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《クスノキとアベリア》
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広い浴室にて二人の男が浴槽に入り項垂れていた。熱い夜は峠を越えたようだ。
「麗也さん、俺にずっとキスしてくれたから嬉しかったです。気持ち良かったですし……」
「普通は挿入すれば痛みも伴うんだがな。お前は痛みに関してはかなり乏しいから、そこだけは良かった……のか? う~ん、なんか複雑だな……」
啼いてよがらせるのも一興だというのに気持ちが良かったというのも複雑だなと楠は感じた。まぁ痛みがない分、心地よいセックスになれたのだから結果的には良かったなと自分で納得させた。
チャポリと湯船が音を立てる。花の香りがする湯の香りであった。
「……どうしてウツギって名前にしたんですか。ミノルでも良かったのに」
「どうした急に?」
ずっと疑問を抱いていたのだ。どうして自分はミノルではなくウツギという名前になったのだと。愛されるのならばミノルでも構わなかった。
自分は戦闘ネイチャードールAB77―2005樹。名前にこだわりは特にはない。楠がくすりと笑った。
「俺がそう名付けたかったんだよ。――お前がアベリアに捨てられていた時に運命を感じたから」
ウツギを前にしている楠の腕が湯をさまよって音を鳴らす。チャプリと鳴らしてウツギの淡く染まった肌に触れた。
「アベリアは別名スイカズラ科ツクバネウツギと言って和名ではハナゾノツバネウツギとも言う。ウツギは空に木で空木だ。でもミノルと書いてもウツギになるからそうした……っていうのもあるし」
「あるし?」
「……花言葉があるんだよ」
楠が耳元に寄せて「なんだと思う?」なんて官能的に尋ねてきた。もう自身など勃起させぬほど搾り取られたが反応して身を捩ってしまう。「わかりません……」熱を帯びて答えれば……楠は耳元でふと笑う。
「強運だよ」
ウツギの瞳が見開き白潤に染まった。――強運。そんな願いを込めて名付けられたのだと思うと嬉しくて、嬉しくて……泣き出しそうになってしまう。
だが楠の言葉は止まらない。
「俺のせいでこれ以上不憫な目に遭わせたくはなかったんだ。俺が作ってしまった以上の責任は伴う必要があるなと感じて、大学で見習いの助手にしてさ。まぁ、俺に惚れてくれるとは誤算だったけれどな」
「……麗也さん」
「なんだ――」
後ろを振り向き唇を奪った。甘く甘露でいやらしい響きが浴室に鳴りやまない。ウツギはキスをして楠を確かめたかったし、楠も応えるようにキスに励んだ。
銀糸がたらりと湾曲を描いてぽたりと落ちる。楠は余裕そうだが、ウツギは顔を紅潮させていた。
「お前誘ってんのか? そんなにもっとついて欲しいのなら――時間延長してやるぞ」
風呂よりも熱い熱が形を持って怒張しウツギに充てがう。ウツギはというと「じゃあ時間延長してください」そしてキスして風呂場で致したのだ。
夏休み真っ只中。雑草が生えて草木も生い茂る地面を鍬でさくさくと刈り立ててゴミ袋へ突っ込んだ。いくつものゴミ袋が連なっているのでウツギは華奢な身体であるにも関わらず、抱え込んでは運んで捨てていく。
ふぅ……と息を吐く頃にはゴミ袋は片付けられて太陽がさんさんとしていた。首から下げているタオルが汗でびっしょりだ。
「よし、これでいいかな。あとは水やりして、肥料の配分して……」
滴る汗を拭いて一旦事務室へと行こうとした時、「うーちゃん~!!」声を掛けられて振り向けば目木や黒鉄、百日紅が遊びに来ていたのだ。太陽に負けないほどの笑顔にウツギは嬉しそうに微笑んだ。
「俺、汗臭いと思うけれど……遊びに来てくれてありがとう~」
「なに言ってんの。うーちゃんが汗びっしょりなぐらい頑張っているんでしょ? シャワー浴びてきなよ。少し休憩したら?」
「でもまだ仕事あるし……」
目木がぶすっとした顔になったかと思えばニヒルに笑う。
「俺たちが手伝ってあげるからさ、ね~? クロにさっちゃん?」
「大丈夫だ」
「姫の為なら俺は頑張れるぜ!」
笑みを見せる三人に「じゃあ……」そう言ってウツギはシャワーを浴びに行く。乳首と首筋に赤い斑点があったので「あれ、発疹なんかできていたっけ?」などと言っていた。昨夜の熱い行為の印は忘れているというよりもわからないという様子だ。
さすがは天然爆発生物である。
青いシャツにデニムを履いてくたびれたスニーカーを履いて皆の前に行けば……目木がにやりと笑い「首筋どうしたの?」わざと尋ねてきた。
