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46.僕はあなたと分かち合いたかった。
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囚われているリィナを救う為、ルークはレジーナの能力と共に魔術を…特に自身が得意とする炎の魔術を駆使して戦いに挑む。だから彼は古風なジッポライターを取り出しては術を放つのだ。
「レジーナ、行くよ。…炎のぉ、進撃!!!」
するとライターから無数の炎がリィナを捕えているリッチに向かってくる。…しかし簡単にはいかないのだ。
「…Interrupt guard…そして守れ」
骸になった手でディルが魔法陣を生み出しては、灼熱の炎の剣劇を遮断する。しかも怒涛に炎が降りかかってもディルどころかリッチでさえも傷一つも付くことは無い。…ただ広い領域を守るように魔法陣が包み込んでは炎を消火していくのだ。
…レジーナのおかげで能力は向上させてるけど。やっぱりそう簡単には上手くはいかない…か。
また術を放とうと呼吸を整えてから挑む。だが、ディルに救われた張本人はあくどく笑いながらも自らも武器を…ダークフォースを手にしていた。豊と酷似している槍の姿に目を見張りつつもリッチは嘲笑して言い放つ。
「ふ~ん。これがあんたの弟子の魔力って奴か~。…見事なもんだ。あの無数の炎が襲い掛かれば、見事に焼却されていただろうな~」
「…僕が教えましたからね。この魔術は」
「それが敵になっちまうなんて、塞翁が馬なのか青天の霹靂か…どっちなんだろうな~」
リッチの皮肉を言われつつも、それにかまけずに臨戦態勢を取り続けるディルとルークの両者。それを離れた場所でリッチと彼に拘束されているリィナが見つめる。
リィナは感じ取っている。…普段のルークには見られない、焦りと共に悲痛な表情を浮かべている姿を。だから彼女はその姿を自身の中にある”メモ機能”を使用して観察していくのだ。
―そして両者は再び戦闘に入る。先方はルークからだ。
「じゃあこれはどうかな。…炎のぉ、爆風!」
すると大きな炎がディルに向かって放たれた。まるでその技は炎の滝のようになだれ込んでは全てを焼きつかせるほどの威力である。…しかしルークの技はいとも容易いものであった。
「…Water flow…我々を救え」
ディルはInterrupt guardを使用しながら、また術を放ち…炎の爆炎を消火してしまったのだ。あまりの実力の差にルークはいつもよりも眉間に皺を寄せては呼吸を整えようとした時…ディルは悲しげに笑っていた。
「ルークさん、あなた僕に嘘を吐きましたね。…何度も謝罪をしていた時にはそんな風には感じ取れませんでしたが」
「嘘…って、どういう意味ですか?」
「……言わせる気ですか?」
―――…ズキンッ!!
ルークは自分の心中に何かが突き刺さったような感覚を得てしまう。そんなディル…いや、侮蔑するような恩師の顔など見たことも無かったからだ。そんな彼にルークは深い溜息を吐いては話していく。
「…あなたは協定を結ぶと言いながら、こちらに数十名の焚書士を派遣しようとしたでしょう?」
「そ…それは…」
図星を突かれたルークは柄にもなく冷や汗掻いてしまう。しかしディルは気にせずに言葉を発する。
「ま、来させないように、鏡を壊してしまいましたけどね」
「えっ! それはどういう―」
「…あとはもう1つ」
ルークの質問の前にディルは次に戒めるような表情を見せては憤りを感じてしまうほどの言葉を紡いだのだ。
「…なぜ、あのような人間をここに来させたんですか。…あなたは賢い人間だと思っていますから、あんな……”書物”と”人間”が手を取り合う世界、なんて馬鹿なことを言ってしまう人間を遣わせるとは思いもしませんでしたよ」
心底蔑むような視線にルークは悲しさと共に恩師に対しての配慮が足りなかった自分を呪う。…だがそれでも、過去の自分を守ってくれた恩師に対して伝えたいことがあるのだ。
―なぜ、自分が甘ったれた正義感を振りかざす豊を派遣したのかを。
「……アリディル、いや。先生。…あなたがとてつもないほどの怒りに満ちているのは痛感しています。…でも、僕にも考えがあるんです」
「考え…ですか。…それはあなたが僕を封印したくて来たわけで―」
「そうじゃありません! 聞いて下さい。…魔術は使用してしまいましたが、僕は本当に…先生、いえ。あなたたちと協定を結ぶ為に…彼を派遣したんです。…僕は彼に、希望を感じたから」
希望という言葉に眉を顰めるディルと嘲るように笑うリッチは馬鹿馬鹿しいような顔をした。
「おいおい~。何言ってんだよ? …そ~んなバカくせぇ冗談に乗るかっての」
「…冗談じゃないよ」
否定をしてもリッチは侮蔑する。
「はっ。…枢要の罪として目覚めてきた時から、お前の狡猾さと冷酷さは鏡を通じて見ていたぜ。…誰がそんな、バカでアホみたいな戯言に付き合えるんだっつぅ~の。…自分の身勝手さをわきまえろよ。人間」
リッチがわざと挑発をするもルークは表情を変えずに真っすぐディルを見る。その真剣な…青空のように輝く瞳にディルは懐かしさを覚えた。
…幼くて、可愛らしくて、まるで人間で言う”我が子”のようなルーク…ジェシーを。暇つぶしにと救った人間だったはずの存在が、こんなにも愛しくて堪らなかった…そんな彼を。
―だから今度は、その美しく輝いた青を紫に変えたくなってしまった。…何故そう思ってしまったのだろうか?
