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40.君の覚悟を見せてよ。
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豊が放った衝撃的な事実にルークは訝しむような目線を送った。何故ならば、この世界の理として、”書物”に”意志”を持たせてしまった…というのは重罪であるから。”書物”が”意志”を持ったから人間と戦争を起こしたわけであるし、力を持つ”書物”を支配させられるのは人間しかいないと結論付けられているのだから。
―だがこの青年、志郎 豊は”暴露”の罪であるサラに”意志”を芽生えさせた挙句、記憶を消すなとも言ってくる。…さすがのルークでもこの問題に対しては司書官として考えざるを負えない。…だから彼は冷たく言い放ったのだ。
「君の処罰に関しては後で考えさせてもらうよ。…一応、君は壺中の天の人間だからね~。丁重に扱わないと。…ただ、反省はしてもらう」
すると彼は腕時計から焚書士の部下を呼び出し、彼を牢屋まで連れて行かせた。
―だがそこへ”反魂”の書、リィナも付いて来たのだ。勝手な行動を取るリィナに怪訝な表情をするルーク。そんな彼などお構いなしに、彼女は塞ぎ込んでいる豊へ茶化すように話し掛けた。
「私も暇だから付いて行く。…牢屋については詳しいぞ? 私は」
付いてきてくれるリィナに彼は少々驚きつつも、強張っていた顔が柔らかくなる感覚がした。…内心、1人で居るのは心細かったから。
そんな彼はわざと明るい笑みを見せるのだ。
「…ははっ。俺だって、最初は牢屋に来たんだから勝手は分かるつもりだけど?」
「い~や、私の方が知っているな。うん」
「なんで張り合うんだよ~。ははっ」
これから痛い目を見るのに1人と1冊が笑いあう姿を見てルークは不思議に思う。豊は変人だから置いておくとして…。
「なんで人間嫌いなリィナがアイツのことを労わるんだろう?」
豊とリィナが牢屋へと連行されてから一息吐いたルークは、机に置いてある”書物”、レジーナを一瞥してから手に触れる。やはり”書物”だから冷たいし、温もりさえも感じない。…だからリィナの行動も分からない。
だが、そんなことはさておき。ルークは立ち上がり、今度は”憂鬱”の呪術を解いたアスカと”意志”を持ってしまったサラへ見舞いがてら様子を見ることにした。容体は担当医から聞いている。彼女の状態は安定しているようだ。
だから彼はレジーナを人間の姿にさせてから彼女と共に医務室へ向かったのだ。
薄暗くホコリ臭い部屋の中で豊は厳重に逃げられぬように手錠を嵌めさせられている。手錠のせいでトイレがあっても拘束されているのがむず痒いし、落ち着かない。しかも決まった時間にしか出されない素っ気にないご飯や、ぬるくて気持ちが悪い水しか飲めない日が続く始末。…恐らく今日で5日目だが、豊はかなり堪えていた。だが同じく手錠をされているのにも関わらずこの”書物”…リィナは違っている。
彼女は牢屋に居る間は何かを考え込ており、時々言葉を発しながら、少しニヤついていたのだ。その姿に豊は幾度目かの溜息を吐くばかりだ。初めは失礼ではあるが”気持ちが悪い”という気持ちだったが、暇つぶしが出来てて羨ましいとさえ感じてしまう。
―だから彼は楽しそうな彼女へ声を掛けるのだ。
「ねぇリィナ~。なに考えてんの~? 楽しそうじゃん?」
「楽しいに決まってるだろ? この牢屋に居る間は焼かれずに済むんだから。…この場所は私にとっては安全地帯だからな」
彼女の悲しい言動に豊は口を噤んでしまうが、彼女は平気そうな顔をして、話しの後に続けた。
「…それに私は、今まで蓄積された情報の整理で忙しいんだ。…だから話し掛けるな」
「え~!!! ちょっとくらい構ってくれても―」
「うるさい。話し掛けるな、バカ志郎」
「そんなぁ~! やること無いのに~!!!」
ジタバタとしては話し相手になって欲しい豊に構わず、リィナは脳内にある情報の整理をしていく。
すると、今度は音が鳴り響いた。それは牢屋の近くにあるエレベーターの音だと分かった。
―――チィーッンン…。
開いたエレベーターのドアから1人…いや、1冊の”書物”が現れる。それは銀髪の長い髪をツインテールにした少女…レジーナであった。彼女は豊達の居る牢屋の錠をカードキーで開錠してから、始めはリィナの手錠を外したのだが、豊の手錠は外さなかった。普段とは違う様子の彼女に豊は嫌な予感…というか悪寒がした。
…やっぱり殺されるのかな? …俺。
だが彼女はリィナの手を引いてから、豊に向けて声を掛けるのだ。
