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"狼"の質疑応答

不幸ヤンキー、”狼”を間違える。【6】

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躑躅の言葉に目を見張る幸とフライなど構わずに躑躅は話し始める。
「哉太は…皐月には素質があったから場磁石家の跡取りになれたんだけど、僕は鍛錬をしても狼の入れ墨が…狼が継承されなかったから、親父と一緒に追いだされてしまって。でも、皐月とは文通だったり、携帯を買ってもらってからはメールとか電話したり、こっそり親父と一緒に会ったりしててね~。だから今でもこうやって仲が良いんだよ~。」
ミルクティーを一口飲んでから笑ってみせる躑躅に今まで黙っていたフライが躑躅の言葉に疑問に思ってしまう。
「あの…。失礼も承知なんですけど、恨んだりとかはしませんでしたか?自分は才能が無いからって追いだされて、弟の…その、場磁石さんとも離れ離れになって…。でも場磁石さんはみんなにちやほやされてたんじゃ…?」
フライの言葉に幸も頷けば躑躅は缶を握りしめて言い放つ。
「確かにその当時は恨んでいるのは本当だよ。…親父とは今でも仲良いけれどそんなに良い暮らしをしてたわけじゃないし。…でもそれは皐月、ううん。哉太も同じだよ。」
「同じって…?どういうことですか?」
幸が問い掛ければ躑躅は答える。
「…哉太は確かに才能はある。だから”狼”として生きているけど…、でも才能がありすぎてみんなに期待されて、みんなに都合の良い人間にさせられて…、みんなに合わせなければ、求められなければ認められない人間になっちゃって。…だからね、哉太って人嫌いなんだよ。…自分の中にある感性が研ぎ澄まされて疲れてしまう子だから。人に対して気を張って、気にしやすい子なんだよね~。」
哉太の生い立ちを聞いて幸やフライが無言になってしまえば躑躅は誤魔化すように笑う。
「でも、何があれ君達が哉太の相手をしてくれて嬉しいよ。見ている限り楽しそうにしてくれているしね?あっ!もう君達も文化祭の準備で忙しいよね?…ごめんね。引き留めてしまって…。」
「そんなこと無いっすよ!…哉太さんの話聞けて嬉しかったし…。」
幸が礼をすれば躑躅は微笑んでから言い放つのだ。
「…哉太を、皐月をこれからもよろしくお願いします。」
幸とフライは軽く微笑んだ。

文化祭までもう少しなので準備がかかり帰りが遅くなってしまった。時刻は午後8時過ぎ。幸はカバンを肩に掛けてから打ち合わせをしている哉太の元へ行こうとする。するとフライに声を掛けられた。
「さっちゃ~ん。一緒に帰ろうよ~。」
しかし幸は哉太を待つと言って断る。普段のフライであれば哉太に向けて皮肉の一つや二つを言うだろうが今日は違っていた。
「…分かったよ。不服だけど今日はおとなしく帰ります。」
「…不服?何が?」
幸が問い掛ければフライは拗ねたような表情を見せて言う。
「あいつと…場磁石さんとさっちゃんが帰ることは嫌だけど許すってこと。…でも僕は場磁石さんが過去に辛いことがあったからって許したわけではないから。」
「…フライもしつこいよな~。お前。」
幸の言葉にフライは帰り支度をしながら苦言する。
「いいもん!しつこくて!…そんじゃあ、さっちゃんじゃあね~。」
「おう~。またな~。」
フライが人が居ないことを確認しいそいそと窓を開けて飛び降りれば、能力を使って上着を翼にして飛び立つ。そんな彼の後ろ姿を見送ってから哉太の元へ行こうとすれば誰かに抱きしめられた。誰だろうかと幸が顔を向ければ哉太が笑っていた。
「いや~。終わったよ~。…撫子が『学校での青春恋愛小説とかどうだ!!?』って言ってきたから話進んじゃって…。でも花ちゃんが居てくれてホッとした~。…なんであのもやしが帰ったのかは知らないけど。」
ケラケラと笑う哉太に幸はどこか安心したような表情を見せつつ2人は一緒に帰る。
校門を出て幸は人が居ないことを確認してから哉太の大きな手のひらを軽く握る。幸がいきなり手を繋いだので驚く哉太ではあるがそんなことなど関係なく幸は静かに呟く。
「今日さ、哉太さんのお兄さんから色々話を聞いたんだ。…哉太さんのことで。」
「!!?躑躅が?…まったくうちの兄貴はあって間もない人に、年下に何言ってんだか。」
呆れて言葉が出ない哉太に幸は少し強く握ってから立ち止まり哉太を見つめる。哉太はサングラスを掛けているので
表情は分からないが疑問を抱いている様子の彼に幸は言い放つ。
「まだ…その。恋人になって間もないから言えないこととかたくさんあるだろうし、言いたくないこともあるだろうから無理しなくても良い。…でも、あんたが、哉太さんが傷付いた姿を見たくないから傷付いた事とかあったらそれだけは言って欲しい。…俺がいっぱい、いっぱい、慰めるし…守る…から。」
幸の拙い(つたない)言葉に哉太が驚けば彼は幸に軽いキスを落とした。突然のことで幸も驚けば哉太は手を一回叩いて能力を使って幸とくっつき、姫様抱っこをする。
「!!!なんだよ急に!恥ずかしいからやめろ!!!」
顔を赤くしてジタバタする幸に哉太は耳元で囁くのだ。
「今のはプロポーズの言葉として受け取っていいのかな?…それなら俺、すんごい嬉しいんだけど?」
「!!!プロ…ポーズ。んな…つもりじゃ。」
「え~。だったら俺、悲しいんだけど。…あ~あ。傷付いたなぁ~。」
哉太がわざと落胆した様子で肩を下げれば幸は恥ずかしそうにしつつ小さな声で哉太の耳元で囁く。
「やっぱり…その…あの。…プロポーズです。…だから許して?」
「!!!あ~もう!!幸が可愛すぎる~!!!!もう、ホテル行こっ?ねっ?」
そう宣言をした哉太は全速力でいつものホテルへ向かうのであった。
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