7 / 18
第7話 秘密兵器【終】
しおりを挟む
ルルの言葉に助けられ、動揺していた気持ちを落ち着けられたソエゴン。だから彼は彼女へ礼を述べた。
「ありがとうルル。ちょっと気持ちが落ち着いたよ…」
「いいえ。まぁ深呼吸でもして落ち着いてから考えましょう。…大丈夫。あなたなら、ソエゴンならこの2人を助けられるわ」
そして微笑むルルにソエゴンは内心では鼓動を跳ねさせ、顔を紅潮させてしまうがそれどころでは無いと自分に言い聞かせ、2人が息を吹き返すのを願って行動をする。
とりあえずは自分と戦闘をしたことにより傷つけてしまった身体を癒せるような魔術を行うことにした。するとソエゴンは倒れている2人に右手をかざし、平行に沿わせるように動きながら術を唱えた。
「かの者達を…癒せ」
するとソエゴンの右手から煌びやかに輝く蝶や鳥、そして女神のような美しい女性が現れ2人を包み込むように傷を癒していく。その女神のような人物の顔に術を見ていたルルが聞こえるように呟いた。
「その女神様。…私にそっくりなのはどうしてかしら?」
「えっ…と、それは…」
「私に似ているのはどうしてなのよ?」
少し期待を込めてルルが話し掛ければ、ソエゴンは先ほどよりももっと顔を赤くしてしまった。するとなんということか。普段であれば高等魔術を3つでも操れるほどの実力者であるにも関わらず、暴走してしまい術の高度が上昇してしまった。
そのおかげでいつもは気にも留めない自分の小さな傷や跡でさえも癒してしまったようだ。しかも力が暴走したので少々疲れてしまった。2人とも服や怪我もだいぶ癒えたのでソエゴンは暴走しつつある魔術を急停止させ、息を荒くさせて言い放つ。
「はぁ…はぁ…。もう~、変なこと聞かないでよ~」
普段は見て見ぬふりをする己の醜い手でさえも、癒しの魔術のおかげで今はすべすべで気持ちは良いのだが…。しかし術を乱されたルルへ注意をしようとすると、彼女はどこか悪戯に微笑んではソエゴンの手に触れて撫でるのだ。
「結果オーライだけど良かったわ…。あなたの傷だらけの手も治せるなんて…やっぱりソエゴンはとっても凄い人ね」
そして笑い掛ける彼女に怒るに怒れないでいるソエゴン。自分の醜い手だったものが綺麗になり、触れて感動をしているルルに思いを馳せた。
…ルルの手もすべすべで、でも小さくて…あったかい。ちょっと疲れちゃったけれど、こうやってまた自分の手を綺麗にさせたら…また触れてくれるのかな?
「どうしたのソエゴン。…また考えごとしてたわね?」
「あっ…えっと…、と、というか、この2人を何とかさせないとね!! あー、忙しい!!」
名残惜しいがルルの手から離れ、見た目は回復させた2人を見つめて触れようとしたその時、再び機械のような音声が聞こえたのだ。
『外傷の損傷は完治しました。…しかし充電不足です』
「充電不足?」
『今すぐ”充電器”を取り変えるか、充電を行ってください』
”充電器”という単語にソエゴンは不審に思ったので、確認をしようと試みる。さすがに少女のランジアは気が引けたので、ハイドと呼ばれた青年の身体検査をしてみることにした。”充電器”という言葉に引っかかったからだ。
「充電器ってなんだろう…。う~ん…服の上からじゃよく分かんないな…」
…別にこの子、男の子だって言うし、失礼だけど…脱がせるか。
するとソエゴンはハイドのネクタイを緩め、ボタンを外し、肌を曝け出させるのだが…やけに冷たい視線を感じて見てみると、ルルがかなり引いた様子で問い掛けたのだ。
「…ソエゴンってそういう趣味あったのね」
「え、なに急に?」
するとルルは今まで見たことが無いほど軽蔑を見せる視線を向けて言った。
「それなら納得がいくわ。…女に興味が無いから男色家に―」
「いや違うからね!?? ”充電器”って意味が分からないし、服の上からじゃ分からないから脱がせただけだからね?」
