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37.まっすぐな”想い”と”意志”で。
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集中治療室にて、急遽な来客が訪れた。それは、患者の…アスカの相棒であるサラと、1冊の書物と1人の人間。担当医である彼はその1組の存在を知っている。
…サラ以外のこの1冊と1人、リィナと豊の異質コンビのことなど焚書士の間では話題で持ちきりなのだから。…特に豊の存在は上司であり責任者であるルークからこのように聞かされている。
―”書物”を”人間”のように扱う、甘っちょろい正義感を掲げた面倒な人間である―と。
だから極力は豊とは関わりたくはないのだが…今回は眠り続けているアスカを見てサラが担当医に訴えかけたのだ。
「先生! …アスカと契約の儀式を行わせて下さい。…俺はこいつらからある情報を聞いています。…それを試したいんです」
「は…はぁ?」
困惑している様子の担当医にサラは深く礼をし、そして決意表明をするのだ。
「俺にアスカを救わせて下さい! その行為がたとえ異常でも、おかしくても、構いません。…どうしても、アスカを救いたいんです。…だから、俺に契約の儀式を行わせて下さい」
そして今度は土下座でもしそうな勢いで座り込むサラを豊が止める。話が全く見えない様子の担当医へ豊はこのような言葉を告げた。
「これがあなた達の世界にとっては、異常で異端だとは存じています。…俺がサラに強要してしまったからこのような形になってしまったのも…俺なりには分かっているつもりです。責任は俺がちゃんと取ります。…だから―」
―サラにアスカ書簡を救わせて下さい。
そして豊が深く礼をしてはサラも同じようにする。その姿に担当医は唖然としているが、豊の傍らでリィナはこのやり取りを”メモ”していた。…それは”他者を大切にする想いはモノでさえも変化する”という情報を。
ここは深い深い闇の中。そんな中でアスカは1人、真っ赤に染まった機械と遊んでいた。それはなぜ? …ただ、今はとても苦しくて、気分も欝々としていて…死にたいぐらいの思いを彼女はしている。…そんな感情を抱いているのだ。
…だから彼女は赤い機械達と遊んでいた。自分を裏切ることの無い”モノ”達を。…そして、”モノ”であるのに好意を抱いてしまった”モノ”と決別しようと。
…でもそれでも、彼女はその”モノ”で頭が離れない。離れられない。だから”憂鬱”の罪から聞かされた言葉は心に響いてしまったのだ。
こんな感情を持たなければ、その”モノ”は…彼は自分以外にさえも笑みを見せていただろうに。あんな素っ気なくも無かっただろうに。でも自分以外に笑みを見させてしまうのは嫌だった。だから彼女は彼の…サラのベースを作ってしまったのだ。自分にだけ大輪のように咲く鮮やかな笑みを独り占めしたいが為に。
―だが結局、サラはアスカにさえ微笑まなくなってしまった。
なぜそうなってしまったかの前に、彼女は傷心しているので飛躍的な考えに至ってしまう。
「…私なんて居なければ良かったんだ。…私が死んだ方がサラだって楽だろうに。私だけのモノって勝手にサラを縛りつけたから。だからサラは私が嫌になってしまったんだ。…もうこんな気持ちなんて―」
―要らない。
そう言おうとしたその時。今度は暗闇から一筋の光が差し込み、アスカの暗闇を照らした。それはまるで暖かな日差し、太陽のように温かい。…そして一筋の光から現れたのは…人間の姿をしたサラであった。
…なんでサラが居るの? あぁそっか。…私が死なせないようにしているからか。だって私は…使われる”人間”だから。サラは面倒ごとが嫌いだからさっさと私を救って、互いの利用をするだけの存在にさせようとしていて…。
彼女の暗く淀んだ考えは呪いに反応し、彼女は咳き込んでしまった。だから彼女の好きな機械達は赤黒く染まった血飛沫で染められていたのだ。
「ゴホッッ!!! ゴッホッッ!!」
「アスカ!!! お前本当に―」
「来ないで!!!」
口から血が溢れ出す様を見てサラは心配になるがアスカは拒絶するように彼と距離を取る。嫌悪しているが悲痛な顔を見せるアスカにサラは戸惑いを見せた。
…なんで来るの? あなたと決別しようとしているのに…。どうして私の努力を無駄にするの?
