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17.傲慢という”正義”。

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豊の滅茶苦茶な理論に呆れつつあるリィナではあるが彼が彼女の為を思ってのことであると分かり、仕方なくではあるが、新たな戦術を考えようと話し合いをするのだが…状況は徐々に悪化していく一方だ。

「だから!リィナをなるべく傷つけたくないんだよ!!!リィナの分からず屋!!」

「お前こそ!考えが甘ちゃんなんだよ!この人たらし!いや!モノたらし!!!」

”図書室ではお静かに!”という札も立てられているにも関わらず1人と1冊の論争は激しさを増していく。どんどんとヒートアップを見せていく壺中の天から来た新米焚書士である志郎 豊。そして、問題書、もとい問題児と呼ばれている反魂の書ことリィナを注意しようとする者は居ない。皆、異質コンビに関わりたくないのだろう。だから周囲の焚書士や書物は彼らから離れるように外へと出た。

「リィナは自分のことが分かっていないんだよ!無理してるくせに!俺はそれが嫌なの!」

契約コントラクトした以上!無理も何も、相棒パートナーに力を貸すのが書物の役目だ!」

「それが嫌なんだよ!!!俺は君と対等でいたいんだ!」

「うるさい!この馬鹿キザ野郎!」

外からでも聞こえるような大声に1冊の書物が人間の姿で現れた。ブーツの音を鳴らせてから彼らに近づき1人と1冊の頭を殴りつけたのである。音が聞こえ、しかも、たんこぶでも出来ていそうで豊は自分の頭を撫でて殴りつけた人物に文句を言おうとすれば…ルークの相棒パートナーであるレジーナが剣幕を立てて怒鳴りつけていた。

「あんたたち!うるさいわよっ!!喧嘩なら外でやって!!分かった?」

「…はい。ごめんなさい。」

「…ごめんなさい。反省します。」

叱責されてしまい豊とリィナは素直に謝罪をして外へと出た。…なぜかレジーナも付いてきて。さすがに怒られて反省はしているが付いてくることに不審を抱いた豊は後ろにいる彼女に問い掛ける。

「ねぇ?なんで俺たちについてくるんだ?…ルークさんが、司書官が監視しろって?」

「まぁそれもあるわね~。あんたたちは問題児なんだから。…でも、他にもある。」

「……他って?」

するとレジーナは立ち止まったので豊とリィナは進むのを辞める。何事かと思っている1人と1冊ではあるがレジーナは言葉を紡いだ。

「あんたたちの戦闘形態についてよ。…これ以上、不安定な状態で戦うのなら…豊君。君、リィナが居なかったら死んでたわよ?」

さらりと怖い言葉を発するレジーナに豊は息を呑む。しかし彼女はその真剣な表情を崩すことは無い。本当にリィナが反魂の力を使わなかった死んでいたのだと自覚をするしかない状況に豊は目を伏せる。現実から目を背ける豊にレジーナは言葉を続ける。

「不安定な状態であってもリィナを制御出来たんだもの。その形態を維持した方が良いとルークも言ってる。…でも君が。豊君がそれを嫌がっている。…それは自分の正義に反するから…かしら?でも、生きることに正義も何も無いと思うのだけれど?」

「…それは。」

何も言葉を発せず反論できない自分が居た。レジーナの言う通りだからだ。自分が居た世界よりも物騒で死にかけたこともあるくせに自身の正義を貫こうとする。…なんて傲慢で愚かなんだと。だがそれでも豊は言葉は発さずともレジーナの目を見た。真っすぐで頑固で黒い瞳は他人の意見に染まることのない…ルークが嫌いそうな、苦手そうな瞳をしていると彼女は思う。…だから彼女は、レジーナは勝負を挑むのだ。

「私と勝負して。…あなたのその正義が勝って私に一回でも攻撃が当たれば…一緒に新しい戦闘形態を考えるわ。…ちなみに、リィナと協力して、私を倒しても良い。」

「…じゃあ、一回も攻撃が当たらなかったら、どうするんだ?」

するとレジーナは自分の相棒あいぼうかつ司書官に似た、まるで容赦のない言葉を吐きだす。

「死んでもらう。…リィナの力を借りなければの話…だけれど?…どうする?」

酷く冷たい声に豊は恐れおののくものの、それでも自分の正義を貫きたい、傲慢な人間であった。黙っているリィナは彼らの間を割って仲裁しようと試みるも、自分の相棒パートナーである豊に笑いかけられる。

「リィナ。ごめんね?…俺は傲慢な人間だから。君に迷惑を掛けてしまうのも承知だけれど…それでも、君との関係性を認めて欲しいから。…お願い。」

…力を貸して。

切実な豊の願いにリィナはゆっくりと頷き承諾をした。それはなぜなのか?それはリィナも自分自身に尋ねてみたいものであった。
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