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棘先の炎
自身の誓いを茨に誓う 3話
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真剣な表情で見つめるクイラに臆す様子を見せない薔薇姫は、紅茶を一口飲んだ。
「あなたにとっては、私が彼らを駒として見ている…と言っていますが。そんな事はありませんよ?ーただ、人選をしているだけです。」
「人選?」
薔薇姫の言葉に首を傾げるクイラに彼女は言い放つ。
「ええ。特に幹部に関してはそうですかね?ー"茨"へ加入した皆の事情は様々ですが、私と同じような考えを持つ者達を中心に、彼らの力量や知性を見た上で選んでいるんですよ?…この世の中に恨みを持っている人達をね?」
そして優雅に微笑む薔薇姫にクイラは疑問を見せる。
「つまり…。あんたは、志が同じ同志を引き入れて"茨"という組織を作った…って事?何の為に?」
すると薔薇姫は上品に言葉を紡いだ。
「この世を変えたいんですよ。…私達の組織で作られた平和な世界を作る為に。」
薔薇姫の心の炎が大きく燃え盛る。そんな状況に陥るクイラはではあったが…彼女は薔薇姫はそれだけの理由で"茨"を創設させた訳ではないと見抜いていた。
「違う!!!あんたは建前を言っている!!!…別にあんたはそんな世界を作りたい訳じゃ無いはずだ!…あんたはもっと身勝手な理由で組織である"茨"を作ったんだ!…私を騙せると思うな!」
燃え盛る炎の中でクイラは負けじと言い放つ。そんな彼女に薔薇姫は更に炎を燃やした。…だが、片目である碧眼の瞳は酷く冷たかった。
「騙す?…何の事でしょう?ー私は本心を言ったつもりですが。」
冷酷な瞳に声調と垣間見えた本心に宿る焼けるような炎の狭間にクイラは堕とさせる。そして必死に自身を取り戻そうと深く息をした。そんな彼女の様子を見て、心を落ち着かせた薔薇姫は普段の様子と変わらずに笑みを浮かべる。
「まあ。あなたの考えはあながち間違っては無いですね。…でも、良いでしょう?ーお兄さんの情報が手に入るのは?」
玩具を取り上げられた子供のような表情を見せるクイラに笑い掛けた薔薇姫。そんな2人ではあったものの、薔薇姫はスマホを取り出し誰かと話し、そして終える。すると数分経った所でスネークが声を上げる。
「薔薇姫様!ご所望している物を持って来させました!」
すると薔薇姫はリモコンを操作させて大きな扉を開け放った。深々と彼女に礼をするスネークの右脇には洋服のような物が見える。疑問を浮かべるクイラに対し、スネークは彼女の前で服を見せ付ける。…それは、特待生枠でなおかつ"茨"の組織の一員である事を象徴させる模様の入った白いポンチョ。クイラの目の前で掲げたスネークに対し、薔薇姫は優雅に言い放つ。
「さあ?どうしますか?…このまま1人でお兄さんの行方をがむしゃらに探すか?…私達と行動を共にしてお兄さんの情報を手に入れるか?ー後者の方が美味しい話だとは思いません?」
薔薇姫の冷酷な微笑みにクイラは苦々しく笑い…そして、言い放った。
「だったらヤケだ!…入ってやるよ。でも、これだけは忘れるな。ー私はお前に誓った訳じゃない。"茨"に誓いを立てたんだ!…その言葉を忘れんなよ?」
薔薇姫の前で暴言を吐くクイラの不躾な態度に驚くスネークと可笑しげに笑う彼女が居たのであった。
スネークの部下達と共に望月組と院長の帷の手下を連行させたラビットではあったが…。今は、シャークによってバードが待つ保健室へと連れてかれた。
「まーた薬打たれんの?俺~?…俺、ヤク中じゃないっすか~?」
溜息を吐くラビットにシャークは笑いながら彼の背中を強く叩く。
「まあまあ!薬でコントロール出来るんだから良いじゃねぇか!…ちゃんとお前の意見も尊重している訳だし!…なあ?バード?」
