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24.”想い”という名の呪い。

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アスカはアドに向けて弾を撃ち込むものの、俊敏な動きにより当たらずにいた。枢要の罪と戦うのはアスカにとっても初めてであるが、自分は書簡であるにも関わらずに一発も当たらない悔しさでいっぱいになる。だからアスカは小型銃になっているサラに意思疎通リンクさせる。

『サラ!お願い!…武器交換ウェポンチェンジを!』

『了解!』

するとサラは小型銃からマシンガンへと変貌させた。その華麗なサラの変貌にアドは息を呑み面白みを感じて軽く微笑むが、アスカとしてはそれどころでは無い。応援が来るようには連絡をしておいたのでじきに来るはずだ。だからそれまでは自分が足止めをしなければという責任を彼女は背負っている。…いいや違う。彼女はのだ。女性でも戦力になれるということを。そしてその結果によって相棒パートナーと共に成し遂げて出来た結果だというのをという事実を残したいと。アドは焦燥感に狩られている彼女の心理を攻撃を避けながら読んでいたのである。こんなの容易いことだ。だって彼女は自分の得意とする領域フィールドに存在するのだから。
華麗な身のこなしで激しい射撃にもするりと翻してしまうアドことチオロサアドにアスカの焦りは止まらない。そして、力を貸してくれている相棒パートナーの暴露の書ことサラに申し訳ない気持ちになる。

…私がもっと有能だったら。

…私がサラに見合うような強くて魅力的な女性だったら。

……私が強い心の持ち主であったら、サラが振り向いてくれたのかな?

「見つけたよ…。君の心の弱さを!…を!!!」

アドの言葉に反応するかのようにアスカは地面へと突然伏せてしまった。彼女が強く握っていた、大切に掲げていたマシンガンはゴトリと音を立て落ちてしまう。そして武器になっていたサラは人間の姿へと変え、倒れている自身の相棒パートナーに急いで駆け寄った。

「おい!!!アスカ!??アスカ!!!」

酷く青ざめている様子の彼女にサラはどうしたものかと考えているのだが、考えてもどうすれば良いのか分からない。ただ、消えてしまった憂鬱の罪の行方を追う前に相棒パートナーのアスカの方が気がかりであったので、サラは逞しい両腕で彼女を抱きかかえてみせれば、アスカの目が薄く開いたかのように見えた。

「!!??おい!アスカ!!?だいじょう」

…ぶか?そう言いたかったのに言えなかった。…何故なら彼女はサラの前で咳き込んだかと思えば、嘔吐するかのように口から血しぶきを吐き出したのだから。


戦闘中になんてことを考えてしまったのだとアスカは目の前の敵に、枢要の罪の1冊、”憂鬱の罪”を倒すことへ集中しようと意識を戻す。だがしかし。

…いない!どこにも居ない!…しかもここは…どこ?

暗闇の中に自分だけが移動したように感じる。だってサラが…大切で愛しい相棒パートナーが居ないのだから。一気に不安になってしまうアスカはその場から逃げようと走り出すが、誰かに肩を叩かれたのである。

…だ、れ?

恐る恐る振り向けばそこには敵である枢要の罪、憂鬱の罪がアスカの肩を叩いていた。逃げ出そうとする彼女の肩を強く抱き彼は囁く。

「…ここは君の心。…かなり”憂鬱”な気持ちだから俺の領域フィールドに入れたんだ。…今は俺の仲間の様子も気掛かりだから、早く術を唱えようか。」

「離して!!!ここから!!離して!!!」

暴れ出すアスカの耳にチオロサアドは冷酷な、とてつもなく冷たく凍えるような声で吐き出した。

「…”お前の気持ちは届かない。届かない限り…お前は、そいつの前で死ねる。”…さぁ。もういいや。じゃあね。」

彼女から離れ、また消えてしまう憂鬱の罪に彼女は、アスカは追い掛けようとするもの、今度は口から何かが吐き出されてしまった。何かと思い、口から手を離して見てみれば…。

「…血?ゴッホッ!!なん…で?」

そして彼女は心の中の意識を手放した。アスカは彼の言葉を聞いてしまった…呪いの言葉を聞いてしまったのが、サラの前で起こってしまったのである。…現実となって。


ライグンの冷徹な言葉にリィナはなぜか身体が震えた。それは自分が枢要の罪に利用されるからか?ライグンの餌食にされるからか?…いや違う。それだけではない。

…志郎との契約コントラクトを解消をしなくちゃいけないのか?…私をただのモノ、書物として見ない…見られないでいるこいつ志郎…と。…私の存在を初めて認めてくれた、人間を?

「あ~!!もうじれったいよ~!!分かった!最初に僕から話すからさ~!それでいいでしょ?…こいつなんて、僕の能力の前じゃ何にもできないし?」

言葉に出来ないでいるリィナに痺れを切らしたのか、ライグンは自らの能力をリィナに話し始める。それを聞いたリィナは自分の中にある録音機能とメモ機能を起動させて話を伺った。

「僕が司る”暴食”は”全ての攻撃を文字化して自分の力として宿す”能力なんだよ。…さっき、リィナの攻撃がもろに当たったでしょ?…あれは逆に僕にとっては好機だったんだよね~。何せできるんだから。…こんな風に、君と分かり合おうとしているバカな奴のを奪えるくらいに…ね?」

「…じゃあ、ライグン。もう1つ聞きたい。…お前たちは突然現れたな?……どうやってこの結界から入って来た?…それに、なんであの”鏡”からこちらへ来たんだ??」

「それは…、いや。これ以上は喋りすぎたね。…じゃあリィナ。約束通り、そこで死にかけているそいつとの契約を解消して?」

リィナの問い掛けにライグンは答えようとしたものの、その前にリィナと豊の契約破棄を促すのだ。だがリィナだって馬鹿ではない。…なぜならば、ライグンの言葉には1つ抜けている、リィナがやるとは思わないでいる行為を言っていないのだから。リィナだって好き好んでやりたいなんて思わない。

…これが最後の志郎との契約コントラクトだとしても、私はお前を…

だからリィナはライグンに言われた通り豊の傍にそっと歩み寄り契約解消の儀式…を行う前に優しく囁いた。…その包み込むような温かい声は、気絶している豊の脳内を支配してしまうくらいに。

「我思う故に我あり。…反魂の力よ。…かの者に癒しと力を、与え給え。」

「!!??うっそでしょ?リィナが…本来の力を…?」

…使った?人間嫌いのリィナが?

ライグンが驚きで言い終わる前に豊とリィナは白銀に包み込まれて羅列された宙を舞う文字と中で豊は徐々に回復していく。
しかしリィナは熱く燃えるような激しい痛みを耐えるはず…だったのに、そこには意識下の豊が傍に居たのだ。驚いてとっさに声を上げようとすれば彼は彼女の手を握り決意を固める。

「リィナが苦しんでいる姿を見たくない。…でも俺のせいだから、俺のせいでリィナが苦しむのなら…一緒に背負わせてよ?…君の苦しみを。」

優しい声色で語りかける豊にリィナは自分の中に人間と同じ”心”があったらなと願った。心があったら豊がなぜこんな馬鹿なことをしでかしたのかを理解できたのかもしれないのに。…でも、それでも。自分を想ってくれた行動だと分かりつつ、彼のお人よしすぎる性格を軽く罵るのだ。

「…ばかだな…。お…、前は…。でも、でも。」

…ありがとう。

1人と1冊は赤く燃える炎の中で微笑んだ。


状況が呑み込めないでいるライグンではあったが反魂の書リィナによって救われた豊は彼をまっすぐに見つめる。

「さぁっ!勝負はこれからだ!ライグン!!」

燃える豪火の中で苦しみを分かち合い、結束を固めた1人と1冊は枢要の罪に立ち向かう。そして、リィナの力で回復をした豊はデータフォースを手に取り、呆気に取られているライグンに向けて宣言するのであった。
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