そう、なら良かった…とそう言ってとても心から安堵しているルルを見てソエゴンも自身の誤解が解けて良かったなと思いつつ、ハイドの身体を観察してみた。
―すると左胸に小さな箱のようなモノが装着されていたのだ。なんだと思い手に触れると…微量だが静電気のような微弱な電流を感じたのである。
…もしかして、これが”充電器”。ということはこの子達って…。
なんとなくだが2人の謎が解けたような表情を見せるソエゴンは、脱がしたハイドの服を着せつつ困惑しているルルへ説明を施す。
「ルルの言った通り、この子達は人間ではないよ。…恐らく精巧に造られて人間を模倣した」
―人造人間さ。
「人造人間? 私、知らないわ。それはどういう人間なの?」
う~ん、と考え込んではハイドの黒いネクタイを締め終えてルルに人造人間のことを話す。
「人造人間っていうのは、人体の一部以外は機械なんだよ。例えば心臓は本物だけどそれ以外は機械…みたいなね。要するに、半分機械で半分は人間って感じかな」
「ふ~ん。つまりそれを…アークが造ったのかしら?」
「恐らくね。…それだけ僕を殺したいんだって思うと悲しいけれど…この2人には罪は無いから」
するとソエゴンは2人同時に起動させる為に寄り添わせくっつかせた。…動かない2人の手を握らせて。
―そして心を込めて術を唱えるのだ。
「空中に浮遊し漂う幾多数多の電子よ、我の言葉に従い…唸れ!」
―――ビリリリリリィィィ!!!
眩い光が輝いたかと思えば、2人の胸元に電流が与えられ…2体同時に覚醒した。
「ありがとうルル。ちょっと気持ちが落ち着いたよ…」
「いいえ。まぁ深呼吸でもして落ち着いてから考えましょう。…大丈夫。あなたなら、ソエゴンならこの2人を助けられるわ」
そして微笑むルルにソエゴンは内心では鼓動を跳ねさせ、顔を紅潮させてしまうがそれどころでは無いと自分に言い聞かせ、2人が息を吹き返すのを願って行動をする。
とりあえずは自分と戦闘をしたことにより傷つけてしまった身体を癒せるような魔術を行うことにした。するとソエゴンは倒れている2人に右手をかざし、平行に沿わせるように動きながら術を唱えた。
「かの者達を…癒せ」
するとソエゴンの右手から煌びやかに輝く蝶や鳥、そして女神のような美しい女性が現れ2人を包み込むように傷を癒していく。その女神のような人物の顔に術を見ていたルルが聞こえるように呟いた。
「その女神様。…私にそっくりなのはどうしてかしら?」
「えっ…と、それは…」
「私に似ているのはどうしてなのよ?」
少し期待を込めてルルが話し掛ければ、ソエゴンは先ほどよりももっと顔を赤くしてしまった。するとなんということか。普段であれば高等魔術を3つでも操れるほどの実力者であるにも関わらず、暴走してしまい術の高度が上昇してしまった。
そのおかげでいつもは気にも留めない自分の小さな傷や跡でさえも癒してしまったようだ。しかも力が暴走したので少々疲れてしまった。2人とも服や怪我もだいぶ癒えたのでソエゴンは暴走しつつある魔術を急停止させ、息を荒くさせて言い放つ。
「はぁ…はぁ…。もう~、変なこと聞かないでよ~」
普段は見て見ぬふりをする己の醜い手でさえも、癒しの魔術のおかげで今はすべすべで気持ちは良いのだが…。しかし術を乱されたルルへ注意をしようとすると、彼女はどこか悪戯に微笑んではソエゴンの手に触れて撫でるのだ。
「結果オーライだけど良かったわ…。あなたの傷だらけの手も治せるなんて…やっぱりソエゴンはとっても凄い人ね」
そして笑い掛ける彼女に怒るに怒れないでいるソエゴン。自分の醜い手だったものが綺麗になり、触れて感動をしているルルに思いを馳せた。
…ルルの手もすべすべで、でも小さくて…あったかい。ちょっと疲れちゃったけれど、こうやってまた自分の手を綺麗にさせたら…また触れてくれるのかな?
