上 下
13 / 58
狼が参上!

不幸ヤンキー、”狼”とぎこちなくなる。【3】

しおりを挟む
 ―囲戸 心は突然現れて幸の家に来た。初めは厄介ごとが増えてしまったとか、幸との甘いひとときを邪魔されるのではないかと危惧していたのだが…。彼女は逆に突然押しかけてきてわがままを言うのかと思えば、自分をまるで”居ない存在”かのように、自分達に気を遣っていたのだ。
 ―まだ幼い少女であるにも関わらず。だから彼女の不可思議な行動に2人は困惑もしたものだ。…そんな彼女は本当に行き場の無かったからここ幸の家にやって来たのか。…彼女を、心自身彼女を傷付けてしまった哉太が居座っているのを知っていても…か。
 だから哉太は呑気に打ち合わせをする撫子の話など聞き流しながら考えていた。
 …一体、心はどこでなにをしていたんだろう。本当に宿でもしていたんじゃ…?
「お~い、場磁石~、聞いてんのか~お前―」
「ごめん撫子、やっぱり心配だわ、俺!」
「…はぁ?」
 話の途中であっても哉太は気にせずにはいられない。どこか儚げで、可憐で…人を魅了さえしてしまう彼女を…心に哉太は本当の魅了されてしまった。…だから彼は担当編集との打ち合わせを見送り、幸に電話を掛けようとするのだが…彼からも連絡が来ていたようだ。 
「…なんだろ。花ちゃん、俺に何か…。もしかして…」
 …今日こそは夜の営みを?
「じゃなくてっ、あ~もうこんな自分が嫌だ~。早く除夜の鐘でも聞きたいぐらいだよ~、本当に!!」
 余裕の見えない冗談はさておき。心が心配であったので哉太は幸に電話を掛ける。今まで聞いたコール音よりもなんとなく長さを感じつつ、哉太は幸が出てくれるのを願った。
 ―するとコール音が止んだ。
『もしもし哉太さん、…良かったのに。メッセージだけ読んでくれれば』
「いや~。花ちゃんと話したかったし。…ところで心は居るかな?」
 本当は幼い彼女のことを話そうと哉太は思っていた。…しかしこの変態狼。彼はまだ小さい蕾よりかは育て上げた大輪で儚げな彼岸花を選んだようだ。
『心ちゃん? 今日は親戚の家に泊まるらしいよ』
「いや実は―」
『…今日さ、哉太さんの家に泊まっても良い?』
「……っえ?」
 …幸が、誘ってくれた~!!!?
 変態狼はその言葉でノックアウト。彼女のことなど忘れては、まだまだ未熟ではあるものの艶やかで、無自覚だが愛しくて堪らない青年の言葉に耳を傾けたのだ。…やはり根は腐っているから腐っているのである。…雑草ほどの図太さは忍ばせてはいるが。
「えっ、なんで…また?」
 哉太は言って欲しかった。…最近は恋人としての行為もご無沙汰でなにも出来ていないことを。恥ずかしがり屋の幸から言ってくれたら自分の脳内は幸せに包まれると。
 ―しかし、そう上手くはいかない。
『あっ、いや。…心ちゃんが親戚の家に泊まるって言うし、最近は哉太さんの家の掃除出来ていないだろ』
「あ…あ~…」
『だから掃除にでもって』
 青年はであるから媚びなど売らない。…ただ変態狼こと哉太の気持ちは急降下。
「…それだけ?」
 期待で膨らんでいた妄想がしぼんでいく様に哉太の声のトーンは落ちるが、幸は続けて言い放つ。本人は悪気が無いようだが、明らかに哉太を利用しているというばかりの言葉を並べるのだ。
『あと勉強教えて欲しいんだよ。…いっつもごめんな~家庭教師にさせちゃって。…じゃあマンション近くで待ってるから』
 切なく消えてしまった連絡に哉太は溜息を深く吐く。しかし哉太は諦めずにいた。
「いや、今日は花ちゃんが泊まってくれる日!」
 …ツンデレな花ちゃんだからちょっと何かしら仕掛ければ…必ずエッチな展開になるはず!!
「…よ~し。マンネリ防止作戦だー!!!」
 大きな声で言い放つ哉太を通行人は彼を不審者だと思うのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜

ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。 高校生×中学生。 1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。

支配された捜査員達はステージの上で恥辱ショーの開始を告げる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

男色官能小説短編集

明治通りの民
BL
男色官能小説の短編集です。

性奴の夜

くねひと
BL
Sのセイヤ、そしてMのユウキ……。マッチングアプリで知り合った二人のSMプレイがユウキの視点で語られる。この日も、ユウキはいつものように素裸で緊縛され、セイヤの前にひざまずいていた。でもいつもと少し勝手が違う。なぜって、二人の他に、少年がいるから………。

処理中です...