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《戦闘後》
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白い瞳から青く染まったウツギが柳瀬と向き合って戦闘態勢に入る。地面を蹴り上げ、巨大な骸の身体を入っていき、まずは瞳を切り裂いた。
『ぐぅっ!??』
だが瞳は修復していき、巨大な右手がウツギを握り潰しそうとする。――ウツギはひらりと空中で翻し、骸の身体に捕まった。瞳は濃紺に染まる。
『ちょこまかと動きやがって!』
「動かせてもらうよ。……俺はみんなを守りたいから」
決死な覚悟で今度は地面へと移動をするウツギを巨大な左手が襲い掛かる。ウツギは宙に舞って柱に飛び降りた。皆は騒然とした。
「す、すげぇ……」
「あれが、本来の……うーちゃん」
黒鉄や目木が目を見張り、百日紅も当惑しているなかで楠だけは違った。楠は巨大な骸骨に立ち向かい、隙間な空間へと侵入したのだ。
「先生、なにやって――」
「俺たちもウツギの戦闘に参加するぞ! 植物探偵団の力を見せつけろ!」
それだけを言って隙間へ入っていく様子の楠に三人は呆然したかと思えば、ふと笑う。
「そうだよね。俺たち植物探偵団だもん」
「うーちゃんの力になりたいもんな」
「姫が戦うのなら俺も戦う!」
三人は拳を掲げたかと思えば各々の武器を掲げた。目木はシャンプー入り水鉄砲を。黒鉄は胡椒入り爆弾を。……そして百日紅はドクダミスプレーであった。
「よし、これで向かうぞ」
目木の合図に三人も臨戦態勢に入ったところでようやく刑事たちが来た。なにがどうなっているのだと困惑している様子の彼らに「拳銃でも良いからとりあえず、あの怪物を撃ち殺せ!」目木が命令をすると刑事の指南のもと、皆が一斉に拳銃を構えて射撃の用意をした。もちろん目木たちもだ。
普通は特例が出ない限り拳銃など出せないのだが、今回ばかりは相手が怪物であるがゆえに咄嗟の判断をしたらしい。
拳銃が撃ち込まれ上体を崩す柳瀬は地鳴らしのように右手と左手を同時に拳で打ち込んだ。するとまるで地震が起こったかのように地面が揺れ動く。
「逃げろーーー!!!」
退避を余儀なくされる警察たちや目木であったが、地面に潜んでいる楠と天井に這いつくばっているウツギは逃げずに身構えた。
地面に潜っている楠であったが、柳瀬の腰大腿になにやら禍々しく輝くなにかを見つけ、動かしてみる。
すると地面が大きく揺れた。揺さぶってみると激しく揺れるのだ。
『腰が……、腰がぁっっ!???』
すると地面から柳瀬の隠れた脚がずるりと這い上がり、腰大腿を露呈させる。
ウツギは目を見張った。そこにはネイチャーブレインの核が詰まっており、そこに楠がぶら下がっていたのだから。
「楠さん!!!」
ウツギは天井から伝って地面に降り立ち、楠の元へ駆け寄る。危険に犯されている楠を助けるがあまり必死であった。――柳瀬の右手がウツギの左半身を切り裂いた。
「――ウツギ!!!」
左半身が地面へと崩れ落ち、ひとつの植物となって花が咲く。……アベリアだ。アベリアが必死な形相で可憐で美しく咲いていた。
ウツギは白い瞳で一瞥しにやりと微笑んでは、柳瀬に対抗するように目を見張る。
柳瀬の禍々しい瞳がぎょろりと動いた。
『私を殺せばお前も死ぬ。お前自身が死ぬんだぞ?』
「それでも構わない」
ウツギは柳瀬の腰大腿に視線を向けてなぞるように視線を鋭くさせる。そして拳を握る。――この世に未練などない。そんなことを想い馳せているかのようであった。 地面へと落下した楠をアベリアが守るように、庇うように楠の身体を保護する。ジャスミンのような淡く甘い香りに誘われて、楠は一時は気を失ったものの、その甘い香りで目が覚める。
ウツギと出会って楽しかったことや大変だったこと、苦労したことを思い出した
が、一番は楽しかった思い出であった。
ウツギと出会って自分の笑顔が増えた。日々がこんなにも輝きに満ち溢れていた。最低な自分を愛して『大好きだ』そう言ってくれた。
そんなウツギがこの世から消える。
――そんなの嫌だ!!!
