上 下
21 / 35

*《衝動》

しおりを挟む
 鬼の形相をしている楠にウツギは意味不明な顔をした。自分が楠を怒らせるような行為はしていないはずだ。
 ただ、自分がした行為に関しては間違っていないと思う。
 ネイチャードールと呼称されているが、自分はネイチャーブレインと呼ばれる存在に近しいと思い、それを信じてもらいたくて疑い深い仲間に信用されるために行動に起こそうとした――ただそれだけだ。
 楠が怒る動機は一切ない。ただ、目の前に居る男は激昂を隠しているが震えていた。
「てめぇ、自分をなんだと思ってんだ。自分の存在を知りたかったら自分の身の”危険”でさえも置くつもりなのかよ」
 どういう意味かわからない。危険とは一体どういう意味だろう。逆にこの状況の方が危険と呼んだ方がふさわしいとさえ感じた。
「楠さんの方が怖いですよ。でもなにに怒っているんですか? 俺は自分がどういう存在なのか知りたいだけなんです」
「……じゃあ聞いてやるよ。――お前は好き嫌い構わずに、尻尾を振る”あばずれ”になったのかって聞いてんだよ」
 あばずれ発言にはウツギも目を見開いた。普段の大雑把だが温和な楠らしくない発言が見られたからだ。瞳も幾分鋭く、フレーム眼鏡から降り注ぐ視線はまるで氷のように冷徹だ。
 厳しい視線に耐えられなくなったウツギは視線を逸らそうと試みるが、無理やり顔を向けさせられてじっと見下ろされる。――楠が冷酷に微笑んだ。
「俺が危険っていう感情を教えなかったがゆえにお前は過ちを犯しかけたな。……責任取ってやるよ」
「え……?」
 すると楠は半開きになっているウツギの唇を食すような獣のような荒いキスをした。驚いて仰け反り、逃走を図るとするウツギを逃がさぬように両手を片手でいとも簡単に拘束させてしまう。そして両脚の間に脚を入れて身動きを取れなくした。
 しかも空いた手でウツギ自身を撫で上げたかと思えば、やんわりと掴み上げたのだ。……男ならば肝など冷えてしまうほどの恐怖にウツギは堕とされているウツギだが、痛みなど無縁に近いので首を傾げている。
 しかし、逆に楠の方がひどく悲しげな表情をするのに心を痛めてしまうのだ。
「どうして、そんなに……悲しそうなんですか。俺、そんなに、楠さんを困らせましたか?」
 楠は答えない。ただじっと見据えたかと思えば、今度はやんわりと触れて扱いていく。――快楽に関してはウツギには絶大な効果を与えた。
「うぅっ……! あ、の……んぁっ、なんで、そんなに泣きそうな、かお……するんですか!!」
「……さぁな」
「教えてください! 俺は、あなたが大好きなのに――」
「大好きだったら俺の傍から離れるなよ!!!」
 荒げた怒鳴り声からは予想だにしていない言葉が飛び出した。普段、基本はウツギがぴったりとくっついているし、しかも楠は迷惑がっていそうな感じがしたので意外だったのだ。
 ただどうしてそのような言葉が飛び出したのかを、ネイチャードールだからなのか、鈍感で天然なウツギにはわからない。
 どうしてなどというような表情を浮かべるウツギに、楠は耳元で盛大なため息を吐いた。……いやらしげで耳がくすぐったくて、でも熱を浴びさせられたような感覚を得た。
「お前が目木に取られるかと思ったんだよ。……あ~、こんなことなら父親演じる前に手でも出して、俺の印をつけるべきだった」
 そう言って耳介をがぶりと噛みつき、さらには首筋にかぶりつく積極的な楠にウツギの右目がドクドクと脈を打つ。
 シャツをたくし上げられて淡いつぼみを噛まれた瞬間――電撃が走ったように腰が砕けた。
「あぅっ……、くすのき、さん……」
「俺はお前の父親になりたいけどなれねぇ。お前と行為をするたびに、汚くて卑しい男になっちまう」
 べろりと舐められて甲高い声を上げるウツギに、楠は拘束している両手を解いたかと思えば体重をかけた後、ポケットに入っているハンドクリームを手に取った。
 だがまだ出さない。――ウツギのジーパンを脱がし、下着に手を掛けるまでジャスミンの香る白濁してとろみのある液を出さない。
 ウツギは楠に見下ろされるまま、責められるまま右目にドクドクと鼓動を感じた。
 ――楠が手のひらに取り出した。
「俺のものだって印になるように、俺の所有物で、俺以外じゃ嫌だって言うくらい、拒絶するぐらい――お前を徹底的にドロドロにして、啼かせる」
 言った瞬間、楠は小ぶりなウツギの尻の窪みにハンドクリームを塗布し、指を侵入させて掻き混ぜた。卑猥で甘美な音と、指からの刺激で悶えたウツギは「くすのき、さん……!」楠の身体に腕を回し、応えて欲しいようにキスを強請る。
 楠は食むようなキスを、獰猛で濃厚なキスを送り指の動きを激しくさせた。
「あぅぅっ……あぅ……ふぃ、うぅ――――っぅ!」
「はぁ……結構、解れたな。――もう容赦しねぇ。お前は、俺のものだからな」
 楠は一旦、数本の指を引き抜いて自身のチノパンに手を伸ばしチャックをジジ……と下げて、一気に脱ぎだした。
 下着越しでもわかるほど怒張した狂暴な楠自身に、ウツギは怖さと共にどうなってしまうのだろうという自分が想像できなくて逆に興奮を覚える。
 下着から取り出された楠は獰猛で乱暴な自分自身を――か弱いウツギに充てがい、一気に貫くのだ。
「うぅっ!??」
 痛さはないが口から液体が出てしまいそうなほどの異物感と質量に苛まれ、呑み込み唇を噛みしめるウツギに楠は悪戯に微笑んでキスをした。
「これが痛いっていうんだ。覚えておけよ、馬鹿ウツギ」
「あ、かは……、バカじゃ、ない……」
「大丈夫だ、今からゆっくり楽しんでお前を食ってやるよ。――なぁ、ウツギ?」
 ――右目がズクリとして、バクバクしてきた。こうやって責められるとどうしてだが胸が無いのに胸が熱く感じる。
 ウツギは自身が捕食されていく様子を今まさに見ている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺

高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...