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僕の生きている意味。

気にしてなんてない。【1】

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マナが働いている施設に新しい獣人がやってきた!

「ハイエナのルゥーダだよー!!!よろしくねん!」

飼育員に招かれて現れた美しい茶髪の青年こと名はルゥーダ。端正な顔立ちや美しい肉体的な身体つきに高値の札が付いたそうなので愛玩動物の見習いとしてこの施設へやってきたのだ。周囲の者は彼に拍手を浴びせて部屋へと案内しようとするが…問題が生じてしまった。

「すみません!この前のうさぎの獣人が同種のメスに子供を孕ませてしまって…。今その子、お産してて…。」

とんでもない言葉を言い放つ職員に主任のリアラが指示を出す。

「そしたらその子のお産を見守ってあげて。職員が居た方が安心でしょう?…マナ君。君はルゥーダ君をアリッスト君の部屋まで案内してあげて。」

「えっ!?なんでアリッストさんの部屋に案内するんですか…?」

問い掛けるマナにリアラはこのように答える。

「この子をアリッスト君並みの美麗だよ?当然それ相当のお客様に買われるはずだろうからね~?…大きい部屋を用意させたいけど今は人手不足だからアリッスト君に事情を伝えて少しの間だけ居座らせてあげてくれない?」

「そ…そんなぁ…。」

ご丁寧な上司の命令にマナが内心悔やみつつも返事をしてみせればその顔をルゥーダに見られる。すると彼はマナの顔を少し見てから何かを考える素振りをして彼に問い掛けるのだ。

「ねぇ?メガネの飼育員?…アリッストさんってさ~俺と同じくらいカッコよくて綺麗な顔してんでしょ?」

「メガネって…。まあそうですね。カッコよくて綺麗な顔つきのわりには体格も良いですよ。…それが何か?」

「そう!ありがとね!メガネくん!」

「あはは…。どうも。」

マナの返答にルゥーダは内心でも笑っていた。


アリッストに事情を説明すれば『今度、夕食とデザートを作ってくれれば居座らせてやる』というように命令され苛立ちを覚えるマナである。上司と言い、獣人と言い、また会って間もない獣人にも舐められていることにマナは腹が立っている様子だ。

「なんなんだよ!まったくも~!み~んな僕をコケにしてさ!僕が扱いやすい小動物だからって!!!ひどいよ!」

夕食を作りに調理室を借りてアリッストの部屋に入ろうとすれば、甲高い声が聞こえた。既視感を抱いたマナはおそるおそるドアの隙間から見てみれば…アリッストがルゥーダと性行為をしていたのである。甲高い声を上げてアリッストに迫られているルゥーダはとてもいやらしげでもあり、絵にもなる様であった。

「あっあぁ!!!アリッストさぁん!!!そこ…きもちぃ。」

「……。」

「あぁうっ!オクがいいのにぃっ!じれったいのぉ~!」

「…っは。」

よがって誘うルゥーダにアリッストは腰を振って応戦をする様子にマナがドキドキしてしまう。…しかしそれと同時に心の中で何かが渦巻くような…大きな波が押し寄せてくる感じがした。行為中のルゥーダと目が合ってしまったような気がして、マナはドアの外に夕食を置いてから逃げるように去ったのだ。


気が付いたら事務所のソファーで涙を流していた。なぜ泣いてるのかが検討が付かないマナではあるがうさぎのお産に自分も立ち会わないといけないとは分かりつつ、動けない自分が居た。もしかしたら裏切られたと思ってしまったのかもしれない。飼育員と獣人との関係ではあるが絆のようなものが出来ていて、アリッストはもう自分のことで考えられなくなっている…というような妄想を抱いていたのかもしれない。
…でも彼は、ただ単に自分の性欲が発散できていれば誰でも良いというような獣人であったのだ。
期待を裏切られたかのような感覚にマナは陥り自身の愚かさを嘆く。

(なに僕、勝手に期待してたんだろ…?あの人はあんなんだって分かっていたじゃないか…。僕が勝手に、あの人と…アリッストさんと仲良くできる人は僕しかいないって思ったのがいけないのに。…結局は違ったんだ。)

思うたびに涙がどんどん溢れて止まらなくなる自身を止めようと深く深呼吸をする。涙を塞き止めようとソファーから立ち上がり水を飲もうとしたその時であった。

「おい、クズ。夕飯作ったんなら俺に言って…」

事務所に入ってきたアリッストが目にしたのは眼鏡を外し涙を零す悲嘆だがどこか憂いを漂わせるような青年…マナの姿であった。驚く両者ではあったがマナは涙を拭いてからぎこちない笑みを浮かべる。

「あ…あぁ。アリッストさん。ごめんなさい。今度から気を付けますから。」

「…お前、なんで泣いてんだ?」

疑問を露わにするアリッストにマナは素直に答えようとしてやめる。自分たちは飼育員と獣人という関係だ。もうこれ以上踏み込まれて自分の感情を揺らがせたくなかった。

「ちょっと嫌なことがあっただけですから気にしないで下さい。すみません、今から用事があるので僕はこれで」

「待て。」

-ズガンッッ!!!!

大きな音を立ててソファーへと押し倒され両手を拘束されるマナは痛みで再び涙を零そうとした。そんな彼にアリッストは顔を近づけて問い掛ける。

「誰を想って泣いてんだ?…お前は俺の雑用やってんだ。少しのことでそんな顔しないだろ?…誰のことを考えてる?」

美しくもキリッとした顔つきの男に迫られるがマナは両腕の痛みでちゃんと見れていない。痛みで言い出しそうになるもののマナは言わずに抗議をする。

「は…離してください!…痛い!」

「嫌だ。お前が誰を想って泣いたのかを知れるまで離さない。」

涙を大きな舌で舐め取られ興奮してしまう自分と泣き出したくなる自分とのせめぎ合いにマナは犯される。両手も痛みが無くなるほど血の巡りが悪くなってきたようだがそれでもマナは断固として理由を言わなかった。

「お~い。マナ!赤ちゃんが産まれたからお前も一緒にっ!??」

現れた飼育員の先輩のサリーが拘束されて動けないマナと拘束してるアリッストを見て驚愕する。舌打ちをしてその場を離れて立ち去るアリッストを叱る前に彼に暴行をされていたマナの心配を先にする。

「大丈夫かっ!?マナ!!!…うわぁ…ひでぇな。うっ血してる…。」

他の職員も現れマナの心配をする周囲ではあったが当の本人は呆然とただ見ていただけであった。


「ッチ。…あのメガネが邪魔だな。…まぁいいや。アリッストさんは俺のもんだもんね。」

一連の騒動を見ていたルゥーダが陰で笑みを見せるのであった。
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