「豊君。…君は確かに罪人だけれど殺されやしないわ。…でも、罰は受けてもらう。…もしかしたらそれは―」
―殺されるよりも苦しいかもしれない。
「…殺される、よりも? それってどういう―」
「説明はルークから聞いて。私はあくまで彼の相棒。…彼が言うなと命令するのなら言わないし、脅せと言われればひたすら脅す。…それだけの関係よ。…あなた達みたいな、”甘ったれた関係”でも無い」
そして豊も一緒にエレベーターへと連行し、冷静な言葉を放つレジーナだが…。彼女がどこか寂しげな表情をしているのを豊は何となく勘付いていたのであった。
書斎へと赴いたレジーナ達はノックをして返事を待つ。すると聞き慣れた声がしたのでレジーナから先に入室した。その次にレジーナと手錠をされたままの豊が入室する。
「ルーク。彼らを連れてきたわ。…豊君の手錠、外した方が良いんじゃないの?」
するとルークは手錠を科されている豊へ不躾に笑っていた。そんな上司の態度に頭にくるものの耐えるように唇を噛みしめる。…だが、豊も素直な子なので表情に出てしまっているのだが。
そんな彼にルークはレジーナへ手錠の鍵を渡した。それを彼女が受け取り豊の枷を外していく。…するとルークは彼に疑問を抱くような問い掛けをするのだ。
「ねぇ志郎君。…君は、”書物”に”意志”が合っても良いってサラやアスカに言っていた…いや、断言していたそうだね~。…それで僕に自白してきた…と」
「……はい」
「うん。正直でよろしい」
妙に普段よりも優雅で何かを企んでいるかのような上司の言い方に豊は不審を抱く。…だがその直感は当たってしまったらしい。何故ならばルークは彼を試すかのような試練を与えたからだ。
―かなり無理難題な試練を。
「そんな君へ挑戦状だよ。…これから枢要の罪と会ってきて欲しいんだ」
「…はい?」
「あぁでも、なるべく戦闘は無しね? ただ話を着けたいだけだしね~。ワガママを言うのであれば”平和協定”でも結んで欲しいなぁ~」
「えっと…、その…」
突拍子もない上司の発言に豊は唖然としてしまうが自分には関係ないというような口ぶりで豊にあれやこれやと注文を付けてくる。…ちなみに相棒のリィナでさえもさすがに驚いていた。
そんな彼らを見てルークはまるで悪魔のように微笑んでは発言をするのだ。
「だって、これが君の”正義”なんでしょ? 有言実行って奴だね。…場合によってはサラとアスカの件は不問にしてあげても良いし?」
上司のその言葉に豊は己の言葉の責任に激しい後悔をする。…だが実行に移せばサラやアスカの関係性は続いていくという約束を取り付けられて彼は少しだけ希望を見出したのであった。
―だがこの青年、志郎 豊は”暴露”の罪であるサラに”意志”を芽生えさせた挙句、記憶を消すなとも言ってくる。…さすがのルークでもこの問題に対しては司書官として考えざるを負えない。…だから彼は冷たく言い放ったのだ。
「君の処罰に関しては後で考えさせてもらうよ。…一応、君は壺中の天の人間だからね~。丁重に扱わないと。…ただ、反省はしてもらう」
すると彼は腕時計から焚書士の部下を呼び出し、彼を牢屋まで連れて行かせた。
―だがそこへ”反魂”の書、リィナも付いて来たのだ。勝手な行動を取るリィナに怪訝な表情をするルーク。そんな彼などお構いなしに、彼女は塞ぎ込んでいる豊へ茶化すように話し掛けた。
「私も暇だから付いて行く。…牢屋については詳しいぞ? 私は」
付いてきてくれるリィナに彼は少々驚きつつも、強張っていた顔が柔らかくなる感覚がした。…内心、1人で居るのは心細かったから。
そんな彼はわざと明るい笑みを見せるのだ。
「…ははっ。俺だって、最初は牢屋に来たんだから勝手は分かるつもりだけど?」
「い~や、私の方が知っているな。うん」
「なんで張り合うんだよ~。ははっ」
これから痛い目を見るのに1人と1冊が笑いあう姿を見てルークは不思議に思う。豊は変人だから置いておくとして…。
「なんで人間嫌いなリィナがアイツのことを労わるんだろう?」
豊とリィナが牢屋へと連行されてから一息吐いたルークは、机に置いてある”書物”、レジーナを一瞥してから手に触れる。やはり”書物”だから冷たいし、温もりさえも感じない。…だからリィナの行動も分からない。
だが、そんなことはさておき。ルークは立ち上がり、今度は”憂鬱”の呪術を解いたアスカと”意志”を持ってしまったサラへ見舞いがてら様子を見ることにした。容体は担当医から聞いている。彼女の状態は安定しているようだ。
だから彼はレジーナを人間の姿にさせてから彼女と共に医務室へ向かったのだ。
