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8.この人は違う。

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サラの姿に豊は驚いて目を見張ってしまった。…なんとそこには巨大な銃がアスカの手元に装着されていたのだから。

「な…!なんですか?…それ?」

豊が驚きのあまり指を差してアスカに問い掛けるのだが、その前に鉄人形の1体がアスカに襲い掛かった。身体を逸らしてガトリング銃を向けて連射させれば鉄人形もろとも吹っ飛んで再起不動させてしまったのだ。呆気に取られてしまう豊とリィナにアスカは右手に装備されたサラガトリング銃を撫でてから言い放つ。

「サラの特性はその所有者の特技を暴露して生かす能力なの。…私はこれでも発明するのが好きだったから、特に機械類を弄るのが好きで。…まぁ、両親がそういうのには関わらせないような生き方をされたけれど…それでも内緒で本を読んでは嘘を吐いて実際に発明しては遊んでて。私は発明するのが好きだったから…それがサラの能力に繋がったみたい。」

「そうなんですか!それは凄いですね!!!…ちゃんと生かされてるんだ~!凄い!」

驚きと感嘆で拍手を送る豊と彼の真似をして拍手を送るリィナにアスカは少し恥ずかしそうにしながらも一言呟いた。

「…私である証明をしてくれたのもサラのおかげなんですけどね。」

「???アスカさん?」

頬を染めて言い放つアスカに豊が疑問を投げかければ彼女は我に返ってサラを人間の姿に戻した。そして礼を言ってから言葉を紡ぎ出そうとするアスカにサラはわざと頭を掻いてはけだるげな表情をするのだ。

「ふわぁ~あ。…まあこれもアスカ様のおかげだな。…俺はあんたに力は貸してやってるけど、ただの道具だし?」

「!!!そんな!?いつも言ってるけど、これはあなたが!…サラのおかげで」

「そんなことはねぇよ。…俺みたいな道具は替えが沢山ある。」

「…そんな。」

悲しげな顔をするアスカに豊はどうしてサラが酷いことを、彼女を傷つけるような言葉を並べて言うのかを問いただそうとするのだが、察したのか。彼は彼女を置いて空間の書から出てってしまった。

「待てよ!サラ!!!」

アスカの傷付いている姿を見て黙って見ることが出来ずにいた豊も空間の書から離れ、そしてリィナも彼に続いて出て行くのであった。

「…私は、私は。サラのことを…。」

1人残されたアスカは座り込んで涙を流すことしか出来ずにいたのであった。


1人淡々と歩いていくサラに豊は彼の肩を掴んで振り向かせた。

「おい!!お前!なんでアスカさんに酷いこと言ったんだよ!…相棒パートナーなんだろ?」

「…なんだ。お前か。…別に、礼はしたじゃねぇか。もっと人間様に媚びろってか?」

冷たく笑うサラに豊は訂正を込めた言い方で返す。

「違うよ!…お前も見ただろ?アスカさんがお前のこと頼りにしてくれてるって!お前の…サラのおかげで自分を偽ることを辞めたって!お前だってそのことを分かってて…」

「…人間に情を抱かせる道具は、書物は無いだろ?」

「えっ?」

突然のサラの問い掛けに豊が首を傾げればサラは何かを悟ったような表情を見せた。

「俺は書物で道具だ。道具だからこそ情を抱かされても応えることは出来ない。…それは違反になってしまうから…な。」

「???どういう意味で?」

何を言ってるのかが分かっていない豊に溜息を吐いてからサラはリィナと向き合った。

「そんなことよりもリィナ。お前、このキザ野郎と早く契約コントラクトしないとまた牢屋行だぞ?…もしかしたら、焼かれるかもしれない。」

「……分かってる。そんなの。」

視線を逸らすリィナにサラは再び欠伸をしてから2人に向けて言い去るのだ。

「だったらそのキザ野郎と契約コントラクトしてろ。まっ。俺には関係ねぇけどな。…じゃあお先に~。」

「キザ野郎って…ってお前どこに行って」

「お前には関係ねぇだろ?…じゃあな。キザ男。」

そのままどこかに行ってしまうサラに豊とリィナは首を傾げていた。サラの言っている意味もよく分からない。まるで自分に、いや、アスカにわざと嫌われるような行動をとっているような。…サラがまるで好意を抱かれていると分かっているものの自分の事を好きにならないで欲しいと言っているような感覚に豊は陥るのだ。

「サラも相変わらずね~。本当はアスカがサラのことを道具じゃなくて人として見られてるって分かってるのに。」

「!!?レジーナ!??なんでここに?」

突如として現れたレジーナに驚く豊とリィナではあるが彼女はにっこりと微笑んでから彼らに言い放つ。

「2人がいつ契約コントラクトをするのかを査定しに来てたの。ちょうど会ったからこっちも驚いたけどね~。」

「いや…こっちもだが。」

呆れている様子のリィナにレジーナは彼女の肩に両手を添えた。

「いいリィナ?サラみたいにあんなにそっけない態度は取らなくても相棒パートナーとはちょうどいい距離で接するのよ?…情なんか持たれたら違反なんだから。」

「違反?それってどういうこと?」

レジーナの言葉に豊が問い掛ければ彼女は深く溜息を吐いてから答えた。

「私たちはあくまでも道具なのよ?情なんか持たれたら意志があるって思われて焼かれるのよ。…そういう書物は私は何度もあるわ。」

「なんで?なんでそんな酷いことを…?」

するとレジーナは冷たく言い放った。

「書物に意志があると思うのはおかしいからよ。それだけのことよ。」

冷酷な言葉でリィナは少し悲しげな瞳を持つのだが反撃する人間がここに居た。

「そんなの…おかしいよ!書物にだって人間と同じ感情があったって!別に悪いことではないよ!…そんなの、その考えの方がおかしいよ!」

「…志郎。」

豊の言葉にリィナは1人、自身のあるはずの無い心が灯されたような心地になるのであった。
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