無駄に筋肉を見せ付けながら喋るシャークに溜息を吐くバードではあるが、彼の意見は自身と同様である。
「そうだぞ?…最近になって薬のコントロールが順調にいっているんだからな?…お前もいつかお前の中で眠っているフライの事を考えて行動が出来ると、お兄さん達は信じているからな~?」
「そうだぜ!…全くもってその通りだ!」
そして再び背中を強く叩くシャークにラビットは痛がる様子を見せる。だが、彼はふとこのような言葉を紡いだのだ。
「俺の主人格は…今の俺を見たらどう思うのかな?ー勝手に周囲に疎まれてこうなっているのは俺のせいだって知ったら…あいつは俺を見捨てるかもな…?」
哀しげに笑うラビットの姿に2人は見合わせた後、彼らは保健室のソファへラビットを座らせた。そしてバードは戸惑うラビットに語り掛ける。
「いいか?…シャークは言っただろ?『お前の意見も尊重して』だとさ。…二重人格が顕著なだけで、お前はフライの一部なんだよ。…だから、お前自身も見てやれ。胸を張れ。ー俺達はお前らが、フライ自身がお前を認める事を応援してるからな!」
そして明るい笑みを浮かべるバードにラビットも呆気に取られた後、自身も負けじと笑った。
「あーあ!なーんか、やっぱり疲れたわ!…俺は早く眠りたいから、さっさと打って下さいよ?」
そして右腕を差し出すラビットの行動にバードは強く頷き、注射を打つ。打たれた後に体をソファに預けるラビット…いや、フライへと変わりかける中でシャークは深い笑みをした。
「本当にさ…。成長したよな~?ラビットの奴。ーまっ!勝手な行動は取るけどな。」
フライの頭を摩るシャークではあるが、彼は危惧している。…フライ自身がラビットという存在を本当に認めるかどうかについて。ーまだフライに話したとしても、彼はラビットという自身の凶暴な性格を受け入れられない可能性があるからだ。少し考え込むシャークの真剣な表情に、バードは彼を察した。
「いつか認める時が来るさ。…フライが自分自身を。そして、ラビットの事を認める時がさ。」
そう言ってからキセルを口に含ませてバードは煙を燻らせるのであった。
「あなたにとっては、私が彼らを駒として見ている…と言っていますが。そんな事はありませんよ?ーただ、人選をしているだけです。」
「人選?」
薔薇姫の言葉に首を傾げるクイラに彼女は言い放つ。
「ええ。特に幹部に関してはそうですかね?ー"茨"へ加入した皆の事情は様々ですが、私と同じような考えを持つ者達を中心に、彼らの力量や知性を見た上で選んでいるんですよ?…この世の中に恨みを持っている人達をね?」
そして優雅に微笑む薔薇姫にクイラは疑問を見せる。
「つまり…。あんたは、志が同じ同志を引き入れて"茨"という組織を作った…って事?何の為に?」
すると薔薇姫は上品に言葉を紡いだ。
「この世を変えたいんですよ。…私達の組織で作られた平和な世界を作る為に。」
薔薇姫の心の炎が大きく燃え盛る。そんな状況に陥るクイラはではあったが…彼女は薔薇姫はそれだけの理由で"茨"を創設させた訳ではないと見抜いていた。
「違う!!!あんたは建前を言っている!!!…別にあんたはそんな世界を作りたい訳じゃ無いはずだ!…あんたはもっと身勝手な理由で組織である"茨"を作ったんだ!…私を騙せると思うな!」
燃え盛る炎の中でクイラは負けじと言い放つ。そんな彼女に薔薇姫は更に炎を燃やした。…だが、片目である碧眼の瞳は酷く冷たかった。
「騙す?…何の事でしょう?ー私は本心を言ったつもりですが。」
冷酷な瞳に声調と垣間見えた本心に宿る焼けるような炎の狭間にクイラは堕とさせる。そして必死に自身を取り戻そうと深く息をした。そんな彼女の様子を見て、心を落ち着かせた薔薇姫は普段の様子と変わらずに笑みを浮かべる。
「まあ。あなたの考えはあながち間違っては無いですね。…でも、良いでしょう?ーお兄さんの情報が手に入るのは?」