すると改まったように微笑んでからディルは全ての魔術を停止させたのだ。だから今のルークにとっては絶好の好機であるので意思疎通しているレジーナは彼に呼びかける。
『ルーク! 今がチャンスよ。…これを逃したら、あなたの勝ち目は無いわ』
『……ごめん、レジーナ』
『ルーク?』
するとルークもレジーナとの契約を停止させて武器であるジッポライターをしまいこんだのだ。そして人間の姿に戻ってしまった彼女を置いて、彼はディルに歩み寄った。彼は伝えたかったのだ。…この想いを、願いを。
…もう先生を裏切りたくない。だから。
―しかし裏切ったのはディルの方であった。ルークのその鮮やかな青を鮮やかな血で染めたいがあまりに。
「…ルーク・アリディル・ジェシー。…あなたに”絶望”を授けましょう」
そしてディルはルークに手をかざした…のではなく、自分の胸に骨ばった手を置いて…告げたのだ。
「Death of flames…我に眠りを」
―――ドカッッンッ!!! …シューーーー…。
突然の炎に覆われてルークが目を閉じてしまう。そして何事かと思い見開けば…そこには焼け焦げたマントとシルクハット、そして…焼き焦がれた蒼の”書物”がそこにあった。
…ルークはそれだけで分かってしまったのだ。
「…せん、せい。…せんせい!!!!」
そう。”強欲”の罪のアリディルは我が弟子…いや。我が息子の青く輝く瞳を奪いたいが為に…自身を差し出したのだ。…愛弟子が絶望に苛まれることを願って。
「レジーナ、行くよ。…炎のぉ、進撃!!!」
するとライターから無数の炎がリィナを捕えているリッチに向かってくる。…しかし簡単にはいかないのだ。
「…Interrupt guard…そして守れ」
骸になった手でディルが魔法陣を生み出しては、灼熱の炎の剣劇を遮断する。しかも怒涛に炎が降りかかってもディルどころかリッチでさえも傷一つも付くことは無い。…ただ広い領域を守るように魔法陣が包み込んでは炎を消火していくのだ。
…レジーナのおかげで能力は向上させてるけど。やっぱりそう簡単には上手くはいかない…か。
また術を放とうと呼吸を整えてから挑む。だが、ディルに救われた張本人はあくどく笑いながらも自らも武器を…ダークフォースを手にしていた。豊と酷似している槍の姿に目を見張りつつもリッチは嘲笑して言い放つ。
「ふ~ん。これがあんたの弟子の魔力って奴か~。…見事なもんだ。あの無数の炎が襲い掛かれば、見事に焼却されていただろうな~」
「…僕が教えましたからね。この魔術は」
「それが敵になっちまうなんて、塞翁が馬なのか青天の霹靂か…どっちなんだろうな~」
リッチの皮肉を言われつつも、それにかまけずに臨戦態勢を取り続けるディルとルークの両者。それを離れた場所でリッチと彼に拘束されているリィナが見つめる。
リィナは感じ取っている。…普段のルークには見られない、焦りと共に悲痛な表情を浮かべている姿を。だから彼女はその姿を自身の中にある”メモ機能”を使用して観察していくのだ。
―そして両者は再び戦闘に入る。先方はルークからだ。
「じゃあこれはどうかな。…炎のぉ、爆風!」
すると大きな炎がディルに向かって放たれた。まるでその技は炎の滝のようになだれ込んでは全てを焼きつかせるほどの威力である。…しかしルークの技はいとも容易いものであった。
「…Water flow…我々を救え」
ディルはInterrupt guardを使用しながら、また術を放ち…炎の爆炎を消火してしまったのだ。あまりの実力の差にルークはいつもよりも眉間に皺を寄せては呼吸を整えようとした時…ディルは悲しげに笑っていた。
「ルークさん、あなた僕に嘘を吐きましたね。…何度も謝罪をしていた時にはそんな風には感じ取れませんでしたが」
「嘘…って、どういう意味ですか?」
「……言わせる気ですか?」
―――…ズキンッ!!
ルークは自分の心中に何かが突き刺さったような感覚を得てしまう。そんなディル…いや、侮蔑するような恩師の顔など見たことも無かったからだ。そんな彼にルークは深い溜息を吐いては話していく。
「…あなたは協定を結ぶと言いながら、こちらに数十名の焚書士を派遣しようとしたでしょう?」
「そ…それは…」
図星を突かれたルークは柄にもなく冷や汗掻いてしまう。しかしディルは気にせずに言葉を発する。
「ま、来させないように、鏡を壊してしまいましたけどね」
「えっ! それはどういう―」
「…あとはもう1つ」
ルークの質問の前にディルは次に戒めるような表情を見せては憤りを感じてしまうほどの言葉を紡いだのだ。
「…なぜ、あのような人間をここに来させたんですか。…あなたは賢い人間だと思っていますから、あんな……”書物”と”人間”が手を取り合う世界、なんて馬鹿なことを言ってしまう人間を遣わせるとは思いもしませんでしたよ」
心底蔑むような視線にルークは悲しさと共に恩師に対しての配慮が足りなかった自分を呪う。…だがそれでも、過去の自分を守ってくれた恩師に対して伝えたいことがあるのだ。
―なぜ、自分が甘ったれた正義感を振りかざす豊を派遣したのかを。
「……アリディル、いや。先生。…あなたがとてつもないほどの怒りに満ちているのは痛感しています。…でも、僕にも考えがあるんです」
「考え…ですか。…それはあなたが僕を封印したくて来たわけで―」
「そうじゃありません! 聞いて下さい。…魔術は使用してしまいましたが、僕は本当に…先生、いえ。あなたたちと協定を結ぶ為に…彼を派遣したんです。…僕は彼に、希望を感じたから」
希望という言葉に眉を顰めるディルと嘲るように笑うリッチは馬鹿馬鹿しいような顔をした。
「おいおい~。何言ってんだよ? …そ~んなバカくせぇ冗談に乗るかっての」
「…冗談じゃないよ」
否定をしてもリッチは侮蔑する。
「はっ。…枢要の罪として目覚めてきた時から、お前の狡猾さと冷酷さは鏡を通じて見ていたぜ。…誰がそんな、バカでアホみたいな戯言に付き合えるんだっつぅ~の。…自分の身勝手さをわきまえろよ。人間」
リッチがわざと挑発をするもルークは表情を変えずに真っすぐディルを見る。その真剣な…青空のように輝く瞳にディルは懐かしさを覚えた。
…幼くて、可愛らしくて、まるで人間で言う”我が子”のようなルーク…ジェシーを。暇つぶしにと救った人間だったはずの存在が、こんなにも愛しくて堪らなかった…そんな彼を。
―だから今度は、その美しく輝いた青を紫に変えたくなってしまった。…何故そう思ってしまったのだろうか?
すると改まったように微笑んでからディルは全ての魔術を停止させたのだ。だから今のルークにとっては絶好の好機であるので意思疎通しているレジーナは彼に呼びかける。
『ルーク! 今がチャンスよ。…これを逃したら、あなたの勝ち目は無いわ』
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…もう先生を裏切りたくない。だから。
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「…ルーク・アリディル・ジェシー。…あなたに”絶望”を授けましょう」
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突然の炎に覆われてルークが目を閉じてしまう。そして何事かと思い見開けば…そこには焼け焦げたマントとシルクハット、そして…焼き焦がれた蒼の”書物”がそこにあった。
…ルークはそれだけで分かってしまったのだ。
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