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花人の謎
不幸ヤンキー、”狼”に招かれる。【終】
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心の真剣な表情と言葉に哉太とスピードは息を呑んだ。そして哉太がどういうことかを説明してもらおうと口に出そうとした時、心は先手を打つように話していく。
「哉太君には話したよね? …幸君には2つの魂が宿ってるって」
すると哉太は頷いてある人物を話す。
「あぁ…。多分、ムマちゃんのことだとは内心分かってはいるけど…」
「…ムマちゃん?」
首を傾げているスピードはおいて置き哉太の言葉に今度は心が頷いた。そして深刻そうな顔をして語っていく。
「そう。幸君の身体にはその”ムマ”という人物の魂が宿っている。…なぜ宿ったのかは知らないけれど。…恐らくその方が幸君の魂を乗っ取って自分の物にしようとしているの」
「……あのムマちゃんが、ね…」
「なんで幸君がそんな状態であるにも関わらずここまで生きられたのかは、分からないけれど…」
心がシルバーアクセサリーを握りしめながら言い放つが、哉太には少々疑問が生じた。それは以前、自分がムマこと、ムマ幸に会った出来事からである。
―その時の彼はこう言っていたのだ。…『幸をよろしく』と。その言葉を聞いているから哉太は信じられないでいる。だから彼は心に疑問をぶつけるのだ。
「…俺にはその言葉の意味が分からないよ。俺はムマちゃんと会ったことあるし、ムマちゃんと話したことは何回もある。確かにムマちゃんの時の幸は…花ちゃんは覚えてない様子だったからなんでだろうって思っていたけど…。俺にはムマちゃんが悪い子だとは思えない」
「…哉太君、でもその人が―」
「ムマちゃんは良い子だよ。花ちゃんの身体を乗っ取ってやろうとは思えない。だからこころの言葉を聞いて信じられないでいるし…、分からない」
「でも、その人の中にある邪悪ななにかがあって、それが幸君の魂を揺らがせているから…」
なぜ”狼”の入れ墨を失ったのにも関わらず、そのようなことが言えるのであろうか。しかもムマさちを知りもしないで毛嫌っている節が見える心に、幼稚な哉太は少し怒りを孕んだ。しかし少し息を吸って、頭を整理しつつも彼女へこのような言葉掛けをしてしまう。
「…どうしてこころは、ムマちゃんを悪者扱いするの?」
「悪者扱いではなくて…」
「でも分かっていないのに断定しているような仕草じゃん。どうしてそんな酷い言葉が言えるの?」
「……」
少女相手に怒っている様子の哉太にヒヤヒヤしているスピードは場を和まそうとする。だが心は小さく呟くのだ。
「…そのムマって人から冷たいなにかを感じたからだよ。…死んでいる人みたいな冷たいなにかが、ね」
「えっ…それってどういう―」
「お~い、帰って…来た…ぞ~…!」
驚く哉太をよそに、フリーフォールから帰ってきた幸とフライが帰ってきた。晴れやかな様子のフライとくたびれている様子の幸に、哉太は先ほどの心の言葉を留めて置く。そしてフライから幸を引きはがし幸とくっついては…真剣な顔をして見つめたのだ。
「な、哉太さん…なに?」
「…ちょっと良い?」
「…え?」
何事かと思っている幸に哉太は幸の額に手…ではなく自身の額を当てたのだ。
「なっ!??」
声を上げるフライを無視して哉太は幸の体温を感じる。…温かい。さすがに死んではいない。動いているのだから当たり前なのだがその感触や実感が哉太には欲しかったのだ。だが、突然の行動に幸は驚いて尋ねるのではあるが…。
「どっ、急にどうしたんだよ…?」
―――ギュウゥ…。
幸から離れたかと思えば今度は抱き締めてくる哉太に、幸は人前で恥ずかしさ感じた。しかし普段とは違う彼を見た気がして羞恥心は感じるが、恐る恐るといった風に哉太の背中を撫でる。そんな哉太は幸の耳元で囁いた。
「…俺、幸が、花ちゃんが死なないように頑張るから。…絶対に」
「…はっ?」
意味不明な言葉を聞いて呆然とする幸をよそに、哉太は幸からようやく離れた。だが今度は手を繋いで歩き出すのである。さきほどよりも妙にくっつきたがりの哉太に疑問を覚えながら幸は連れられて行こうとした…その時。
―――ズキンっ!!!
