上 下
49 / 75
”狼”の舞台挨拶

不幸ヤンキー、”狼”に興味を持つ。【終】

しおりを挟む
それは撫子と躑躅が心の取材を受ける数分前であった。

「やっと取材が出来るな~!!!いや~!楽しみだ!」

はしゃいでいる撫子に躑躅は溜息を吐く。

「撫子ははしゃぎすぎだよ~?…不意に僕の過去とか見られて『あなたは場磁石家から追い出されて…』とか言われたらどうすんの…?哉太にも困ったもんだけどさ。」

「場磁石は彼岸花に説教されてるだろうから良いだろ~!はっはっは!!!会った時の顔が楽しみだ!」

「…撫子も性格が悪いね。まあいいや!なんとかなるか!」

躑躅が少し息込みを見せればノックの音が聞こえた。返事をすると入って来たのはパソコンを片手に持った眼鏡を掛けた男性とツインテールをしたまばらな髪色をした少女…囲戸 心が入って来た。2人は彼らに一礼をしてから自己紹介をする。

「初めまして。わたくしは心のマネージャー兼父親の囲戸 心司(かこいど しんじ)と申します。こちらは娘の心です。」

名刺を撫子と交換すると共に娘の心を紹介する心司だがその瞳は何かを探っているような瞳であった。しかしそれに気づいていない撫子と疎い躑躅は両者ともに握手をしてしまったのだ。…過去が見える心にも。だが気付いてからは遅かった。躑躅の手を握ってから離さない心に心司は諭すような言い方をする。

「こら心。勝手に人の過去を見てはいけないよ。…田中 皐月さんにもプライベートがあるのだから?ね?」

「…はい、お父さん。ごめんなさい。」

人形のような謝り方をする心は躑躅の手を離してから席へと座る。すると心司は撫子と躑躅に謝罪をした。

「申し訳ありません。…あなたがたの過去を見てしまったようでして。…さすがに他言無用にはさせておきますが。」

だがその瞳はやってやったぞと言ったような雰囲気を醸し出す心司の様子に今度は撫子が笑いながら仕掛けるのだ。

「はっはっは!!!これはしてやられましたなぁ~!…それでは俺の過去はどう映りましたかね?…ああ、一般市民の過去を見てもネタにはなりませんがね~!」

普段通りに笑う撫子にたじろぐ心司ではあるが彼は心に尋ねてみれば首を横に振るのだ。

「言いたくない。…だってこの人の過去は興味ないから。」

「はっはっは!!!それは申し訳ないことをした!すまなかったね~!」

「…別に良い。あなたは私が救済しなくても救われる人間だと信じてるので。」

抑揚の無い言葉ではあるが抑揚がありすぎる撫子は気にせずに大きく笑う。

「じゃあこれからは良い事をしないとだな~!」

笑う撫子をよそに今度は心司がパソコンを取り出し何かを探しいる様子であった。そして何かを探したかと思えば心に向けて言葉を掛ける。

「じゃあ心?…試しに田中先生の過去を見てみようか?…まあざっくりとで良いから。」

「…はい、お父さん。分かりました。」

人形のように返事をした心は躑躅の瞳をまっすぐに捉えて離さずに言うのだ。

「あなたは小説が救いだったのですね?…あなたは私と同じ”狼”。そして場磁石家の跡取りでもあった。期待されて育った反面、重圧があったのでしょう。自身の能力の為に自分を犠牲にして能力を高めてきた。…そうですね?」

「…っえ?」

疑問を浮かべる躑躅ではあるが心は話を続けていく。

「しかし小説があったから今のあなたが居る。…あなたを支えてくれる人に感謝しないといけませんね。」

言葉を終えた心は今度は何も言わずにただ座っていたのであった。


「ちょっと待て!最後以外違うじゃんか!!?普通なら躑躅さんの過去が見えるはず…だろ?」

疑わしげな目をする幸に撫子は大いに笑い躑躅は頷く。そして哉太はふとこのような言葉を紡ぐのだ。

「何か裏があるね…?興味が湧いたよ。その子に…。」

この出来事が狼同士の舞台開幕であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

悪の献身 〜アイドルを夢見る少年は、優しい大人に囲まれて今日も頑張ります〜

木曜日午前
BL
韓国のアイドル事務所にスカウトされ、 日本から韓国へと渡った金山時雨。 アイドルを目指して頑張っていた彼がある時、自分と同じ事務所に入ってきた少年に心奪われる。 カリスマ性溢れるアイドルの少年とのデビューのために、時雨は大人の欲にまみれた世界へと身を投じることになる。 悪い大人たち×純粋なアイドル練習生のお話。 ※トゥルーエンド(他サイト掲載済み)

ノンケがメスにされる話

S_U
BL
ノンケ(強気)がやべえ野郎に襲われて気持ちよくなっちゃう話 変態×アキラ君 ⚠️注意⚠️ ・視点ブレブレ ・拘束ネタあり ・無理やり ・ほぼセッセッ ・過激な発言、エロ表現あり アキラ君tkbイキさせる話今月中には書きます!→投稿しました! 完結しました 他に書いたBL短編 【3人で出来るわけない!】→3P 【言葉攻め】→後輩×先輩

珍しい魔物に孕まされた男の子が培養槽で出産までお世話される話

楢山コウ
BL
目が覚めると、少年ダリオは培養槽の中にいた。研究者達の話によると、魔物の子を孕んだらしい。 立派なママになるまで、培養槽でお世話されることに。

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜

ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。 高校生×中学生。 1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

処理中です...