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花人の謎

不幸ヤンキー、”狼”に奪われる。【1】

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 ―それは突然の出来事であった。
「な…に…、これ…?」
…が…いた…い」
 哉太とフライが胸を抑え、うずくまっている時、そんなタイミングの良い時に颯爽として現れたのは金髪を束ねたスーツを着た男性であった。彼は苦しみ悶えている2人の様子を見てまるで蔑むように笑う。
 …こいつ、まるで人間を見下すような視線してやがる。
 幸が男の笑い方に憤りを感じていると、その威圧した視線に男は軽やかに笑った。
 ―その笑みまでも人を見下すような笑い方だった。
「まずは自己紹介からやな~。ワイは数珠じゅず 玉緒たまおって言うねん。このテーマパークのオーナーや」
「お前…これは一体どういうことだ?」
「あぁ、ワイのテーマパークが気に入ってくれたさかいな~。まぁそれはそうやろ~。まずこの場所は―」
 悠然と話す玉緒に対し、呻き声を上げては胸を痛む哉太とフライに幸を含めた3人は気が気でない様子を見せる。だがそんな3人に対しても玉緒は構わずに無駄話をしているのだ。まるで必要のない人間には興味などないと言って気がしてならないのは幸だけなのだろうか?
 ―だから幸は話し続ける玉緒へ鋭い目つきと共に話を切り上げるのだ。
「つまり、このテーマパークの見どころはというとな―」
「そんなのどうだっていい!!!」
「おぉ~けったいな声上げて~。どうしたんや、兄さん?」
「…早く哉太さんとフライを解放してやれよ。…これはあんたの能力だろ?」
 急に驚くような動作を見せる玉緒に幸は急かすように彼に術を解いて欲しいことを訴えかけた。苦しがって胸を抱え動くことさえも苦痛である哉太とフライの様子を見ていられないのだ。そんな彼の心情を察した玉緒はわざと大きな息を吐く。
「はぁ~…。せっかく気ぃ遣ってお話でもしようとしていたのにせっかちな兄さんやなぁ~」
「俺は今の状況で気を遣われるほど、馬鹿じゃない」
「…それもそうやな。じゃあ単刀直入に言うと~?」
 すると玉緒は突然、心を指さしたのだ。どういうことなのかを聞きたい幸ではあるが心は玉緒ののかのように顔が引きつらせている。
「どうして心ちゃんを差した? この子はもう関係が無い」
「それはワイのを読んだ嬢ちゃんに聞いてみればええ。…なぁそうやろ?」
 ―この
 玉緒の言葉に心は憤然とした顔を一瞬浮かべたものの、自分の胸に秘めている…隠し持っていたシルバーネックレスを皆の前に掲げた。
「それは…”狼”の能力を受け継がれている、ネックレス…か?」
「心…ちゃん」
 驚く幸と事情を知っていたスピードはともかく、心のシルバーアクセサリーをしかと見る。しかしその事実を把握していたのか、玉緒は嫌に笑って手を前に出した。そんな彼に心は確信を得た言い方をするのだ。…自分と同じくの彼に対してなのか、表情を険しくさせている。
「……私のシルバーアクセサリーが欲しいのですね。そのご様子だと」
 彼女の強い言葉に彼は再びずるがしそうな笑みを浮かべて深く頷く。どうやらその様子だとそれが目的のようだ。…少女相手であるにも関わらず”狼”の哉太とフライを何らかの能力で封じる…とてつもないほど用意周到な挨拶で出迎えて。
「御明察通りや。嬢ちゃんのそのを秘めているアクセサリーが欲しい」
「私の母と自分の力を込めた…このアクセサリーがですか?」
「あぁ~、だから力が強大なんや。…だから”狼”の時は力の暴走を防ぐが為に、そのシルバーに力を注ぎ込んだ…というわけやな~」
 …心ちゃんは”狼”の時には力を抑えていたのか。だから”狼”が失われていても、自分の力とお母さんの力を注ぎ込んだアクセサリ―で…俺や哉太さんの心を読んでいたのか…。それならこれまでのことが納得いく…。
 幸の推察に心は分かっているのだろう。幸の表情を傍目に見て申し訳なそうに頷き、そしていやらしく笑う玉緒へ問い掛ける。
「それが欲しいがゆえに、哉太君達を手で苦しめているのですね?」
「…それさえくれれば、この邪魔な”狼”の2人を解放してもええ。…悪いな嬢ちゃん。商売っていうのはや。卑怯な手を使わな嬢ちゃんがそんな貴重過ぎる物を渡すとは思えなくてな~」
「…その証言に偽りはありませんか?」
 心は玉緒に再度問い掛ける。すると彼は今度は優しげな笑みを見せて大きく首を縦に振る。先ほどの笑みと比較できぬほど上品に微笑む玉緒の姿に普通の人間であればいとも容易く応じるであろう。
 ―しかし、強大な力を隠し持っていた少女は違う。玉緒の奥底に秘める人間が聞くには困難に近い可聴音を彼女は聞こえていたのだ。
「…あなた、私がこのアクセサリーを所持しているうえでが通じると思っています?」
 すると彼女の侮辱するような視線に玉緒の微笑みは凍り付き…同じく侮蔑するような視線を向けたのだ。
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