「どうしたのソエゴン。…また考えごとしてたわね?」
「あっ…えっと…、と、というか、この2人を何とかさせないとね!! あー、忙しい!!」
名残惜しいがルルの手から離れ、見た目は回復させた2人を見つめて触れようとしたその時、再び機械のような音声が聞こえたのだ。
『外傷の損傷は完治しました。…しかし充電不足です』
「充電不足?」
『今すぐ”充電器”を取り変えるか、充電を行ってください』
”充電器”という単語にソエゴンは不審に思ったので、確認をしようと試みる。さすがに少女のランジアは気が引けたので、ハイドと呼ばれた青年の身体検査をしてみることにした。”充電器”という言葉に引っかかったからだ。
「充電器ってなんだろう…。う~ん…服の上からじゃよく分かんないな…」
…別にこの子、男の子だって言うし、失礼だけど…脱がせるか。
するとソエゴンはハイドのネクタイを緩め、ボタンを外し、肌を曝け出させるのだが…やけに冷たい視線を感じて見てみると、ルルがかなり引いた様子で問い掛けたのだ。
「…ソエゴンってそういう趣味あったのね」
「え、なに急に?」
するとルルは今まで見たことが無いほど軽蔑を見せる視線を向けて言った。
「それなら納得がいくわ。…女に興味が無いから男色家に―」
「いや違うからね!?? ”充電器”って意味が分からないし、服の上からじゃ分からないから脱がせただけだからね?」
そう、なら良かった…とそう言ってとても心から安堵しているルルを見てソエゴンも自身の誤解が解けて良かったなと思いつつ、ハイドの身体を観察してみた。
―すると左胸に小さな箱のようなモノが装着されていたのだ。なんだと思い手に触れると…微量だが静電気のような微弱な電流を感じたのである。
…もしかして、これが”充電器”。ということはこの子達って…。
なんとなくだが2人の謎が解けたような表情を見せるソエゴンは、脱がしたハイドの服を着せつつ困惑しているルルへ説明を施す。
「ルルの言った通り、この子達は人間ではないよ。…恐らく精巧に造られて人間を模倣した」
―人造人間さ。
「人造人間? 私、知らないわ。それはどういう人間なの?」
う~ん、と考え込んではハイドの黒いネクタイを締め終えてルルに人造人間のことを話す。
「人造人間っていうのは、人体の一部以外は機械なんだよ。例えば心臓は本物だけどそれ以外は機械…みたいなね。要するに、半分機械で半分は人間って感じかな」
「ふ~ん。つまりそれを…アークが造ったのかしら?」
「恐らくね。…それだけ僕を殺したいんだって思うと悲しいけれど…この2人には罪は無いから」
するとソエゴンは2人同時に起動させる為に寄り添わせくっつかせた。…動かない2人の手を握らせて。
―そして心を込めて術を唱えるのだ。
「空中に浮遊し漂う幾多数多の電子よ、我の言葉に従い…唸れ!」
―――ビリリリリリィィィ!!!
眩い光が輝いたかと思えば、2人の胸元に電流が与えられ…2体同時に覚醒した。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

完結 愛のない結婚ですが、何も問題ありません旦那様!
音爽(ネソウ)
恋愛
「私と契約しないか」そう言われた幼い貧乏令嬢14歳は頷く他なかった。
愛人を秘匿してきた公爵は世間を欺くための結婚だと言う、白い結婚を望むのならばそれも由と言われた。
「優遇された契約婚になにを躊躇うことがあるでしょう」令嬢は快く承諾したのである。
ところがいざ結婚してみると令嬢は勤勉で朗らかに笑い、たちまち屋敷の者たちを魅了してしまう。
「奥様はとても素晴らしい、誰彼隔てなく優しくして下さる」
従者たちの噂を耳にした公爵は奥方に興味を持ち始め……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる