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”狼”の舞台挨拶

不幸ヤンキー、”狼”を迎え撃つ。【4】

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 哉太が来るのを待っている間、幸とフライはうららのことも気にしつつ幼馴染として紹介された音刃についての話を聞いている。聞いてみると音刃は名前の通り琴ではないがヴァイオリンを稽古で習っているらしく、しかもうららによればプロにも劣らないのではないかとも噂されている様子だ。しかも幸ほどではないが父親が英国人であるので髪色だけが遺伝して金髪にもなってしまったので、よく不良だと言われては喧嘩に巻き込まれそうになるらしい。しかし彼はそれでも金髪を黒く染まるのが嫌だったようで…。

「俺も地毛だけどさ、なんで音刃は髪色変えるのが嫌だったんだよ?…俺と違って、カッコいい顔してんだから黒髪でもいいじゃん?」

「おお?なんだよ~?幸に言われてもなんも出ねぇぞ~?」

「からかってねぇのに…。」

 いつの間にかお互いを名前で呼び合っている幸と音刃にうららは朗らかに笑う。それはフライや燕もそうであった。そんな皆に音刃は決意を込めた気持ちで言い放つ。

「俺は自分の生まれ持って生かされたものを無下にしたくないんだよ。…この髪色のおかげで、まあ、うららに興味持ってもらったし?覚えてないだろうけど。」

「ごめん~。覚えてない。」

「別にいい。…俺さ。この髪色のおかげで場磁石先生に助けてもらったんだぜ?幸とフライは知ってる?」

 少し自慢げな声で話す音刃に幸は首を横に振っている。同じくそれはフライもだ。音刃はコーヒーを一口飲んでから皆に語り掛ける。

「俺が不良に髪色が気に喰わないって理由でボコボコにされてた時にさ~、ちょうど場磁石先生が通って俺を助けてくれたんだぜ!すんげぇカッコ良かった!…でも俺に向けてさ、『君の髪色は綺麗だね~。でもこれからは気を付けなよ?』って笑って帰ったんだ!…ヒーローみたいでカッコよかったなぁ~…。すんごい痺れた!」

「『ヒーローみたい』…かぁ。…俺の時もそうだったよ。音刃と同じだな?」

「へぇ~!幸もそうだったんだ!…そんで先生と知り合ったの?結構仲が良さそうだったけどさ~?連絡先交換してるぐらい仲いいじゃん?羨ましい~!」

 羨望の瞳で見つめられるが音刃と違って幸は助けられた挙句の果てには処女を奪われ童貞卒業も到底無理な可哀想な男子になってしまったことを幸は言わない。いや、言えなかった。…なぜなら音刃は初対面ではあるもののそういう話には疎いような気がしたからである。というか、そうであって欲しい。

「だからさ~?先生が俺たちの学校の先生として紹介された時はすんごい運命感じたんだけどさ~?…先生に聞こうにも授業が終わればすぐに帰るし、捕まんねぇしさ?そんで捕まえて覚えてるかな~って思ったら全然覚えられてなくて…。」

「ふふっっ。じゃあ先生と会えても同じ反応になんじゃないの?」

 うららが久しぶりに笑ってみせれば音刃は少し驚いた顔を見せてから自信ありげに言い放つ。

「い~や!覚えてるね!俺はそう信じ」

「あっ。ばじしゃくさんもう来るね。」

「えっ?マジ?」

 燕が立ち上がり音刃と幸が小さな少年へとついて行き玄関を開ければ哉太が驚いた表情を見せている。そんな哉太ではあるが幸を見た途端に抱きしめていた。

「やっほ~!花ちゃん!待たせてごめんね~!春夏冬さんは元気してる~?」

「いや!その前に!抱き着くな!バカ!バかなたやめろ!!!」

「別にいいじゃ~ん?減るもんじゃないし~?」

「俺の人間として何かが減るわ!バカ!!!」

 そんな攻防をしている間に燕は朗らかに見つめ音刃は声に出して哉太を気付かせる。

「あの!!!場磁石先生!」

「???ん?なに?」

 哉太が音刃へと視線を向けて彼を見れば思い出したように言い放つ。

「あ~!春夏冬さんが通ってる学校の生徒さんか!恥ずかしいなぁ~?こんな姿見られちゃって。」

「恥ずかしいなら俺に抱き着くのやめろ!!!」

 行動と言動が合っていない哉太に苦言をする幸ではあるが音刃はめげない。

「あの!!!俺を助けてくれた時覚えてくれてますか?…不良に絡まれていて!」

 すると哉太は頭を捻ってからにっこりと笑った。

「あ~。ごめんね?俺、そういうことしょっちゅうあるしさ~。」

「っえ?」

「しかも不良とかに絡まれて助ける子を見つけやすくて…覚えてないや。」

 音刃が驚きのあまり声が出ない中で幸は哉太の見事な胸筋に包まれながらとあることを考えていたのであった。
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