彼女の呪いが渦巻いては縛られるようにアスカは血反吐を吐く。…拒絶はされつつも、それでも相棒だけでは済まされぬほどの”想い”を抱いてしまったサラは…遂に行動に移すのだ。
離れつつあるアスカにサラは踏み出して急接近したかと思えば…彼女を抱いたのだ。その逞しい両腕は少々強引だが衰弱の一途を辿るアスカにとっては支柱となっていた。そしてぶっきらぼうではありながらも、彼女の血に染まった口元をごつごつとした指で拭うのだ。
「…どう、して? 私の、こと、きらいでしょ?」
サラを振りほどきたいが上手く力が入らない。でもそれだけでは無い。…彼に抱かれたことがアスカにとっては衝撃的すぎて頭が働かないのだ。…欠乏している彼女の血が輸血されれば、彼女はその青白い肌では無く、紅潮していただろうに。
しかしそんなことよりも彼女は、アスカは知りたいのだ。…嫌いな自分をどうしてこんな淀んだ空間から救おうとしている彼に行為を、彼女は知りたい。
だがそんなことは、自身の指を見てから哀しげな表情をし、今度は彼女の頬に触れては不器用に彼女が飛散してしまった真紅を拭くのだ。もみくちゃにされながら彼に口元全体を拭わされるので、アスカは抗議する。
「…だか、ら、答えて! どうして、私のことが、嫌いなのに、ここまで来たの!?」
「…まぁ、あらかたは取れたか。意思疎通しても匂いとか、血とかはあるんだな」
「だから…どうして! 私のことが嫌いなら、こんな場所に来なくても―」
「なんで”意志”の無い”書物”が相棒を嫌わないといけない? それは契約上おかしいぜ? アスカ」
「そっ…それは…」
真髄を突かれアスカは戸惑いを見せる。…そんな彼女にサラは真剣な瞳をして言い放つのだ。
「俺はお前に惹かれていた。でもそれだとお前の相棒として成立しない。だから俺はお前を嫌うフリをしていたんだ。だからお前を悲しませてしまったのも分かってはいたけれど、そしたら”意志”があると判断されて―」
…やめてほしい。…そんなの嘘だ! 嘘に…。
気が動転している彼女はヒステリックな声を荒げては目尻に涙を浮かばせる。だってそんなの、言動と行動がちぐはぐしていておかしいから。
「嘘に決まってるでしょっ!?? だったらどうして私に冷たくしたの? なんで私を避けていたの?? 私があなたを想って―」
「あぁ~もう!! うっせぇ!!! 分かったから―」
するとサラは文句を続けようとする彼女の唇に…初めてを送った。
――――チュッ。
「…いい加減、うるせぇクチ…閉じろ。…バカ」
赤く頬を染めるサラの行為は、彼女の世界は暗く淀んでいたにも関わらず…亀裂が入り、ガラスのように…砕け散った。
…サラ以外のこの1冊と1人、リィナと豊の異質コンビのことなど焚書士の間では話題で持ちきりなのだから。…特に豊の存在は上司であり責任者であるルークからこのように聞かされている。
―”書物”を”人間”のように扱う、甘っちょろい正義感を掲げた面倒な人間である―と。
だから極力は豊とは関わりたくはないのだが…今回は眠り続けているアスカを見てサラが担当医に訴えかけたのだ。
「先生! …アスカと契約の儀式を行わせて下さい。…俺はこいつらからある情報を聞いています。…それを試したいんです」
「は…はぁ?」
困惑している様子の担当医にサラは深く礼をし、そして決意表明をするのだ。
「俺にアスカを救わせて下さい! その行為がたとえ異常でも、おかしくても、構いません。…どうしても、アスカを救いたいんです。…だから、俺に契約の儀式を行わせて下さい」
そして今度は土下座でもしそうな勢いで座り込むサラを豊が止める。話が全く見えない様子の担当医へ豊はこのような言葉を告げた。
「これがあなた達の世界にとっては、異常で異端だとは存じています。…俺がサラに強要してしまったからこのような形になってしまったのも…俺なりには分かっているつもりです。責任は俺がちゃんと取ります。…だから―」
―サラにアスカ書簡を救わせて下さい。
そして豊が深く礼をしてはサラも同じようにする。その姿に担当医は唖然としているが、豊の傍らでリィナはこのやり取りを”メモ”していた。…それは”他者を大切にする想いはモノでさえも変化する”という情報を。
ここは深い深い闇の中。そんな中でアスカは1人、真っ赤に染まった機械と遊んでいた。それはなぜ? …ただ、今はとても苦しくて、気分も欝々としていて…死にたいぐらいの思いを彼女はしている。…そんな感情を抱いているのだ。
…だから彼女は赤い機械達と遊んでいた。自分を裏切ることの無い”モノ”達を。…そして、”モノ”であるのに好意を抱いてしまった”モノ”と決別しようと。
