっていた。
「お前なんかに、”オニイサン”は傷つけられた」
…この声は、この声は…。
「…お前みたいな、クズ。…死んじゃえ」
……幸?
現れた赤い髪の青年は自分の背後の兵隊を、彼岸花という名の僕を操り玉緒の兵士を呑み込んだ。そしてそれは玉緒もそうであった。赤く染まる彼岸花に埋もれる玉緒はもがき苦しむが、青年は…彼岸花 幸はそれでも彼を許さない。彼は言葉を吐き出すように罵り、彼の命を奪おうとしているのだ。その姿に、哉太は激しい違和感を持ったのだ。
「死んじゃえ。死んじゃえ。死んじゃえ!!!」
…幸、さち…なの? でも、こんなクズ野郎でムカつくけれど、さ…。
―どうしてそんなむごい言葉を、行為をするの?
しかしその疑問はすぐに解けてしまった。それは単純明快な、ただのワガママで身勝手な理由にしか哉太は聞こえなかった。
「…オニイサンは俺のものだ!!!」
「うっがぁ…!??」
玉緒の身体に張り巡らされた赤い彼岸花に哉太は心の底から恐怖を覚えた。姿は幸だ。しかし違う。違う人間だ。幸は…いや、”彼岸花 幸”という人間は、どんな状況であっても、愛しい相手の為であっても、加害者の命を簡単に奪うことはしない。そんな残酷で単純なことなどしない。
―それは互いの為だと、幸は勉学へ真剣に励む前から哉太は感じ取っていた。幸は馬鹿ではあるが愚者では無い。だから分かるのだ。
「君は…誰?」
「……」
「”サチ”では…ないでしょ?」
するとは彼は悲しそうに微笑んではロープで縛られている哉太の縄を解いた。傍らでは玉緒が気持ちの悪いうめき声を上げて赤い彼岸花に囚われている。そんな彼の様子に…サチは笑った。その人を見下すような、虫けらでも見るような笑い方に哉太は寒気を催す。今のサチはとても冷たい。まるで…。
…心が、死んだ人間みたいだ。こんなの、本物の幸じゃない。違う。
だから哉太はニヤついてクスクスと笑う幸へ真剣な眼差しで彼を見る。しかし彼は違った。哉太に向き直ると、彼は妖美で熱を帯びた瞳で彼を誘うように見る。
―それはこのような状況であるのに性行為でもしそうな、そんな色気のある微笑であった。
「……オニイサン、俺と、えっちしようよ」
「…なに馬鹿なことを言っているのかな。君はこの状況でも―」
「俺は”サチ”だよ。ねぇ、シようよ?」
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