「ウツギ!!! 俺と一緒に戻ろう、帰ろう。一緒にココアでも飲んで、まったりしよう!」
ウツギ振り返らない。ただ前を向いているだけだ。
「俺は、ウツギが居なくなったら絶対に後悔する! お前が戻ってきてくれるのなら、俺はなんだってする! だから戻ってこい!」
ウツギは振り返らない。
「お前が死んだら俺も死んでやる! だから戻って……戻って……来いよ!」
悲痛な楠の叫びにウツギは前を向いて叫んだ。
「俺がここから居なくなったら、アベリアの前に埋めて下さい。そしたら必ずあなたを驚かせて……楠さんを笑顔にさせますから、ねっ?」
最後に振り向いた顔は白潤の色に塗れた大人びたウツギの姿であった。――楠はその瞬間が忘れられなかった。
ウツギは突進に左半身がない状態で片手でよじ登り、右大腿でネイチャーブレインの集合体を動かし搔きまわした。ぐらぐらと傾く骸に耐え続け、ウツギは必死になってネイチャーブレインをこの世から消去させようと試みる。――楠が涙を零して叫んだ。
「やめろっ……やめて、くれ……。俺の、前から……居なくなるな」
ウツギがふと笑って「大好きですよ」そう告げた。
柳瀬の身体がバラバラになり禍々しい光が溢れんばかりに零れ落ちては収束していった。なにがなんだがわからない楠は瞳を閉じてうっすらと目を開けていく。
そこには禍々しい塊と、美しく輝く青と白潤のコントラストをした球体がころんと転がっていた。
――楠が声にならない悲鳴を上げた。
「ウツギ……ウツギ……ウツギっっっ……!」
青と白い球体を抱き締めた先にはアベリアの木が爛々と輝いていた。
『ぐぅっ!??』
だが瞳は修復していき、巨大な右手がウツギを握り潰しそうとする。――ウツギはひらりと空中で翻し、骸の身体に捕まった。瞳は濃紺に染まる。
『ちょこまかと動きやがって!』
「動かせてもらうよ。……俺はみんなを守りたいから」
決死な覚悟で今度は地面へと移動をするウツギを巨大な左手が襲い掛かる。ウツギは宙に舞って柱に飛び降りた。皆は騒然とした。
「す、すげぇ……」
「あれが、本来の……うーちゃん」
黒鉄や目木が目を見張り、百日紅も当惑しているなかで楠だけは違った。楠は巨大な骸骨に立ち向かい、隙間な空間へと侵入したのだ。
「先生、なにやって――」
「俺たちもウツギの戦闘に参加するぞ! 植物探偵団の力を見せつけろ!」
それだけを言って隙間へ入っていく様子の楠に三人は呆然したかと思えば、ふと笑う。
「そうだよね。俺たち植物探偵団だもん」
「うーちゃんの力になりたいもんな」
「姫が戦うのなら俺も戦う!」
三人は拳を掲げたかと思えば各々の武器を掲げた。目木はシャンプー入り水鉄砲を。黒鉄は胡椒入り爆弾を。……そして百日紅はドクダミスプレーであった。
「よし、これで向かうぞ」
目木の合図に三人も臨戦態勢に入ったところでようやく刑事たちが来た。なにがどうなっているのだと困惑している様子の彼らに「拳銃でも良いからとりあえず、あの怪物を撃ち殺せ!」目木が命令をすると刑事の指南のもと、皆が一斉に拳銃を構えて射撃の用意をした。もちろん目木たちもだ。
普通は特例が出ない限り拳銃など出せないのだが、今回ばかりは相手が怪物であるがゆえに咄嗟の判断をしたらしい。
拳銃が撃ち込まれ上体を崩す柳瀬は地鳴らしのように右手と左手を同時に拳で打ち込んだ。するとまるで地震が起こったかのように地面が揺れ動く。
「逃げろーーー!!!」
退避を余儀なくされる警察たちや目木であったが、地面に潜んでいる楠と天井に這いつくばっているウツギは逃げずに身構えた。