「あー……謎の発疹ができたんだよね。これも謎かな?」
百日紅とウツギ以外の二人は太い息を灯したのだ。
~Fin~
「麗也さん、俺にずっとキスしてくれたから嬉しかったです。気持ち良かったですし……」
「普通は挿入すれば痛みも伴うんだがな。お前は痛みに関してはかなり乏しいから、そこだけは良かった……のか? う~ん、なんか複雑だな……」
啼いてよがらせるのも一興だというのに気持ちが良かったというのも複雑だなと楠は感じた。まぁ痛みがない分、心地よいセックスになれたのだから結果的には良かったなと自分で納得させた。
チャポリと湯船が音を立てる。花の香りがする湯の香りであった。
「……どうしてウツギって名前にしたんですか。ミノルでも良かったのに」
「どうした急に?」
ずっと疑問を抱いていたのだ。どうして自分はミノルではなくウツギという名前になったのだと。愛されるのならばミノルでも構わなかった。
自分は戦闘ネイチャードールAB77―2005樹。名前にこだわりは特にはない。楠がくすりと笑った。
「俺がそう名付けたかったんだよ。――お前がアベリアに捨てられていた時に運命を感じたから」
ウツギを前にしている楠の腕が湯をさまよって音を鳴らす。チャプリと鳴らしてウツギの淡く染まった肌に触れた。
「アベリアは別名スイカズラ科ツクバネウツギと言って和名ではハナゾノツバネウツギとも言う。ウツギは空に木で空木だ。でもミノルと書いてもウツギになるからそうした……っていうのもあるし」
「あるし?」
「……花言葉があるんだよ」
楠が耳元に寄せて「なんだと思う?」なんて官能的に尋ねてきた。もう自身など勃起させぬほど搾り取られたが反応して身を捩ってしまう。「わかりません……」熱を帯びて答えれば……楠は耳元でふと笑う。
「強運だよ」
ウツギの瞳が見開き白潤に染まった。――強運。そんな願いを込めて名付けられたのだと思うと嬉しくて、嬉しくて……泣き出しそうになってしまう。
だが楠の言葉は止まらない。
「俺のせいでこれ以上不憫な目に遭わせたくはなかったんだ。俺が作ってしまった以上の責任は伴う必要があるなと感じて、大学で見習いの助手にしてさ。まぁ、俺に惚れてくれるとは誤算だったけれどな」
「……麗也さん」
「なんだ――」
後ろを振り向き唇を奪った。甘く甘露でいやらしい響きが浴室に鳴りやまない。ウツギはキスをして楠を確かめたかったし、楠も応えるようにキスに励んだ。
銀糸がたらりと湾曲を描いてぽたりと落ちる。楠は余裕そうだが、ウツギは顔を紅潮させていた。
「お前誘ってんのか? そんなにもっとついて欲しいのなら――時間延長してやるぞ」
風呂よりも熱い熱が形を持って怒張しウツギに充てがう。ウツギはというと「じゃあ時間延長してください」そしてキスして風呂場で致したのだ。
夏休み真っ只中。雑草が生えて草木も生い茂る地面を鍬でさくさくと刈り立ててゴミ袋へ突っ込んだ。いくつものゴミ袋が連なっているのでウツギは華奢な身体であるにも関わらず、抱え込んでは運んで捨てていく。
ふぅ……と息を吐く頃にはゴミ袋は片付けられて太陽がさんさんとしていた。首から下げているタオルが汗でびっしょりだ。
「よし、これでいいかな。あとは水やりして、肥料の配分して……」
滴る汗を拭いて一旦事務室へと行こうとした時、「うーちゃん~!!」声を掛けられて振り向けば目木や黒鉄、百日紅が遊びに来ていたのだ。太陽に負けないほどの笑顔にウツギは嬉しそうに微笑んだ。
「俺、汗臭いと思うけれど……遊びに来てくれてありがとう~」
「なに言ってんの。うーちゃんが汗びっしょりなぐらい頑張っているんでしょ? シャワー浴びてきなよ。少し休憩したら?」
「でもまだ仕事あるし……」
目木がぶすっとした顔になったかと思えばニヒルに笑う。
「俺たちが手伝ってあげるからさ、ね~? クロにさっちゃん?」
「大丈夫だ」
「姫の為なら俺は頑張れるぜ!」
笑みを見せる三人に「じゃあ……」そう言ってウツギはシャワーを浴びに行く。乳首と首筋に赤い斑点があったので「あれ、発疹なんかできていたっけ?」などと言っていた。昨夜の熱い行為の印は忘れているというよりもわからないという様子だ。
さすがは天然爆発生物である。
青いシャツにデニムを履いてくたびれたスニーカーを履いて皆の前に行けば……目木がにやりと笑い「首筋どうしたの?」わざと尋ねてきた。
「あー……謎の発疹ができたんだよね。これも謎かな?」
百日紅とウツギ以外の二人は太い息を灯したのだ。
~Fin~
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