玩具を取り上げられた子供のような表情を見せるクイラに笑い掛けた薔薇姫。そんな2人ではあったものの、薔薇姫はスマホを取り出し誰かと話し、そして終える。すると数分経った所でスネークが声を上げる。
「薔薇姫様!ご所望している物を持って来させました!」
すると薔薇姫はリモコンを操作させて大きな扉を開け放った。深々と彼女に礼をするスネークの右脇には洋服のような物が見える。疑問を浮かべるクイラに対し、スネークは彼女の前で服を見せ付ける。…それは、特待生枠でなおかつ"茨"の組織の一員である事を象徴させる模様の入った白いポンチョ。クイラの目の前で掲げたスネークに対し、薔薇姫は優雅に言い放つ。
「さあ?どうしますか?…このまま1人でお兄さんの行方をがむしゃらに探すか?…私達と行動を共にしてお兄さんの情報を手に入れるか?ー後者の方が美味しい話だとは思いません?」
薔薇姫の冷酷な微笑みにクイラは苦々しく笑い…そして、言い放った。
「だったらヤケだ!…入ってやるよ。でも、これだけは忘れるな。ー私はお前に誓った訳じゃない。"茨"に誓いを立てたんだ!…その言葉を忘れんなよ?」
薔薇姫の前で暴言を吐くクイラの不躾な態度に驚くスネークと可笑しげに笑う彼女が居たのであった。
スネークの部下達と共に望月組と院長の帷の手下を連行させたラビットではあったが…。今は、シャークによってバードが待つ保健室へと連れてかれた。
「まーた薬打たれんの?俺~?…俺、ヤク中じゃないっすか~?」
溜息を吐くラビットにシャークは笑いながら彼の背中を強く叩く。
「まあまあ!薬でコントロール出来るんだから良いじゃねぇか!…ちゃんとお前の意見も尊重している訳だし!…なあ?バード?」
無駄に筋肉を見せ付けながら喋るシャークに溜息を吐くバードではあるが、彼の意見は自身と同様である。
「そうだぞ?…最近になって薬のコントロールが順調にいっているんだからな?…お前もいつかお前の中で眠っているフライの事を考えて行動が出来ると、お兄さん達は信じているからな~?」
「そうだぜ!…全くもってその通りだ!」
そして再び背中を強く叩くシャークにラビットは痛がる様子を見せる。だが、彼はふとこのような言葉を紡いだのだ。
「俺の主人格は…今の俺を見たらどう思うのかな?ー勝手に周囲に疎まれてこうなっているのは俺のせいだって知ったら…あいつは俺を見捨てるかもな…?」
哀しげに笑うラビットの姿に2人は見合わせた後、彼らは保健室のソファへラビットを座らせた。そしてバードは戸惑うラビットに語り掛ける。
「いいか?…シャークは言っただろ?『お前の意見も尊重して』だとさ。…二重人格が顕著なだけで、お前はフライの一部なんだよ。…だから、お前自身も見てやれ。胸を張れ。ー俺達はお前らが、フライ自身がお前を認める事を応援してるからな!」
そして明るい笑みを浮かべるバードにラビットも呆気に取られた後、自身も負けじと笑った。
「あーあ!なーんか、やっぱり疲れたわ!…俺は早く眠りたいから、さっさと打って下さいよ?」
そして右腕を差し出すラビットの行動にバードは強く頷き、注射を打つ。打たれた後に体をソファに預けるラビット…いや、フライへと変わりかける中でシャークは深い笑みをした。
「本当にさ…。成長したよな~?ラビットの奴。ーまっ!勝手な行動は取るけどな。」
フライの頭を摩るシャークではあるが、彼は危惧している。…フライ自身がラビットという存在を本当に認めるかどうかについて。ーまだフライに話したとしても、彼はラビットという自身の凶暴な性格を受け入れられない可能性があるからだ。少し考え込むシャークの真剣な表情に、バードは彼を察した。
「いつか認める時が来るさ。…フライが自分自身を。そして、ラビットの事を認める時がさ。」
そう言ってからキセルを口に含ませてバードは煙を燻らせるのであった。
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