…でもそれでも、彼女はその”モノ”で頭が離れない。離れられない。だから”憂鬱”の罪から聞かされた言葉は心に響いてしまったのだ。
こんな感情を持たなければ、その”モノ”は…彼は自分以外にさえも笑みを見せていただろうに。あんな素っ気なくも無かっただろうに。でも自分以外に笑みを見させてしまうのは嫌だった。だから彼女は彼の…サラのベースを作ってしまったのだ。自分にだけ大輪のように咲く鮮やかな笑みを独り占めしたいが為に。
―だが結局、サラはアスカにさえ微笑まなくなってしまった。
なぜそうなってしまったかの前に、彼女は傷心しているので飛躍的な考えに至ってしまう。
「…私なんて居なければ良かったんだ。…私が死んだ方がサラだって楽だろうに。私だけのモノって勝手にサラを縛りつけたから。だからサラは私が嫌になってしまったんだ。…もうこんな気持ちなんて―」
―要らない。
そう言おうとしたその時。今度は暗闇から一筋の光が差し込み、アスカの暗闇を照らした。それはまるで暖かな日差し、太陽のように温かい。…そして一筋の光から現れたのは…人間の姿をしたサラであった。
…なんでサラが居るの? あぁそっか。…私が死なせないようにしているからか。だって私は…使われる”人間”だから。サラは面倒ごとが嫌いだからさっさと私を救って、互いの利用をするだけの存在にさせようとしていて…。
彼女の暗く淀んだ考えは呪いに反応し、彼女は咳き込んでしまった。だから彼女の好きな機械達は赤黒く染まった血飛沫で染められていたのだ。
「ゴホッッ!!! ゴッホッッ!!」
「アスカ!!! お前本当に―」
「来ないで!!!」
口から血が溢れ出す様を見てサラは心配になるがアスカは拒絶するように彼と距離を取る。嫌悪しているが悲痛な顔を見せるアスカにサラは戸惑いを見せた。
…なんで来るの? あなたと決別しようとしているのに…。どうして私の努力を無駄にするの?
彼女の呪いが渦巻いては縛られるようにアスカは血反吐を吐く。…拒絶はされつつも、それでも相棒だけでは済まされぬほどの”想い”を抱いてしまったサラは…遂に行動に移すのだ。
離れつつあるアスカにサラは踏み出して急接近したかと思えば…彼女を抱いたのだ。その逞しい両腕は少々強引だが衰弱の一途を辿るアスカにとっては支柱となっていた。そしてぶっきらぼうではありながらも、彼女の血に染まった口元をごつごつとした指で拭うのだ。
「…どう、して? 私の、こと、きらいでしょ?」
サラを振りほどきたいが上手く力が入らない。でもそれだけでは無い。…彼に抱かれたことがアスカにとっては衝撃的すぎて頭が働かないのだ。…欠乏している彼女の血が輸血されれば、彼女はその青白い肌では無く、紅潮していただろうに。
しかしそんなことよりも彼女は、アスカは知りたいのだ。…嫌いな自分をどうしてこんな淀んだ空間から救おうとしている彼に行為を、彼女は知りたい。
だがそんなことは、自身の指を見てから哀しげな表情をし、今度は彼女の頬に触れては不器用に彼女が飛散してしまった真紅を拭くのだ。もみくちゃにされながら彼に口元全体を拭わされるので、アスカは抗議する。
「…だか、ら、答えて! どうして、私のことが、嫌いなのに、ここまで来たの!?」
「…まぁ、あらかたは取れたか。意思疎通しても匂いとか、血とかはあるんだな」
「だから…どうして! 私のことが嫌いなら、こんな場所に来なくても―」
「なんで”意志”の無い”書物”が相棒を嫌わないといけない? それは契約上おかしいぜ? アスカ」
「そっ…それは…」
真髄を突かれアスカは戸惑いを見せる。…そんな彼女にサラは真剣な瞳をして言い放つのだ。
「俺はお前に惹かれていた。でもそれだとお前の相棒として成立しない。だから俺はお前を嫌うフリをしていたんだ。だからお前を悲しませてしまったのも分かってはいたけれど、そしたら”意志”があると判断されて―」
…やめてほしい。…そんなの嘘だ! 嘘に…。
気が動転している彼女はヒステリックな声を荒げては目尻に涙を浮かばせる。だってそんなの、言動と行動がちぐはぐしていておかしいから。
「嘘に決まってるでしょっ!?? だったらどうして私に冷たくしたの? なんで私を避けていたの?? 私があなたを想って―」
「あぁ~もう!! うっせぇ!!! 分かったから―」
するとサラは文句を続けようとする彼女の唇に…初めてを送った。
――――チュッ。
「…いい加減、うるせぇクチ…閉じろ。…バカ」
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