32 / 49
32.侵入経路は一体?
しおりを挟む
集中治療室でサラと別れたルークはアスカの担当医から彼女の容体を聞いてから書斎へと戻り、設置されている監視カメラの映像を見続けていた。部下であるアスカが心配ではないのかと思うほど仕事へと打ち込む彼の様子を、”拘泥”の書であるレジーナは相棒に少し呆れている様子である。
「ねぇルーク?…あなたが大切にしている部下が”死ぬ”かもしれないのよ?……心配ではないの?」
「う~ん…。でも心配したって何も出ないじゃいないかと僕は思うのだけれど?…心配をすれば彼女は助かるとレジーナは思うのかい?」
至って冷静な対応をするルークにレジーナは彼の性格を相棒として理解を努める。そして考え直した。
「まぁ…。それはもっともの話ね?…あなたらしくて安心したわ?」
「君に気を煩わせるほど僕は馬鹿じゃないよ?僕の名前の由来を君には教えたはずなんだけど?」
「えぇ。覚えているとも。」
「そう。…それなら良いよ。」
淹れたてのコーヒーを飲みながらルークはレジーナを…彼女のことなど気にしていないような態度を取っては黙々と”枢要の罪”が侵入した映像を見続ける。分かってはいた。ルークと契約をして、相棒となってからレジーナは彼に力を貸し続けた。ルークだって別に本当の悪人では無いとも分かってはいる。…自分の本名を捨てて、自分に枷を付けるように名乗っているのが、”悪魔”を意味する”ルーク”であると。しかしそれでも、”書物”であるが大切な恩師であり、自分を救ってくれた先生であり親代わりであった”枢要の罪”である”強欲”の罪の名前までも名乗ってしまうほど…彼を尊敬する傍らで憎んでいることもレジーナは知っている。…自分のような人間が、”書物”に心を馳せて、信頼をして裏切られた自分のような人間が出ないように、わざと冷酷なフリを演じ、意志を持ってしまった”書物”をその”記憶”だけの部分を焼却してしまえば犠牲者が出ない…そう彼が考えていることなどレジーナは分かっているのだ。だから彼は、レジーナに対しても信頼はしていても本当は心など許していない。…とてもちぐはぐした行動と感情を持っていて…とても寂しい人間だと彼女は内心では考えていた。
「……?ちょっと待てよ?…レジーナ。力を貸してほしい。…僕の瞳に力を宿らせて、この結界に映っている鏡をちゃんと見たいんだ。」
「???鏡…?まぁ、別に良いけれど?」
するとルークは呪文を宣言するのだ。
「我思う故に我あり!…”拘泥”の書よ。…その確かなる力を持って我に従え!」
するとレジーナは吸い込まれるように彼の両目に入り、彼の視力を向上させる。そしてルークは彼女の力を借りて映像を一旦止めて鏡の様子を見てから今度は映像を遅行させて目を凝らす。レジーナと契約をした彼の今の視力は、高さ20階もある場所から人間の細部や特徴がはっきりと分かってしまうほどのはっきりと見えるてしまうほどである。
「…なるほどね?レジーナ、もういいよ?分かったから。…君も分かったでしょ?僕の瞳を通して見たのだから。」
するレジーナを解除してからルークは目薬を取り出して瞳に垂らす。やはり疲れたのであろう。レジーナの能力は一時的ではあるが限度が無いので、使う人間によっては身を滅ぼし、逆に人間の体力を消耗させてしまうのだ。だがそれを上手く使いこなしているのがルークである。酷使しすぎた瞳を閉じて軽く目頭を押さえるほどの力を使ったのだが、今回は確かにこの力を最大限に活用しなければこの謎は解けなかったようだ。
「分かったわよ?…結界に反射する鏡を使ってこの場所に来たのでしょ?…結界は”意志””を持った”書物”には入ることが出来ないから破られることは無い。ただ…、反射をするだけの無機質な鏡を使えば、それを生業とし、操れるほどの力を持つ”書物”があったのでしょうね?…だからこの場所に侵入が出来た。…見解はこんな感じで良い?」
「うん。それを言いたかった。…君は賢いから助かるよ。…恐らくは”虚飾”の罪だろうね。”書物戦争”の時の書類に残っていたよ。鏡を使って”枢要の罪”やその部下たちを送らせたっていう記録があったからね~。」
そして残りのコーヒーを飲んで一息をするルークは嵌めている腕時計から部下である焚書士のオペレータへこのような通達をするのだ。
「結界の傍や医務室などに置いてある鏡を撤去、もしくはカーテンなどで塞いで欲しい。”枢要の罪”の侵入経路は”鏡”だ。…今すぐ撤去するように!」
『司書官!了解しました!今すぐ皆に伝えます!』