「痛っ!?? なんか胸が……」
「ん…!?? なんだ…これ?」
なんとフライと哉太が同時に倒れ込んで胸を抑えたのだ。しかも息を切らして汗を掻く姿に他の3人は彼らの介抱をする。
「哉太さん、大丈夫かよ!??」
「フライ先輩、どうしましたか??」
「哉太君…どうしたのかな、横になる?」
幸やスピード、そして心が2人に駆け寄り、苦しそうな2人を医務室へと運ぼうとした。幸は哉太を、スピードはフライを背負うとした…その時、金髪のスーツを着た男が立ちはだかっていたのだ。その男は3人をにんまりと笑ってから言い放った。
「ようこそ。…我が城へ!」
そう言って苦しがる哉太とフライを尻目に、幸は眼光を鋭くさせた。
…こいつ、”狼”かよ。
そんな彼を見ても玉緒は嘲笑し、顔を青ざめている心へ視線を向けた。彼女はどうしてこのような事態に陥ったのかを分かっている様子である。スピードも幸同様に威嚇し戦闘態勢をすると彼はおかしそうに笑ったのだ。
「…お前さんらの、いや、特に嬢ちゃんのアクセサリーを頂きに参上したんやで?」
彼の言葉に心は顔を真っ青にした。そして真っ青になる心に幸は不思議な表情を浮かべたのだ。
「哉太君には話したよね? …幸君には2つの魂が宿ってるって」
すると哉太は頷いてある人物を話す。
「あぁ…。多分、ムマちゃんのことだとは内心分かってはいるけど…」
「…ムマちゃん?」
首を傾げているスピードはおいて置き哉太の言葉に今度は心が頷いた。そして深刻そうな顔をして語っていく。
「そう。幸君の身体にはその”ムマ”という人物の魂が宿っている。…なぜ宿ったのかは知らないけれど。…恐らくその方が幸君の魂を乗っ取って自分の物にしようとしているの」
「……あのムマちゃんが、ね…」
「なんで幸君がそんな状態であるにも関わらずここまで生きられたのかは、分からないけれど…」
心がシルバーアクセサリーを握りしめながら言い放つが、哉太には少々疑問が生じた。それは以前、自分がムマこと、ムマ幸に会った出来事からである。
―その時の彼はこう言っていたのだ。…『幸をよろしく』と。その言葉を聞いているから哉太は信じられないでいる。だから彼は心に疑問をぶつけるのだ。
「…俺にはその言葉の意味が分からないよ。俺はムマちゃんと会ったことあるし、ムマちゃんと話したことは何回もある。確かにムマちゃんの時の幸は…花ちゃんは覚えてない様子だったからなんでだろうって思っていたけど…。俺にはムマちゃんが悪い子だとは思えない」
「…哉太君、でもその人が―」
「ムマちゃんは良い子だよ。花ちゃんの身体を乗っ取ってやろうとは思えない。だからこころの言葉を聞いて信じられないでいるし…、分からない」
「でも、その人の中にある邪悪ななにかがあって、それが幸君の魂を揺らがせているから…」
なぜ”狼”の入れ墨を失ったのにも関わらず、そのようなことが言えるのであろうか。しかもムマさちを知りもしないで毛嫌っている節が見える心に、幼稚な哉太は少し怒りを孕んだ。しかし少し息を吸って、頭を整理しつつも彼女へこのような言葉掛けをしてしまう。
「…どうしてこころは、ムマちゃんを悪者扱いするの?」
「悪者扱いではなくて…」
「でも分かっていないのに断定しているような仕草じゃん。どうしてそんな酷い言葉が言えるの?」
「……」
少女相手に怒っている様子の哉太にヒヤヒヤしているスピードは場を和まそうとする。だが心は小さく呟くのだ。
「…そのムマって人から冷たいなにかを感じたからだよ。…死んでいる人みたいな冷たいなにかが、ね」
「えっ…それってどういう―」
「お~い、帰って…来た…ぞ~…!」
驚く哉太をよそに、フリーフォールから帰ってきた幸とフライが帰ってきた。晴れやかな様子のフライとくたびれている様子の幸に、哉太は先ほどの心の言葉を留めて置く。そしてフライから幸を引きはがし幸とくっついては…真剣な顔をして見つめたのだ。
「な、哉太さん…なに?」
「…ちょっと良い?」
「…え?」
何事かと思っている幸に哉太は幸の額に手…ではなく自身の額を当てたのだ。
「なっ!??」
声を上げるフライを無視して哉太は幸の体温を感じる。…温かい。さすがに死んではいない。動いているのだから当たり前なのだがその感触や実感が哉太には欲しかったのだ。だが、突然の行動に幸は驚いて尋ねるのではあるが…。
「どっ、急にどうしたんだよ…?」
―――ギュウゥ…。
幸から離れたかと思えば今度は抱き締めてくる哉太に、幸は人前で恥ずかしさ感じた。しかし普段とは違う彼を見た気がして羞恥心は感じるが、恐る恐るといった風に哉太の背中を撫でる。そんな哉太は幸の耳元で囁いた。
「…俺、幸が、花ちゃんが死なないように頑張るから。…絶対に」
「…はっ?」
意味不明な言葉を聞いて呆然とする幸をよそに、哉太は幸からようやく離れた。だが今度は手を繋いで歩き出すのである。さきほどよりも妙にくっつきたがりの哉太に疑問を覚えながら幸は連れられて行こうとした…その時。
―――ズキンっ!!!
「痛っ!?? なんか胸が……」
「ん…!?? なんだ…これ?」
なんとフライと哉太が同時に倒れ込んで胸を抑えたのだ。しかも息を切らして汗を掻く姿に他の3人は彼らの介抱をする。
「哉太さん、大丈夫かよ!??」
「フライ先輩、どうしましたか??」
「哉太君…どうしたのかな、横になる?」
幸やスピード、そして心が2人に駆け寄り、苦しそうな2人を医務室へと運ぼうとした。幸は哉太を、スピードはフライを背負うとした…その時、金髪のスーツを着た男が立ちはだかっていたのだ。その男は3人をにんまりと笑ってから言い放った。
「ようこそ。…我が城へ!」
そう言って苦しがる哉太とフライを尻目に、幸は眼光を鋭くさせた。
…こいつ、”狼”かよ。
そんな彼を見ても玉緒は嘲笑し、顔を青ざめている心へ視線を向けた。彼女はどうしてこのような事態に陥ったのかを分かっている様子である。スピードも幸同様に威嚇し戦闘態勢をすると彼はおかしそうに笑ったのだ。
「…お前さんらの、いや、特に嬢ちゃんのアクセサリーを頂きに参上したんやで?」
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