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第11話 トランスシス兄妹【終】

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 …よし。これならば、あの”魔王ソエゴン”からお嬢様を奪還させることが出来るはずだ。
「ランジア、次の作戦にいくぞ」
「え~…またやるの~?」
 作戦を思いついたハイドはベッドで呑気に寝転んでいる妹のランジアへ声を掛けたのだが…。めんどくさそうな顔をする妹のランジアにハイドは少々怒りを覚えた。妹は幼く設定をされているからか、大人のというものを分かっていない。だがそれでも心の中に根付いている”絆”が邪魔をして、彼女を無慈悲に殴ったり、蹴り上げたりすることも出来ない。だからハイドはその気持ちを抑え、少女に優しげに言い放つのだ。
「やるのじゃないんだ。らなきゃいけないんだ。それがお父様…いや、アーク様の命令なんだから、な?」
「うん…。まぁ…」
 兄の優しい問い掛けにランジアはまだ腑に落ちたような顔はしてはいないものの、協力の姿勢を見せた。そんな兄が大好きな少女ランジアにハイドは微笑んでは次の作戦を話し出す。
「今回はランジアが主体だ。俺はそのをする」
「手助けって?」
 不思議そうな顔をするランジアにハイドは作戦を話すのだ。
「いいか、今回は、あの恐ろしい魔王に変化トランスをするんだ」
「…あのひとを?」
「そうだ。俺はあいつをそそのかすから、ランジアはお嬢様をこの城から奪還させるんだ」
 無茶なことを言い放つハイドにランジアは思考を巡らせてから疑問を提示したのだ。
「…こんな危険な森を、どうやっておじょーさまとくぐり抜けるの?」
 するとハイドはにやりと笑い掛けランジアの頭を撫でた。そして言い聞かせるように、気持ちよさそうに撫でられている少女へ返答をする。
「考えがあるんだ」
「考え?」
「そうさ、だから大丈夫だ。俺がなんとかしてみせるから」
 すると大好きな兄に撫でられて嬉々とした表情を見せたランジアは簡単に兄の手のひらで踊るのだ。
「うん…。わかったよ!」 
 単純な思考の妹に兄はほくそ笑んだ。

 ―プラン② 両者を強制的に引き剥がす。
「あの~、さん。ちょっとよろしいですか?」
「え…あ、はい?」
 これから狩りに出かけようとしたソエゴンに、イケメンオーラだだ漏れのハイドが彼に声を掛けた。普段は侮蔑するような、警戒するような彼が自分に微笑むなんて、ソエゴンでさえも分かる。
 …また僕を殺そうと企んでいるな。…というか、そんなイケメンオーラ出さなくても…。
 圧倒されるオーラにたじたじになるソエゴンは少し深い息をしてから、彼にどうしたのかを問い掛けた。
「えっと…どうしたんですか。僕…狩りに行こうかと思っているから用件なら―」
「わたくしも狩りに連れて行って欲しいんです!」
「えっ…?」
 予想外の言葉にソエゴンが驚くとハイドは笑みを深めてシナリオ通りのセリフでソエゴンへ語るのだ。
「ほら、わたくし達を修理して下さったし養ってくれているではありませんか。わたくし…いえ、俺はあなたに恩返しがしたいのです」
 …敵に対して爪が甘いなとは言えないけど。
「は…はぁ」
「まぁまぁそういうことなので、恩返しがしたいのです。…ダメでしょうか?」
 するとハイドは無自覚なのか自覚があるのかは分からぬが、有無を言わせぬようなイケメンオーラを放ってソエゴンへ尋ねるのだ。するとソエゴンは内心で羨望してしまう。
 …うわぁ~。僕にはぜっったい真似出来ない顔しているよ。羨ましすぎるよ!!
 だがソエゴンはその作られた笑みと悪意のある思惑に気がつかず、ただ茫然ぼうぜんとしてしまう。そんな彼にハイドは少々焦りを覚えた。
 …まずいな。なんでこんなにも考えているんだこいつは。に気付かれたか?
 この言葉から察するにハイドのイケメンスマイルは無自覚であったのが判明したが、それはさておき。終始無言であったソエゴンは考え終えた…というよりオーラにてられていた思考を巡らせて言葉を発したのだ。
「か…狩りって初めて…ですか?」
 …なんで急に敬語で尋ねた?
 なぜかソエゴンが緊張をした面持ちで尋ねてくるのでハイドはツッコミたい気持ちを抑え、柔和かつ正直に答えた。
「いえ…。ですがここまで来る道中にランジアと一緒に潜り抜けたので足手まといにはならないかと」
 …あぁ。足手まといにならないかどうかを心配しているんだな。それなら納得がいく。
 自身の行き付く考えに納得をしているとソエゴンは少し怖い顔をして伺うのだ。
「えっと…じゃあ、妹さんも一緒に?」
 …これも計画通りだ。ランジアが居たらこいつは殺されると分かっているだろうからな。…それも計算済み。
「いえ。ランジアは様子なので休ませています。一応、俺もランジアが不調の時には、自前の銃で戦う訓練を受けているので」
 そしてハイドは自前の銃である黒い小型銃…”ルガーMk4”を模倣しカスタマイズをした銃をソエゴンに見せつけた。そしてソエゴンを納得させる。
 人造人間サイボーグが疲れるなんてあり得ないのだが、そういうことにしておけばソエゴンは一応納得してくれるだろうとハイドは鷹を括ったのだ。しかしソエゴンから出てきた言葉は意外なものであった。
「…良かった。妹さんがをしなくて済みそうだね」
「え…?」
「じゃあハイド…君は僕の援護をしてもらおうかな。…良かったよ。君1人ぐらいなら、魔術もそこまで使用せずに狩りが出来そうだし、君は強いから安心だ」
 相変わらず悪人面だがどこか安堵しているソエゴンにハイドは疑問を抱いた。
 …どうしてランジアを心配したんだ。ランジアも敵なのに…?
「さぁ~て、じゃあ行こうか。ルルもまだ眠っている頃だから早めに行かないとね」
「はい。分かりました」
 …なんだこいつ?
 そんな疑念を抱いては脳内にてハイドはランジアに指示をしたのだ。
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