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棘先の炎

神に背く者神に喰われる 1話

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クイラは先にスネークから呼び出しを受け、指定の場所で待っていた。すると、彼は学生服である白いポンチョを羽織ったまま、彼女の元へ駆け寄った。
「悪いな。早めに来てもらって…。ー少しお前にも協力して欲しくてな。」
「協力?」
訝しげな表情を見せるクイラにスネークはとある策を言い放つ。…それは、クイラでさえも意外な策であった。

ポンチョを羽織り指定の場所へ行くと、クイラとスネークが待っている。そこへ訪れたのは…フライであった。ちなみにだが、スネークの部下は後ほど合流するそうだ。不安を抱えたままスネークの手招きで歩き出す彼にクイラは先ほどのスネークの考えを思い出す。
『いいか?薔薇姫様が言うには奴らの狙いは俺達でもある。…でもな、奴らもラビットの事に勘付いているらしくてな…。でも、今回の件はなるべくは俺達で済ませたい。』
するとクイラはこのような返答をする。
『別に大丈夫ですけど…。フライってラビットよりも強いんですか?私はあまりあいつが強いとは思えないんですけど…。』
彼の心配をするクイラにスネークは笑みを浮かべる。
『ラビット程では無いが…。フライだって武道の嗜みは受けてるぜ?…まあ、もしも最悪の事があれば、これを使う。』
そしてスネークは注射器とアンプルを取り出して彼女に見せつける。彼が言うには、フライがラビットと変わる為の薬のようだ。用意周到な彼の姿を見てクイラは苦笑をしたのであった。

とある孤児院へと辿り着く3人にスネークはスマホで連絡を取り、部下達へ「合図があるまで待機してろ。」そう言って彼らを隠れさせる。そして、スネークは扉を開けた後、花壇に水をやる男性を見掛けた。そして彼らの服装を見て男は尋ねる。
「おや?…もしかして、聖薔薇十字学院の子達ですか?」
疲れた表情を見せる男性にスネークは営業スマイルをかまし出して言う。
「ええ。そうなんですよ~。…実は薔薇姫様から僕達宛に手紙のご招待が届けられたのでね?」
すると男性は持っていたじょうろを落とした。見るからに慌てている姿にクイラは少し笑いそうになるのを堪える。そんな彼らに男性はぎこちない笑みを浮かべて自己紹介をしだす。
「これはまた…!赴いて頂きありがとうございます。ー私、この孤児院の院長の帷 修治(とばり しゅうじ)と申します。ーここまで来てお疲れでしょう?お茶でもいかがですか?」
そう言ってぎこちない素振りを見せる帷にクイラは彼の心の動きを読む。
(こいつ…。多分、毒でも盛って私達に何かさせようとしてる。)
そして怖い顔をするクイラを見て院長の帷は更に顔を歪める。すると、そんな彼にとある小さな少年が彼に話し掛けた。
「帷先生?…誰?そこの人達…?」
明るい青髪を背中まで伸ばし、マフラーを付けている少年が彼に話し掛ける。そんな彼に院長は突然大声を上げた。
「ノイズ!!!お前はまだ安静にしてろと言ってるだろ!…ここに出てくるんじゃ無い!」
怒気を孕ませる帷の声に気にしない様子である、"ノイズ"と呼ばれた少年は欠伸をしてその場を立ち去る。すると、帷は先程とは打って変わり、3人に笑みを浮かべた。
「先程は失礼しました…。あの子は少しばかり厄介な子でしてね…。ああ…そうだ。客室へとご案内しますから。」
そして3人を孤児院に招き入れるのであった。

客室へと案内された3人は小声で作戦会議をする。
「良いか?取り敢えず、院長を薔薇姫様の元へ連れて行けばそれで終わりだ。ーなるべくは穏便に済ませたい。あと、紅茶とか出されても絶対に飲むなよ?…毒とか入ってるかも知れないからな?」
スネークの言葉掛けに2人は頷き用心をした。

「おい!言ってる事と違うじゃないか!俺はラビットを検体に使いたいって言ったのに…。出て来たのはサングラスを掛けた奇妙なガキと女に緑髪の男じゃないか!」
そう言って帷はスーツ姿の男性に問い詰める。…しかし、問い詰められた彼はにこやかに微笑んだ後、このような言葉を発した。
「大丈夫ですよ。…俺の言う通りにすれば上手くいくはずです。ーそれとも何か?"望月組"がヘマをするとでも?」
そして彼は恐怖を抱かせるような笑みを帷に向ける。そんな彼にたじろぐ帷に彼は呟いた。
「ここで再開するとはね~。麗良(れいら)。でも、それでもお兄ちゃんはお前の敵に回るよ。…例えそれがお前を殺すというのでも。」
そしてニヒルな笑みを浮かべるのはクイラの兄である麗斗(れいと)であった。
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