不幸ヤンキー、"狼"に狩られる。〜跳躍〜

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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花人の謎

不幸ヤンキー、”狼”に招かれる。【1】

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 怪しさはかなりあるものの、無料でテーマパークに入られるなんて思いもしなかったので行くことになった3人。…特に心は内心ではかなりはしゃいでいる様子だ。
 ―しかし表に出せていないのは、この中でも年長者である哉太がおおいにはしゃいでいたからである。
「いや~、もうすっごく楽しみだわ~!!!」
「哉太さん、うるさい。電車の中だしさ…」
「え~、だって楽しみすぎてさ~!」
 呆れている様子の幸と同様に心も深く息を吐いている。しかも哉太がはしゃぎすぎて恥ずかしいからか、借りて来た本を読んで他人のフリをする始末。…ちなみに題名は『精神と心の夢発見』というフロイトが元になっている心理学の本であった。難しそうな本を読む小学生に幸は感心しつつも圧倒されている様子である。
 …心ちゃん、すげ~…。俺も本も読まないとな…。
 最近はニュースを見ている幸がそのようなことを思っていると、哉太はまた嬉々として大きな独り言を呟いた。
「なかなか行く機会ないしな~、あ~、楽しみ!!!」
「…あんたははしゃぎすぎだっつぅの、…まったく!」
 相も変わらずはしゃいでいる様子の哉太に幸は彼をたしなめる。すると哉太は一生懸命読書をする心へ、視線を向けるのだ。
「お~、こころは勉強か~。偉いね~、しかもとは王道を行くね~?」
 …フロイト、誰? 
 幸の脳内変換で『風呂伊藤ふろいと』とされるがそのようなわけは無いと頭を振る。しかし幸の脳内変換をような心は幸に向けて首を振るのだ。
「幸君、それは違うからね」
「え…、なんでバレて―」
「それよりも哉太君、フロイトさん知っているの?」
 幸の疑問を遮り、心は哉太に問い掛けた。すると哉太は自信ありげに述べていくのである。
「さすがにフロイトは知っているよ~。夢診断の人でしょ?」
 すると心は頷いて説明を加える。
「うん。看護師さんの理論っていう教科書でよく使われているってお父さんから聞いたことがあって…」
「へぇ~、看護師さんの理論か~。教材に使用されているのね~」
「うん。私のお母さん、病気になる前はだったらしいから」
 心の母親の職種に幸も哉太も驚いた様子である。まさか彼女の母親が看護師であったとは知らなかった。しかし心はしおりを入れて本を閉じてから驚いている様子の彼らに伝える。
「でも、お母さんは私を産んでから病気になっちゃったから印象が残っていないの。だから分かるのは写真と、このアクセサリーだけかな」
「アクセサリー…って、心ちゃんも付けていたのか…」
 …小学生が付けるのには早くは無いか?
 すると心は幸の思ったことに対し瞬時に答えたのだ。
「幸君はお父さんみたいなこと思うね~。小学生でも付けちゃいけないの?」
「えっ…またどうして?」
 再び戸惑う幸に心は悪戯に笑ったのだ。
「顔に書いてあった気がしたから…かな?」
 そしてまた読書をする心に幸は不思議に思い、哉太は察したかのように笑っていたのであった。


 改札を出て進んでみると、目的地のテーマパークまで10分ぐらいで着きそうだ。だがその前にチェーン店であるカフェでフライと落ち合おうという幸は話をしていた。
「よ~し、フライは今どこかな~」
 スマホで弄ってみると…なんと連絡アプリではフライは既に着いているらしい。…しかもだ。フライト共にスピードも同席しているようであった。
「あれ、スピードも来るのか~」
 覗き込む哉太に幸は呆れつつも『もうそろそろで着く』と打ち込む。その姿も哉太はじっと見つめるので、恥ずかしさのあまり少し睨んでしまった。
「勝手に見るなよ…」
「あの紫チャイナも居るのとはね~…ふぅ~ん」
「いや、護衛は付いていた方が良いから良いんだけどさ?」
 何かを期待させるような、含んだような言い方をする哉太へ、違和感を抱くものの幸は地図アプリを開く。ちなみに心は初めてのテーマパークで胸を高鳴らせている様子で”こころここにあらず”というような感じだ。そんな彼女に気付きつつ、幸は哉太へ問い掛けるのだ。 
「『ふぅ~ん』ってなんだよ?」
「いや、まぁどういう展開になるのかな~って思っただけ~」
「なんだそれ?」
「スピードがあの白髪もやしに告白するとかさ~」
 哉太の率直な発言に幸は顔を紅潮させてしまう。というか願わくばそうなって欲しいという自分も居た。
「…まぁテーマパークは鉄板ではあるな…うん」
「というか早くそうなって、あの小姑こじゅうとをなんとかして欲しいね、まったく」
 恋の予感を感じる哉太と幸に今度は心が疑問を抱くような顔をして尋ねて来たのだ。
「その2人は哉太君や幸君みたいになる予定なの?」
「っえ!?」
 爆弾発言をされる心に幸は驚いてからさらに顔を赤くするが、しかし哉太はニヤつきながら心へこのような返答をしたのである。
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