地面に潜っている楠であったが、柳瀬の腰大腿になにやら禍々しく輝くなにかを見つけ、動かしてみる。
すると地面が大きく揺れた。揺さぶってみると激しく揺れるのだ。
『腰が……、腰がぁっっ!???』
すると地面から柳瀬の隠れた脚がずるりと這い上がり、腰大腿を露呈させる。
ウツギは目を見張った。そこにはネイチャーブレインの核が詰まっており、そこに楠がぶら下がっていたのだから。
「楠さん!!!」
ウツギは天井から伝って地面に降り立ち、楠の元へ駆け寄る。危険に犯されている楠を助けるがあまり必死であった。――柳瀬の右手がウツギの左半身を切り裂いた。
「――ウツギ!!!」
左半身が地面へと崩れ落ち、ひとつの植物となって花が咲く。……アベリアだ。アベリアが必死な形相で可憐で美しく咲いていた。
ウツギは白い瞳で一瞥しにやりと微笑んでは、柳瀬に対抗するように目を見張る。
柳瀬の禍々しい瞳がぎょろりと動いた。
『私を殺せばお前も死ぬ。お前自身が死ぬんだぞ?』
「それでも構わない」
ウツギは柳瀬の腰大腿に視線を向けてなぞるように視線を鋭くさせる。そして拳を握る。――この世に未練などない。そんなことを想い馳せているかのようであった。 地面へと落下した楠をアベリアが守るように、庇うように楠の身体を保護する。ジャスミンのような淡く甘い香りに誘われて、楠は一時は気を失ったものの、その甘い香りで目が覚める。
ウツギと出会って楽しかったことや大変だったこと、苦労したことを思い出した
が、一番は楽しかった思い出であった。
ウツギと出会って自分の笑顔が増えた。日々がこんなにも輝きに満ち溢れていた。最低な自分を愛して『大好きだ』そう言ってくれた。
そんなウツギがこの世から消える。
――そんなの嫌だ!!!
「ウツギ!!! 俺と一緒に戻ろう、帰ろう。一緒にココアでも飲んで、まったりしよう!」
ウツギ振り返らない。ただ前を向いているだけだ。
「俺は、ウツギが居なくなったら絶対に後悔する! お前が戻ってきてくれるのなら、俺はなんだってする! だから戻ってこい!」
ウツギは振り返らない。
「お前が死んだら俺も死んでやる! だから戻って……戻って……来いよ!」
悲痛な楠の叫びにウツギは前を向いて叫んだ。
「俺がここから居なくなったら、アベリアの前に埋めて下さい。そしたら必ずあなたを驚かせて……楠さんを笑顔にさせますから、ねっ?」
最後に振り向いた顔は白潤の色に塗れた大人びたウツギの姿であった。――楠はその瞬間が忘れられなかった。
ウツギは突進に左半身がない状態で片手でよじ登り、右大腿でネイチャーブレインの集合体を動かし搔きまわした。ぐらぐらと傾く骸に耐え続け、ウツギは必死になってネイチャーブレインをこの世から消去させようと試みる。――楠が涙を零して叫んだ。
「やめろっ……やめて、くれ……。俺の、前から……居なくなるな」
ウツギがふと笑って「大好きですよ」そう告げた。
柳瀬の身体がバラバラになり禍々しい光が溢れんばかりに零れ落ちては収束していった。なにがなんだがわからない楠は瞳を閉じてうっすらと目を開けていく。
そこには禍々しい塊と、美しく輝く青と白潤のコントラストをした球体がころんと転がっていた。
――楠が声にならない悲鳴を上げた。
「ウツギ……ウツギ……ウツギっっっ……!」
青と白い球体を抱き締めた先にはアベリアの木が爛々と輝いていた。
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