書物革命

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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25.戦いの収束。

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リィナの反魂の力によって全回復をした豊は、リィナが武器化をしたデータフォースを暴食の罪であるライグンに向ける。もう豆だらけで血だらけの痛々しい手は完治し、動きが鈍く思い両腕は羽のように感じてしまうほどだ。そして、ライグンによって吸収されていた体力は完全に戻っている。リィナが苦しんで自分を助けてくれた想いを胸に刻み、豊は苦虫を噛むような表情を見せているライグンに宣言する。

「勝負だ!ライグン!!!…お前を倒して、封印する!!!」

意気込みを見せる豊にライグンは先ほどの表情と共に、”信じられない”というような顔をしているのだ。それは反魂の力を人間達に利用され、苦しんできた彼女を彼は知っていたから。だから焚書士によって制限をされ、利用しようとする者達を毛嫌いし、彼女は人間を分かつことなく、避けて、そして心の檻を造っていた彼女の姿を、彼は結界の外やを通じて見ていたのだ。

…君のその美しい紫色アメジストは汚れることは無い。けがされることは無い。…そう信じていたのに…。だって君は、反魂は”永遠”を司るんでしょ?…でも、この人間が君を変えてしまったんだね?…君を。リィナを醜くさせて、人を信頼させようとしているんだね?

「…許せない。許せないよ!!!!…お前を!殺す!!!今度は、容赦しないよ!」

するとライグンは自身の両腕を双剣に変えて豊に向けて刃物を向ける。その素早い動きに豊は槍形態のデータフォースで翻したり、逆に突くような動作をした。しかもリィナが力を貸してくれるようだ。体が自由に動ける。しかしこの状態が続くとなると、リィナは自分の中にある炎でもがき苦しむだろう。…それは豊でも分かっていた。

『リィナ。…もう大丈夫だよ?力を貸してくれてありがとう。…ここからは俺が何とかするよ。』

彼女と意思疎通リンクさえ力を抑えようとする豊にリィナは少々驚く。なぜならば。

「お前のせいで!!!リィナが!変わったんだ!!!殺す!!!殺す!!!」

リィナの力とデータフォースで受け流してはいるものの激しいライグンの双剣捌きを見過ごせと言うのか?さすがに”心配”という知識を持っている彼女は苦言を言おうとするのだが…彼には妙案があるらしい。

『リィナのおかげでライグン自身の情報データも君の…データフォースのおかげでかなりあるんだ。重さをあまり感じないのは君のおかげだね。…それに、ちょっとした”技”も思いついちゃった。』

『…技?なんだそれは?』

リィナが疑問を提示すれば彼は一度、ライグンと離れてから彼女に伝える。

『まだ不安定だろうけれど足止めにはなると思う。…これ以上、リィナを苦しませないように…。』

…頑張るから。

その一言の後、豊はデータフォースを斜めに薙ぎ払うような動作をしてから術を唱えるのだ。

「膨大な情報よ!風となり、竜巻となって打ち砕け!風竜の情報ウィンドラゴンズデータ!」

暴食の罪であるライグンの攻撃はデータフォースの糧となり膨大な情報を蓄えて放ったのが風の竜…風竜ふうりゅうであった。ライグンはその大きく渦巻く風の中で吸収しようとするも…膨大すぎて吸収しきれないでいる。

…まずい!このままじゃ…。ページ数超えて…破裂する!

しかし吸収は止まらない。風はどんどんと吹き荒れるのだ。枢要の罪である自分が、暴食の罪である自分が。…こんな新米の焚書士に負けるなんて、封印されるなんて御免だ。だがどうすれば良いものか?弱りかけていたその時であった。

「ライグン。…早くこっちおいで!…マリーが作ってくれた結界を鏡と見立てて造った通路だ!…早くこっちへ!」

「……アド。…助かる!」

竜巻の渦の中で2冊はその場から脱出をした。


巨大な竜巻が消失し力を使い果たしたように豊はその場に倒れた。するとリィナはデータフォースから人間の姿へと変わり彼の安否を確認する。すると遅くなってこちらまで来た焚書士達が現れたおかげでリィナは目を鋭くさせ彼らを怒鳴りつけるのだ。

「お前たちは一体!何をしていたんだ!!!…結界が破壊されて警報は止むことは無かったぞ?…何をしていた?」

「それは…その。怪我人の救助と…それと…あの。」

しどろもどろというような様子が伺える焚書士達にリィナはさらに目を鋭くさせ怒鳴りつけようとするのだが…リィナが最も嫌いで最も恐れている男…ルークが前に立ちはだかるのだ。彼の姿を見てリィナは悪寒はしたものの負けじと前へ出て疑問をぶつける。

「ルーク司書官!あなたは志郎に『30分以内に来なかったら反省文ね。』と言っておられました。…だけど私達は来ることが出来ず、しかも結界が破壊され、警報が鳴りやまない中での戦闘を行いました。それでも来ることはありませんでした。……これは一体、どういうことですか!」

”怒り”というリィナには馴染み深い知識に彼女がぶつければ、彼はシルクハットを少し被り直してから冷静な声で言い放った。

「…まぁ言うなれば”試した”かな?壺中の天の人間と、枢要の罪に最も近い書物がどんな戦いをするのかなんて…結構、見物みものでしょう?」

冷淡な彼の答えにリィナは怒りのあまり瞳をぎらつかせる。紫色アメジストに輝く宝石の瞳が彼を憎悪の気持ちで睨みつければ、彼はそんな彼女…書物などにも気にせずに話を続ける。

「そんな怒らないでよ~。…でも怪我人が出たっていうのは本当だし、君たちの戦闘を監視カメラで見ながら、枢要の罪がどんな方法でこちらまで来たのかっていう調査もしたかったわけだし。…まぁでも、新米コンビとしてはさすがだね。…あっ。これ、志郎君には内緒ね?調子に乗られるのはかなりムカつくから。」

「……。」

ルークの悪気の無い言葉にリィナの怒りは収まらずにならなそうだが、彼女の情報データには”ルークという人間は非常に冷酷かつ非道であり、気にしても仕方がない。”というのをメモ機能に詳細に書かれてたのでリィナは怒りを鎮めてぐっすりと眠っている豊を目にした。自分のおかげで大した怪我はしてはいないが、データフォースの大技を使用したからか、ルークがちょっかいを掛けていても動かずに眠っている。そんな彼を見てリィナはほっと胸を撫で下ろした。

「ルーク司書官!アスカ書簡が…また、吐血してしまいました!!」

「…分かった。今すぐ行くよ。…と、その前に。」

焚書士の仲間の報告を聞いてからルークは心配そうに仲間達に運ばれて医務室へと行く豊を追うリィナに向けて言い放つのだ。

「良かったね。…君を守ってくれる騎士ナイトが現れて。…まっ。守られているのは志郎君の方だと僕は思うけど。」

悪戯に微笑んでからルークは先ほどの焚書士と共に集中治療室へと向かった。そして1冊残された書物のリィナは自身の中にあるはずの無い心に手を当てて、ゆっくりと頷く。

「…あぁ。そうだな。」

その微笑む姿はまるで淑女のようであった。
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