薄暗くホコリ臭い部屋の中で豊は厳重に逃げられぬように手錠を嵌めさせられている。手錠のせいでトイレがあっても拘束されているのがむず痒いし、落ち着かない。しかも決まった時間にしか出されない素っ気にないご飯や、ぬるくて気持ちが悪い水しか飲めない日が続く始末。…恐らく今日で5日目だが、豊はかなり堪えていた。だが同じく手錠をされているのにも関わらずこの”書物”…リィナは違っている。
彼女は牢屋に居る間は何かを考え込ており、時々言葉を発しながら、少しニヤついていたのだ。その姿に豊は幾度目かの溜息を吐くばかりだ。初めは失礼ではあるが”気持ちが悪い”という気持ちだったが、暇つぶしが出来てて羨ましいとさえ感じてしまう。
―だから彼は楽しそうな彼女へ声を掛けるのだ。
「ねぇリィナ~。なに考えてんの~? 楽しそうじゃん?」
「楽しいに決まってるだろ? この牢屋に居る間は焼かれずに済むんだから。…この場所は私にとっては安全地帯だからな」
彼女の悲しい言動に豊は口を噤んでしまうが、彼女は平気そうな顔をして、話しの後に続けた。
「…それに私は、今まで蓄積された情報の整理で忙しいんだ。…だから話し掛けるな」
「え~!!! ちょっとくらい構ってくれても―」
「うるさい。話し掛けるな、バカ志郎」
「そんなぁ~! やること無いのに~!!!」
ジタバタとしては話し相手になって欲しい豊に構わず、リィナは脳内にある情報の整理をしていく。
すると、今度は音が鳴り響いた。それは牢屋の近くにあるエレベーターの音だと分かった。
―――チィーッンン…。
開いたエレベーターのドアから1人…いや、1冊の”書物”が現れる。それは銀髪の長い髪をツインテールにした少女…レジーナであった。彼女は豊達の居る牢屋の錠をカードキーで開錠してから、始めはリィナの手錠を外したのだが、豊の手錠は外さなかった。普段とは違う様子の彼女に豊は嫌な予感…というか悪寒がした。
…やっぱり殺されるのかな? …俺。
だが彼女はリィナの手を引いてから、豊に向けて声を掛けるのだ。
「豊君。…君は確かに罪人だけれど殺されやしないわ。…でも、罰は受けてもらう。…もしかしたらそれは―」
―殺されるよりも苦しいかもしれない。
「…殺される、よりも? それってどういう―」
「説明はルークから聞いて。私はあくまで彼の相棒。…彼が言うなと命令するのなら言わないし、脅せと言われればひたすら脅す。…それだけの関係よ。…あなた達みたいな、”甘ったれた関係”でも無い」
そして豊も一緒にエレベーターへと連行し、冷静な言葉を放つレジーナだが…。彼女がどこか寂しげな表情をしているのを豊は何となく勘付いていたのであった。
書斎へと赴いたレジーナ達はノックをして返事を待つ。すると聞き慣れた声がしたのでレジーナから先に入室した。その次にレジーナと手錠をされたままの豊が入室する。
「ルーク。彼らを連れてきたわ。…豊君の手錠、外した方が良いんじゃないの?」
するとルークは手錠を科されている豊へ不躾に笑っていた。そんな上司の態度に頭にくるものの耐えるように唇を噛みしめる。…だが、豊も素直な子なので表情に出てしまっているのだが。
そんな彼にルークはレジーナへ手錠の鍵を渡した。それを彼女が受け取り豊の枷を外していく。…するとルークは彼に疑問を抱くような問い掛けをするのだ。
「ねぇ志郎君。…君は、”書物”に”意志”が合っても良いってサラやアスカに言っていた…いや、断言していたそうだね~。…それで僕に自白してきた…と」
「……はい」
「うん。正直でよろしい」
妙に普段よりも優雅で何かを企んでいるかのような上司の言い方に豊は不審を抱く。…だがその直感は当たってしまったらしい。何故ならばルークは彼を試すかのような試練を与えたからだ。
―かなり無理難題な試練を。
「そんな君へ挑戦状だよ。…これから枢要の罪と会ってきて欲しいんだ」
「…はい?」
「あぁでも、なるべく戦闘は無しね? ただ話を着けたいだけだしね~。ワガママを言うのであれば”平和協定”でも結んで欲しいなぁ~」
「えっと…、その…」
突拍子もない上司の発言に豊は唖然としてしまうが自分には関係ないというような口ぶりで豊にあれやこれやと注文を付けてくる。…ちなみに相棒のリィナでさえもさすがに驚いていた。
そんな彼らを見てルークはまるで悪魔のように微笑んでは発言をするのだ。
「だって、これが君の”正義”なんでしょ? 有言実行って奴だね。…場合によってはサラとアスカの件は不問にしてあげても良いし?」
上司のその言葉に豊は己の言葉の責任に激しい後悔をする。…だが実行に移せばサラやアスカの関係性は続いていくという約束を取り付けられて彼は少しだけ希望を見出したのであった。
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