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狼が参上!

不幸ヤンキー、”狼”と共有する。【4】

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 心が助かったのは哉太の磁場もといの力である。それは後程のちほど、哉太が説明をしてくれるだろう。
「ひぃっく…ひぃっく…うぅ…!」
 自殺する身であった心が2人の前でボロボロと涙を零していた。たとえ異端だと言われ崇められ奉られていたとしてもやはり死ぬのは怖かったのだ。当たり前だ。死ぬのは誰だって怖い。
「心ちゃん…」
 幸にも抱かれ、頭を撫でられた。その手はとても温かい。だからますますヒクヒクと涙を流しながら嗚咽し正直な言葉を綴る。
「こわ…かった…。やっぱり…死ぬのは…怖い」
 普段の人形のような少女ではなく、小さな女の子として泣き出す彼女に幸は哉太と共に抱き締めては涙ぐんでしまう。自分だって心があの場で助からず亡くなったことを想像すれば、背筋が凍えてしまうほどの恐怖であったから。だから泣き出す少女の頭を優しく撫でる。
「怖かったろ? 俺は君が、心ちゃんが死ぬ方がよっぽど怖かったよ。…哉太さんの能力だろうけれど無事で安心した」
 すると心は泣きながら急に奇妙な言葉を言い出したのだ。
「…なた。あなたには心が、魂がありますね」
「えっ…2つの…魂?」
「ヒクッ…。はい…。そう…です」
 心をゆっくりと下ろしてからボロボロと零して涙する心に幸がハンカチを差し出せば彼女は軽く礼をする。そして言い放ったのが先ほどの発言だ。心の言葉に幸が疑問を見せれると2人の会話の間を取って哉太が先ほどのについて説明を設ける。
「はぁ~…良かったよ~。無事で安心した。…とっさに窓ガラスを磁石に変えて反発させたのが良かったんだね~」
 そして幸と同様に彼女の頭を撫でては幸に目配せをする。先ほどの心の発言であろう。哉太も気になっている様子だ。だから幸は復唱するように呟く。
「…俺に2つの魂がある、か」
 今度はむせぶ心の背中を擦りながら哉太に言う幸ではあるが彼には思い当たる節があるらしい。先ほどの安堵の表情を見せてから神妙な顔をする哉太の様子に幸は思い出したように問い掛ける。
「そういえばだけど…。哉太さん、たまに俺のこと”ムマ幸”って言っていたよな?」
「うん。よく言っていたね…、最近はお目に掛かれないけれど」
「誰だろうかと思っていたけど…」
 考え込む幸に哉太は彼にも安堵させるような表情を見せ今度はこのような言葉を紡いだ。
「まぁ信じられないだろうから冗談みたいな感じでは言っていたけど…花ちゃんなんだよね。その”ムマ”って子は。…でももう現れないって言っていたけれど?」
「いえ…現れなくても…の中で生きています」
 心の言葉に幸と哉太は疑問符を浮かばせているが、それでも彼女は涙を呑んで言葉にする。
「彼岸花さんの…んんう。の心にはその人が居るの。なぜかは分からない。でも、。1つの魂に1つしか入れない」
「…それが破られると、どうなるの?」
 恐れもあるが疑問も抱いたので幸が言葉にすると彼女は涙を拭いて言い放つ。
「その制約を破れば必ずが来る…って教えられたの」
「見返り…ね…」
 哉太も復唱をすれば心はさらに言葉にする。…幸自身に気付いて欲しかったからであろう。だから言葉を強くして言い放った。
「だから幸君は自分自身を見ないと、幸君が自覚をしてその魂と切り離さないと…幸君は幸君でいられなくなる」
 泣きじゃくっていた少女から紡ぎ出される言葉に圧倒される幸ではあるが、哉太は疑問を抱いた。
 幸とムマのことも心配ではあるのだが…それよりもなぜ、能力を失った心は幸のことが分かったのだろうか。頬にあった”狼”の入れ墨は綺麗に消失をしている。
 …でもどうして心にはムマさちの正体さえも掴めたのかな?
 その疑問を投げかけようとするのだが…心は緊張の糸が切れたようで流れるように地面に脚をつき倒れてしまった。
「あぶないっ!」
「おっと!」
 反射的に幸と哉太が怪我をさせないように彼女を支える。同時に支えた2人は心がスヤスヤと眠る姿を見てやっと安心をした。
「良かったよ…。心ちゃんが死ななくて」
「うん…良かったよ。今度は助けられてさ」
 すると幸は眠っている心を哉太に預け、少々言いにくそうな顔をした。その顔は紅潮しており、どうしたのだろうかとさえ思うほどだ。
 だが幸は意を決して言い放つのだ。
「哉太さんとも、その…和解? 出来て良かったし。だから、あの…、心ちゃんを俺ん家に連れても眠っていたら…」
「眠っていたら?」
 すると幸は顔を真っ赤にしたかと思えば哉太に駆け寄り背伸びをして囁くのだ。
「その…。シようよ…エッチ」
「幸…!!!」
 今すぐ抱き締めてしまいたいが大切な家族が哉太の両腕で眠っているので2人は互いに微笑んだ。
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