17 / 49
17.傲慢という”正義”。
しおりを挟む
豊の滅茶苦茶な理論に呆れつつあるリィナではあるが彼が彼女の為を思ってのことであると分かり、仕方なくではあるが、新たな戦術を考えようと話し合いをするのだが…状況は徐々に悪化していく一方だ。
「だから!リィナをなるべく傷つけたくないんだよ!!!リィナの分からず屋!!」
「お前こそ!考えが甘ちゃんなんだよ!この人たらし!いや!モノたらし!!!」
”図書室ではお静かに!”という札も立てられているにも関わらず1人と1冊の論争は激しさを増していく。どんどんとヒートアップを見せていく壺中の天から来た新米焚書士である志郎 豊。そして、問題書、もとい問題児と呼ばれている反魂の書ことリィナを注意しようとする者は居ない。皆、異質コンビに関わりたくないのだろう。だから周囲の焚書士や書物は彼らから離れるように外へと出た。
「リィナは自分のことが分かっていないんだよ!無理してるくせに!俺はそれが嫌なの!」
「契約した以上!無理も何も、相棒に力を貸すのが書物の役目だ!」
「それが嫌なんだよ!!!俺は君と対等でいたいんだ!」
「うるさい!この馬鹿キザ野郎!」
外からでも聞こえるような大声に1冊の書物が人間の姿で現れた。ブーツの音を鳴らせてから彼らに近づき1人と1冊の頭を殴りつけたのである。音が聞こえ、しかも、たんこぶでも出来ていそうで豊は自分の頭を撫でて殴りつけた人物に文句を言おうとすれば…ルークの相棒であるレジーナが剣幕を立てて怒鳴りつけていた。
「あんたたち!うるさいわよっ!!喧嘩なら外でやって!!分かった?」
「…はい。ごめんなさい。」
「…ごめんなさい。反省します。」
叱責されてしまい豊とリィナは素直に謝罪をして外へと出た。…なぜかレジーナも付いてきて。さすがに怒られて反省はしているが付いてくることに不審を抱いた豊は後ろにいる彼女に問い掛ける。
「ねぇ?なんで俺たちについてくるんだ?…ルークさんが、司書官が監視しろって?」
「まぁそれもあるわね~。あんたたちは問題児なんだから。…でも、他にもある。」
「……他って?」
するとレジーナは立ち止まったので豊とリィナは進むのを辞める。何事かと思っている1人と1冊ではあるがレジーナは言葉を紡いだ。
「あんたたちの戦闘形態についてよ。…これ以上、不安定な状態で戦うのなら…豊君。君、リィナが居なかったら死んでたわよ?」
さらりと怖い言葉を発するレジーナに豊は息を呑む。しかし彼女はその真剣な表情を崩すことは無い。本当にリィナが反魂の力を使わなかった死んでいたのだと自覚をするしかない状況に豊は目を伏せる。現実から目を背ける豊にレジーナは言葉を続ける。
「不安定な状態であってもリィナを制御出来たんだもの。その形態を維持した方が良いとルークも言ってる。…でも君が。豊君がそれを嫌がっている。…それは自分の正義に反するから…かしら?でも、生きることに正義も何も無いと思うのだけれど?」
「…それは。」
何も言葉を発せず反論できない自分が居た。レジーナの言う通りだからだ。自分が居た世界よりも物騒で死にかけたこともあるくせに自身の正義を貫こうとする。…なんて傲慢で愚かなんだと。だがそれでも豊は言葉は発さずともレジーナの目を見た。真っすぐで頑固で黒い瞳は他人の意見に染まることのない…ルークが嫌いそうな、苦手そうな瞳をしていると彼女は思う。…だから彼女は、レジーナは勝負を挑むのだ。
「私と勝負して。…あなたのその正義が勝って私に一回でも攻撃が当たれば…一緒に新しい戦闘形態を考えるわ。…ちなみに、リィナと協力して、私を倒しても良い。」
「…じゃあ、一回も攻撃が当たらなかったら、どうするんだ?」
するとレジーナは自分の相棒かつ司書官に似た、まるで容赦のない言葉を吐きだす。
「死んでもらう。…リィナの力を借りなければの話…だけれど?…どうする?」
酷く冷たい声に豊は恐れ慄くものの、それでも自分の正義を貫きたい、傲慢な人間であった。黙っているリィナは彼らの間を割って仲裁しようと試みるも、自分の相棒である豊に笑いかけられる。
「リィナ。ごめんね?…俺は傲慢な人間だから。君に迷惑を掛けてしまうのも承知だけれど…それでも、君との関係性を認めて欲しいから。…お願い。」
…力を貸して。
切実な豊の願いにリィナはゆっくりと頷き承諾をした。それはなぜなのか?それはリィナも自分自身に尋ねてみたいものであった。
「だから!リィナをなるべく傷つけたくないんだよ!!!リィナの分からず屋!!」
「お前こそ!考えが甘ちゃんなんだよ!この人たらし!いや!モノたらし!!!」
”図書室ではお静かに!”という札も立てられているにも関わらず1人と1冊の論争は激しさを増していく。どんどんとヒートアップを見せていく壺中の天から来た新米焚書士である志郎 豊。そして、問題書、もとい問題児と呼ばれている反魂の書ことリィナを注意しようとする者は居ない。皆、異質コンビに関わりたくないのだろう。だから周囲の焚書士や書物は彼らから離れるように外へと出た。
「リィナは自分のことが分かっていないんだよ!無理してるくせに!俺はそれが嫌なの!」
「契約した以上!無理も何も、相棒に力を貸すのが書物の役目だ!」
「それが嫌なんだよ!!!俺は君と対等でいたいんだ!」
「うるさい!この馬鹿キザ野郎!」
外からでも聞こえるような大声に1冊の書物が人間の姿で現れた。ブーツの音を鳴らせてから彼らに近づき1人と1冊の頭を殴りつけたのである。音が聞こえ、しかも、たんこぶでも出来ていそうで豊は自分の頭を撫でて殴りつけた人物に文句を言おうとすれば…ルークの相棒であるレジーナが剣幕を立てて怒鳴りつけていた。
「あんたたち!うるさいわよっ!!喧嘩なら外でやって!!分かった?」
「…はい。ごめんなさい。」
「…ごめんなさい。反省します。」
叱責されてしまい豊とリィナは素直に謝罪をして外へと出た。…なぜかレジーナも付いてきて。さすがに怒られて反省はしているが付いてくることに不審を抱いた豊は後ろにいる彼女に問い掛ける。
「ねぇ?なんで俺たちについてくるんだ?…ルークさんが、司書官が監視しろって?」
「まぁそれもあるわね~。あんたたちは問題児なんだから。…でも、他にもある。」
「……他って?」
するとレジーナは立ち止まったので豊とリィナは進むのを辞める。何事かと思っている1人と1冊ではあるがレジーナは言葉を紡いだ。
「あんたたちの戦闘形態についてよ。…これ以上、不安定な状態で戦うのなら…豊君。君、リィナが居なかったら死んでたわよ?」
さらりと怖い言葉を発するレジーナに豊は息を呑む。しかし彼女はその真剣な表情を崩すことは無い。本当にリィナが反魂の力を使わなかった死んでいたのだと自覚をするしかない状況に豊は目を伏せる。現実から目を背ける豊にレジーナは言葉を続ける。
「不安定な状態であってもリィナを制御出来たんだもの。その形態を維持した方が良いとルークも言ってる。…でも君が。豊君がそれを嫌がっている。…それは自分の正義に反するから…かしら?でも、生きることに正義も何も無いと思うのだけれど?」
「…それは。」
何も言葉を発せず反論できない自分が居た。レジーナの言う通りだからだ。自分が居た世界よりも物騒で死にかけたこともあるくせに自身の正義を貫こうとする。…なんて傲慢で愚かなんだと。だがそれでも豊は言葉は発さずともレジーナの目を見た。真っすぐで頑固で黒い瞳は他人の意見に染まることのない…ルークが嫌いそうな、苦手そうな瞳をしていると彼女は思う。…だから彼女は、レジーナは勝負を挑むのだ。
「私と勝負して。…あなたのその正義が勝って私に一回でも攻撃が当たれば…一緒に新しい戦闘形態を考えるわ。…ちなみに、リィナと協力して、私を倒しても良い。」
「…じゃあ、一回も攻撃が当たらなかったら、どうするんだ?」
するとレジーナは自分の相棒かつ司書官に似た、まるで容赦のない言葉を吐きだす。
「死んでもらう。…リィナの力を借りなければの話…だけれど?…どうする?」
酷く冷たい声に豊は恐れ慄くものの、それでも自分の正義を貫きたい、傲慢な人間であった。黙っているリィナは彼らの間を割って仲裁しようと試みるも、自分の相棒である豊に笑いかけられる。
「リィナ。ごめんね?…俺は傲慢な人間だから。君に迷惑を掛けてしまうのも承知だけれど…それでも、君との関係性を認めて欲しいから。…お願い。」
…力を貸して。
切実な豊の願いにリィナはゆっくりと頷き承諾をした。それはなぜなのか?それはリィナも自分自身に尋ねてみたいものであった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!
SoftCareer
ファンタジー
幼なじみの彼女の母親と二人っきりで、期せずして異世界に飛ばされてしまった主人公が、
帰還の方法を模索しながら、その母親や異世界の人達との絆を深めていくというストーリーです。
性的描写のガイドラインに抵触してカクヨムから、R-18のミッドナイトノベルズに引っ越して、
お陰様で好評をいただきましたので、こちらにもお世話になれればとやって参りました。
(こちらとミッドナイトノベルズでの同時掲載です)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる