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13.俺の正義と決意。
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リィナとの契約に成功した豊ではあるが彼には大きな悩みを抱えていた。それは豊にとって、彼にとってはとても大きな課題である。だから彼は苦手な分類の人間であり机に向かって書類に目を通している上司の元へ行き突然頭を下げに来たのだ。何事かと思う上司こと…ルークではあったが豊は意を決したような顔を見せた。
「お願いします!…俺に、魔法でもなんでもいいから!武術でもいいから!…これ以上、リィナを傷付かせないで下さい!」
豊の突拍子もない発言に彼は驚いてから深い深い溜息を長く吐いた。やはりそういう風にきたかと。妙にキザッたらしくて甘っちょろい彼の発言にルークは眉間に皺を寄せるのだ。
「はぁ~~~…。君、いや?志郎君。本気で言ってんの?それ?」
確認するような視線を向けるルークに豊は視線を逸らさずに真っすぐな目を向ける。その大きな漆黒の瞳からは決意が溢れ出されていた。
「俺は本気です。もちろん。そりゃあ、新米焚書士しての雑用はするしリィナと契約解除をするつもりもありません!…でもこれ以上!リィナの能力を使えば…」
「……君さ?筋金入りのおバカさんって言われない?特に……自分のこと以外になると。」
「えっ…?」
何を言っているんだというような表情を見せる豊にルークは再び大きな溜息をした。
「『えっ…?』じゃないよ。確かにリィナは…反魂の書は特別な存在だから君にとっては人間にしか見えないだろうけどさ~?彼女は正真正銘の”書物”なんだよ?しかも君は、壺中の天から来た人間…だから特別な人間なんだよ。そんな2人が枢要の罪と戦ってみせれば、ここで焚書士として働いている皆の士気も上がると思うんだけど?」
つらつらと述べて言ってくるルークに豊は戸惑いを見せるものの自分の意志は固いようだ。
「それは誤解ですよ!確かに俺は…その、日本!というか、その、壺中の天って場所からこの世界に来たけれど!それとリィナとの関係性には語弊があるというか!だから」
「いや。無いね。…それは無い。君はね?本当に特別な人間なんだよ。」
有無を言わせない、ただ、ひりついたルークの言葉に豊は言葉を詰まらせる。そんな彼にルークは語るようにこれまでの経緯を…リィナの経緯を話し始める。
「彼女を保護してから色んな人間が彼女と契約をさせようと試みたよ。…でも彼女は誰1人もそれを拒み続けた。仮契約をしてもすぐに破棄されて、人間を拒んでは孤独を望むように、彼女はずっと牢屋で1人、いや、1冊の本として管理されていたんだよ。」
「そんな…。でもそれは!…とても失礼な言葉を言いますが、あなたにだって責任はあるのではないんでしょうか?…リィナを焼こうと!焼却しようとするから…。」
「確かに僕も悪いね。…でもね?それとこれとは別なんだよ。」
するとルークは懐からジッポライターを取り出しては軽く火を付けた。ゆらゆらと小さく揺らめく炎を前にして2人は対峙する。緊張に押し負けそうで生唾を飲む豊にルークはライターの火を閉じてからこの世界の理を導く。
「この世界の正義は書物と仲良くするんじゃない。…力を持ち、そして人間に危害を加える書物を排除すべきというのがこの世界の理だったんだよ。…でもそれじゃあ力を持った書物と永遠に分かつことは出来ない。…だから世界は少しずつ変化していったんだ。……書物と分かち合おうとしてね。」
「……。」
「君にとっては書物を焼くという行為は拷問か何かのように思うだろうけれど、それは違うよ。…言ったでしょ?焼かれている間の書物の都合の悪い部分だけを取り除くだけ。それに、焼却されている間の記憶は書物から除かれているから、書物は安心して僕たちに協力してくれる。…結構良い関係を取っているとは思わない?」
「それは違うと思います。」
雄弁に語っていたルークの和らいでいた顔が硬直する。目つきも眼鏡越しだがさらに強くなっていた。だがそれでも豊は言いたかったのだ。…その世界の理というものに対してを。
「その世界の理は、とても冷たくて、書物のことなんて何も考えていないと俺は思います。書物の嫌な部分だけ取り除いて、都合の良い所だけ残す…。そんなの、書物が人間にとっての奴隷にされているだけじゃないですか。」
「奴隷ね~?君も上司に対してもだけど書物に対してもかなり酷い言葉を使うね?」
「違います。俺は、自分がそう思った言葉をあなたに伝えているだけです。」
「…ふぅーん?」
冷たい空気が、冷気が流れる空間にて2人は視線を違うことはない。ただ先に折れたのは新米焚書士である豊の方であった。彼はもう一度ルークに深い礼をしてからその場を離れる。
「俺は、俺自身の正義を見つけます。たとえ焚書士としても、リィナを守れるような、そんな焚書士になります。…ご意見いただきありがとうございました。…ルーク司書官。それでは失礼しました。」
扉を開けてから再び一礼をする豊の姿を見届けてからルークは椅子に背中を預けるように深く座り込んで息を吐く。気難しいリィナの力を自覚は無いようだが制御は出来ている。…だがこんなにも扱いにくく面倒な人間だとは思いもよらないかった。…しかも仕舞には”正義”という甘っちょろい言葉で書物と仲良くしようとしている。その考えは昔の自分の思いを想起させるようで不覚にも年下相手に牙を向けてしまいそうになる。
ルークにとって書物と”仲良くする”、”対話をする”、”通じ合う”というのこと自体、当の昔に捨てていた。…自分の本名も、恩師であった存在も捨てられなかった代わりに自分に科した”ルーク”という悪魔の名と存在は自分の中にしまい込んでいた幼い自分を何とか出さぬように、自分の中に牢屋に閉じ込め、鍵をかけ、さらには扉で閉ざしたのにも関わらず…書物と対話することを望んでいる豊と話すだけでしまい込んでいた気持ちが溢れ出そうになった。
「…っ。ちょっと寝るか。…また悪夢を見そうになるけど。」
『ジェシー?…君は僕の大事な存在だ。だから。』
…僕を殺して?…
最愛の恩師をこの手で突き落とした腕の力は、なぜか羽のように軽いのにとてつもない重みを感じた。
「お願いします!…俺に、魔法でもなんでもいいから!武術でもいいから!…これ以上、リィナを傷付かせないで下さい!」
豊の突拍子もない発言に彼は驚いてから深い深い溜息を長く吐いた。やはりそういう風にきたかと。妙にキザッたらしくて甘っちょろい彼の発言にルークは眉間に皺を寄せるのだ。
「はぁ~~~…。君、いや?志郎君。本気で言ってんの?それ?」
確認するような視線を向けるルークに豊は視線を逸らさずに真っすぐな目を向ける。その大きな漆黒の瞳からは決意が溢れ出されていた。
「俺は本気です。もちろん。そりゃあ、新米焚書士しての雑用はするしリィナと契約解除をするつもりもありません!…でもこれ以上!リィナの能力を使えば…」
「……君さ?筋金入りのおバカさんって言われない?特に……自分のこと以外になると。」
「えっ…?」
何を言っているんだというような表情を見せる豊にルークは再び大きな溜息をした。
「『えっ…?』じゃないよ。確かにリィナは…反魂の書は特別な存在だから君にとっては人間にしか見えないだろうけどさ~?彼女は正真正銘の”書物”なんだよ?しかも君は、壺中の天から来た人間…だから特別な人間なんだよ。そんな2人が枢要の罪と戦ってみせれば、ここで焚書士として働いている皆の士気も上がると思うんだけど?」
つらつらと述べて言ってくるルークに豊は戸惑いを見せるものの自分の意志は固いようだ。
「それは誤解ですよ!確かに俺は…その、日本!というか、その、壺中の天って場所からこの世界に来たけれど!それとリィナとの関係性には語弊があるというか!だから」
「いや。無いね。…それは無い。君はね?本当に特別な人間なんだよ。」
有無を言わせない、ただ、ひりついたルークの言葉に豊は言葉を詰まらせる。そんな彼にルークは語るようにこれまでの経緯を…リィナの経緯を話し始める。
「彼女を保護してから色んな人間が彼女と契約をさせようと試みたよ。…でも彼女は誰1人もそれを拒み続けた。仮契約をしてもすぐに破棄されて、人間を拒んでは孤独を望むように、彼女はずっと牢屋で1人、いや、1冊の本として管理されていたんだよ。」
「そんな…。でもそれは!…とても失礼な言葉を言いますが、あなたにだって責任はあるのではないんでしょうか?…リィナを焼こうと!焼却しようとするから…。」
「確かに僕も悪いね。…でもね?それとこれとは別なんだよ。」
するとルークは懐からジッポライターを取り出しては軽く火を付けた。ゆらゆらと小さく揺らめく炎を前にして2人は対峙する。緊張に押し負けそうで生唾を飲む豊にルークはライターの火を閉じてからこの世界の理を導く。
「この世界の正義は書物と仲良くするんじゃない。…力を持ち、そして人間に危害を加える書物を排除すべきというのがこの世界の理だったんだよ。…でもそれじゃあ力を持った書物と永遠に分かつことは出来ない。…だから世界は少しずつ変化していったんだ。……書物と分かち合おうとしてね。」
「……。」
「君にとっては書物を焼くという行為は拷問か何かのように思うだろうけれど、それは違うよ。…言ったでしょ?焼かれている間の書物の都合の悪い部分だけを取り除くだけ。それに、焼却されている間の記憶は書物から除かれているから、書物は安心して僕たちに協力してくれる。…結構良い関係を取っているとは思わない?」
「それは違うと思います。」
雄弁に語っていたルークの和らいでいた顔が硬直する。目つきも眼鏡越しだがさらに強くなっていた。だがそれでも豊は言いたかったのだ。…その世界の理というものに対してを。
「その世界の理は、とても冷たくて、書物のことなんて何も考えていないと俺は思います。書物の嫌な部分だけ取り除いて、都合の良い所だけ残す…。そんなの、書物が人間にとっての奴隷にされているだけじゃないですか。」
「奴隷ね~?君も上司に対してもだけど書物に対してもかなり酷い言葉を使うね?」
「違います。俺は、自分がそう思った言葉をあなたに伝えているだけです。」
「…ふぅーん?」
冷たい空気が、冷気が流れる空間にて2人は視線を違うことはない。ただ先に折れたのは新米焚書士である豊の方であった。彼はもう一度ルークに深い礼をしてからその場を離れる。
「俺は、俺自身の正義を見つけます。たとえ焚書士としても、リィナを守れるような、そんな焚書士になります。…ご意見いただきありがとうございました。…ルーク司書官。それでは失礼しました。」
扉を開けてから再び一礼をする豊の姿を見届けてからルークは椅子に背中を預けるように深く座り込んで息を吐く。気難しいリィナの力を自覚は無いようだが制御は出来ている。…だがこんなにも扱いにくく面倒な人間だとは思いもよらないかった。…しかも仕舞には”正義”という甘っちょろい言葉で書物と仲良くしようとしている。その考えは昔の自分の思いを想起させるようで不覚にも年下相手に牙を向けてしまいそうになる。
ルークにとって書物と”仲良くする”、”対話をする”、”通じ合う”というのこと自体、当の昔に捨てていた。…自分の本名も、恩師であった存在も捨てられなかった代わりに自分に科した”ルーク”という悪魔の名と存在は自分の中にしまい込んでいた幼い自分を何とか出さぬように、自分の中に牢屋に閉じ込め、鍵をかけ、さらには扉で閉ざしたのにも関わらず…書物と対話することを望んでいる豊と話すだけでしまい込んでいた気持ちが溢れ出そうになった。
「…っ。ちょっと寝るか。…また悪夢を見そうになるけど。」
『ジェシー?…君は僕の大事な存在だ。だから。』
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