連絡をし終えて安堵したのも束の間。そういえばこの部屋にも鏡があるなとルークはふと思う。一応自分の仕事上の自室である鏡ではあるのだが、こちらも布か何かで塞いでしまえば侵入は防げる可能性は高い。…だがなぜだろうか。とある可能性に掛けてしまう。…もう一度、あの人に会いたいと。願ってしまう自分が居るのだ。
「…ルーク?その鏡を壊す…の?」
「……。」
「…ルーク?」
立ち上がり、そして無言で鏡に近づいてから手を付けるルークに疑念を抱いたレジーナは彼に問い掛けるのだが、彼は彼女には応答せずにふと呟いてしまうのだ。それは本心ではあるものの、願いなど叶わぬと高を括っていた自分をこの時のルークは知りもしない。ただ…ただ、願ってしまったのだ。
「……あなたに会いたいです。先生。…なんて、ね…、って…?」
すると鏡が呼応するように輝きだした。驚いて戦闘態勢に入る為にルークはレジーナと契約をする。今度は自身の持つジッポライターに宿らせた。そんな彼らの前に現れたのは、大きな鏡を背尾った髪をツインテールにした少女と浴衣を着た青年、そして…両腕を骸に変化した以外は…昔と変わらない。変わることのない。…憎んでも恨んでも決別が出来なかった書物。
「あ…あ……!??あなた…は。」
声が出せぬほど会いたくて、でも会いたくは無かった”書物”で大事なヒト。そんな彼にマントを翻した男性は微笑んだ。まるで昔の想起させるように。
「久しぶりだね?ジェシー?…大きくなったね?」
”強欲”の罪、アリディルは戸惑いと驚愕を見せるルークへにっこりと笑いかけるのであった。
「ねぇルーク?…あなたが大切にしている部下が”死ぬ”かもしれないのよ?……心配ではないの?」
「う~ん…。でも心配したって何も出ないじゃいないかと僕は思うのだけれど?…心配をすれば彼女は助かるとレジーナは思うのかい?」
至って冷静な対応をするルークにレジーナは彼の性格を相棒として理解を努める。そして考え直した。
「まぁ…。それはもっともの話ね?…あなたらしくて安心したわ?」
「君に気を煩わせるほど僕は馬鹿じゃないよ?僕の名前の由来を君には教えたはずなんだけど?」
「えぇ。覚えているとも。」
「そう。…それなら良いよ。」
淹れたてのコーヒーを飲みながらルークはレジーナを…彼女のことなど気にしていないような態度を取っては黙々と”枢要の罪”が侵入した映像を見続ける。分かってはいた。ルークと契約をして、相棒となってからレジーナは彼に力を貸し続けた。ルークだって別に本当の悪人では無いとも分かってはいる。…自分の本名を捨てて、自分に枷を付けるように名乗っているのが、”悪魔”を意味する”ルーク”であると。しかしそれでも、”書物”であるが大切な恩師であり、自分を救ってくれた先生であり親代わりであった”枢要の罪”である”強欲”の罪の名前までも名乗ってしまうほど…彼を尊敬する傍らで憎んでいることもレジーナは知っている。…自分のような人間が、”書物”に心を馳せて、信頼をして裏切られた自分のような人間が出ないように、わざと冷酷なフリを演じ、意志を持ってしまった”書物”をその”記憶”だけの部分を焼却してしまえば犠牲者が出ない…そう彼が考えていることなどレジーナは分かっているのだ。だから彼は、レジーナに対しても信頼はしていても本当は心など許していない。…とてもちぐはぐした行動と感情を持っていて…とても寂しい人間だと彼女は内心では考えていた。
「……?ちょっと待てよ?…レジーナ。力を貸してほしい。…僕の瞳に力を宿らせて、この結界に映っている鏡をちゃんと見たいんだ。」
「???鏡…?まぁ、別に良いけれど?」
するとルークは呪文を宣言するのだ。
「我思う故に我あり!…”拘泥”の書よ。…その確かなる力を持って我に従え!」
するとレジーナは吸い込まれるように彼の両目に入り、彼の視力を向上させる。そしてルークは彼女の力を借りて映像を一旦止めて鏡の様子を見てから今度は映像を遅行させて目を凝らす。レジーナと契約をした彼の今の視力は、高さ20階もある場所から人間の細部や特徴がはっきりと分かってしまうほどのはっきりと見えるてしまうほどである。
「…なるほどね?レジーナ、もういいよ?分かったから。…君も分かったでしょ?僕の瞳を通して見たのだから。」
するレジーナを解除してからルークは目薬を取り出して瞳に垂らす。やはり疲れたのであろう。レジーナの能力は一時的ではあるが限度が無いので、使う人間によっては身を滅ぼし、逆に人間の体力を消耗させてしまうのだ。だがそれを上手く使いこなしているのがルークである。酷使しすぎた瞳を閉じて軽く目頭を押さえるほどの力を使ったのだが、今回は確かにこの力を最大限に活用しなければこの謎は解けなかったようだ。
「分かったわよ?…結界に反射する鏡を使ってこの場所に来たのでしょ?…結界は”意志””を持った”書物”には入ることが出来ないから破られることは無い。ただ…、反射をするだけの無機質な鏡を使えば、それを生業とし、操れるほどの力を持つ”書物”があったのでしょうね?…だからこの場所に侵入が出来た。…見解はこんな感じで良い?」
「うん。それを言いたかった。…君は賢いから助かるよ。…恐らくは”虚飾”の罪だろうね。”書物戦争”の時の書類に残っていたよ。鏡を使って”枢要の罪”やその部下たちを送らせたっていう記録があったからね~。」
そして残りのコーヒーを飲んで一息をするルークは嵌めている腕時計から部下である焚書士のオペレータへこのような通達をするのだ。
「結界の傍や医務室などに置いてある鏡を撤去、もしくはカーテンなどで塞いで欲しい。”枢要の罪”の侵入経路は”鏡”だ。…今すぐ撤去するように!」
『司書官!了解しました!今すぐ皆に伝えます!』
連絡をし終えて安堵したのも束の間。そういえばこの部屋にも鏡があるなとルークはふと思う。一応自分の仕事上の自室である鏡ではあるのだが、こちらも布か何かで塞いでしまえば侵入は防げる可能性は高い。…だがなぜだろうか。とある可能性に掛けてしまう。…もう一度、あの人に会いたいと。願ってしまう自分が居るのだ。
「…ルーク?その鏡を壊す…の?」
「……。」
「…ルーク?」
立ち上がり、そして無言で鏡に近づいてから手を付けるルークに疑念を抱いたレジーナは彼に問い掛けるのだが、彼は彼女には応答せずにふと呟いてしまうのだ。それは本心ではあるものの、願いなど叶わぬと高を括っていた自分をこの時のルークは知りもしない。ただ…ただ、願ってしまったのだ。
「……あなたに会いたいです。先生。…なんて、ね…、って…?」
すると鏡が呼応するように輝きだした。驚いて戦闘態勢に入る為にルークはレジーナと契約をする。今度は自身の持つジッポライターに宿らせた。そんな彼らの前に現れたのは、大きな鏡を背尾った髪をツインテールにした少女と浴衣を着た青年、そして…両腕を骸に変化した以外は…昔と変わらない。変わることのない。…憎んでも恨んでも決別が出来なかった書物。
「あ…あ……!??あなた…は。」
声が出せぬほど会いたくて、でも会いたくは無かった”書物”で大事なヒト。そんな彼にマントを翻した男性は微笑んだ。まるで昔の想起させるように。
「久しぶりだね?ジェシー?…大きくなったね?」
”強欲”の罪、アリディルは戸惑いと驚愕を見せるルークへにっこりと笑いかけるのであった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい
司真 緋水銀
ファンタジー
【あらすじ】
一級の警備資格を持つ不思議系マイペース主人公、石原鳴月維(いしはらなつい)は仕事中トラックに轢かれ死亡する。
目を覚ました先は勇者と魔王の争う異世界。
『職業』の『天職』『適職』などにより『資格(センス)』や『技術(スキル)』が決まる世界。
勇者の力になるべく喚ばれた石原の職業は……【天職の警備兵】
周囲に笑いとばされ勇者達にもつま弾きにされた石原だったが…彼はあくまでマイペースに徐々に力を発揮し、周囲を驚嘆させながら自由に生き抜いていく。
--------------------------------------------------------
※基本主人公視点ですが別の人視点も入ります。
改修した改訂版でセリフや分かりにくい部分など変更しました。
小説家になろうさんで先行配信していますのでこちらも応援していただくと嬉しいですっ!
https://ncode.syosetu.com/n7300fi/
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

秘密の血判状
アラビアータ
ファンタジー
此処は架空の帝国。十数年前、この帝国は東の島国ジパングを属国に組み入れた。しかし猛卒に手を焼いた帝国は名目上、属国として彼らを下したが、実情は帝国内にある半独立国家としてジパングを認めるより他に無かった。ジパング側としても帝国に抵抗するよりは配下という名目で干渉を退ける方が都合が良かったのである。それ以来、ジパングは鎖国状態を続け、帝国が十年前に潜入させた隠密ヨーデルは行方知れずのままである。そのヨーデルの仲間達の中に、密かにジパング潜入を試みる者達がいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる