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5.焚書士としての才。
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空腹ではあったが疲れていたのだろう。リィナと共に眠る豊ではあるが、何かの音と振動で起き上がった。
-チィーン!!!ガラガラ!!!
「!??何だ…?今の音?リィナ…起きて?」
「…スゥ…スゥ…。」
「よく眠れるなぁ…?結構大きい音したのに…。」
眠っているリィナの代わりに起き上がれば扉から現れたのは昨日ルークと一緒に居た少女、レジーナであった。彼女は盆に乗っかっているパンやスープを豊に手渡した。そして乱れてもいないリィナを見てから豊に深い溜息を零す。なぜ溜息を零されたのか分からない豊ではあったが彼女は呆れている様子だ。
「はぁ~…。私よりかはレベルは下だけど?可愛い女の子が鎖に繋がれていて身動きが出来ないってのになん~にもしなかったの?豊君は?」
レジーナにそう問われた豊はパンに噛り付いてから考える。昨日はリィナと少しだけ打ち解けて話せたような気がしたのだが…何かを思いついた豊はパンを呑み込んでから思い浮かべて見上げる。
「そうだ…!鎖に繋がれているんなら…、」
「するんだったら?」
少ししたり顔をするレジーナに豊は決まったように言い放った。
「外させようと頑張るべきだった!」
-ガクッ!!!
大げさにこけるレジーナに豊は疑問符を浮かべて最後のパンの一口を噛んではスープで流して呑み込んだ。気取り屋ではあるがどこか抜けている豊の調子にレジーナは狂われそうになる。そんな彼女は言いたいことを豊へ全てぶつけようとした手前、調子を取り戻す為にコホンと一呼吸置いた。
「ま…まぁ?肉食系男子ってわけではなさそうだし?そこら辺のサル…いや、人間だったら、たとえ壺中の天から来たとしても簡単にこの子と…リィナと馬が合うわけないだろうし…?」
「???なんでそこで肉食系とかって?ていうか、サルってひどいな~。俺、サル顔なんて言われたこと無いし?」
「…鈍感なのね。まぁいいわ。…リィナ起きて!鎖も外すし服も支給されたわ!…起きなっ!さい!!」
レジーナは繋がれていたリィナの鎖を鍵で外して揺り動かす。相変わらず眠っているリィナに溜息を吐くレジーナではあるが彼女の肩に掛けられていた豊のブレザーを見てから何故か止まった。パンも食べてスープも飲み干し手を合わせていた豊は彼女が止まって動かないことに気が付く。
「??どうかした?また俺…気に障ったことした…かな?」
「……どうして?」
「????」
いつまでも眠り続けるリィナの髪をなでる彼女は言葉を紡ぐ。艶やかな銀色の髪を揺らして。
「なんで豊君は、この子に服を掛けたの?私たちは見た目は人間だけど本当の姿は書物。この子は特別だけど、私たちは焼かれてもがくたびに嫌なことや辛いことも忘れられる反面…感情というものが使用者によって作られる。…いわば傀儡よね。心を持たない…ね。」
「…それが何か関係あるの?俺はただ、リィナの傷跡が見ていられなかっただけ。それは思って行動してはいけないこと?」
「…そう。あんたにはリィナが人間に見れたのね。…羨ましい。」
「えっ?」
悲しげな目をしたレジーナではあるがその途中でリィナが起きたようだ。呑気に伸びをするリィナは彼女の姿を見て不思議そうな顔をする。
「レジーナ?なんか…珍しい顔、してる?」
「べっ!別に!そんなことないわよ!…さっ!豊君はエレベーターの方見てて!この子を着替えさせるから。」
「あっ…うん。」
少し顔を赤くしてそっぽを向いた豊にレジーナはにやりと笑って冗談を言う。
「…別に書物だから見ても良いとは思うけど?ねぇ?リィナ?」
「???まぁ。別に。」
「見ないから!平気です!!!」
恥ずかしそうな顔をして頑なに見ようとしない豊をレジーナは笑っていた。
エレベーターに乗って図書館へと出たかと思えばそこに広がるのは雄大な野原であった。驚く豊と対照的に顔を塞ぎこむリィナであったが彼らをこの場所に連れてきたレジーナは説明をする。
「これは本によって作られた世界よ。…”空間の書”を使ったの。」
「へぇ~!本でこんなこと出来るなんて…すごい!」
驚いて目を見張る豊ではあるが先ほどから顔色を悪くしているリィナは彼の袖を引っ張る。何事かと振り返る豊は彼女の顔色が優れていないことに驚いた。
「どうしたの!??顔、真っ青じゃん!…リィナ、平気か?」
心配をする豊にリィナは小さく呟く。
「…またこの場所に来てしまった。……焼かれる。」
「焼か…れる…?ちょっと待ってよ?ねぇレジーナ?どういうこと?」
「どういうことって、試すのよ?…豊君は焚書士としての才があるかどうかを。」
するとレジーナは空間の書によって作られて浮かんでいる大きなシャボン玉に乗っかりある程度の高さまで行く。何も分かっていない豊は疑問を浮かべるが、この状況を何度も経験しているリィナは怯えている様子だ。なんとか彼女を落ち着かせようと試みる豊だが…その時、巨大な石像がこちらに向かっているのを発見したのだ。状況は把握しきれていないが恐怖を感じた豊はリィナを連れて走り出す。そして彼女に尋ねた。
「!??何あれ!…あいつが君を焼こうとするの?」
「……違う。あいつは、あの石像は志郎を殺そうとしている。…お前が私と契約しない限り…あいつはお前を殺しに来る。」
「そ…そんな!?」
彼女の言葉に戦慄を覚える豊はであるがその前に今はこの状況を打破しなければと息を切らして走ることしか出来ずにいた。
「さぁ~てどうする?志郎君?リィナと契約出来るかな?」
空間の外に居るルークは逃げることしか出来ないでいる2人の様子を伺うのであった。
-チィーン!!!ガラガラ!!!
「!??何だ…?今の音?リィナ…起きて?」
「…スゥ…スゥ…。」
「よく眠れるなぁ…?結構大きい音したのに…。」
眠っているリィナの代わりに起き上がれば扉から現れたのは昨日ルークと一緒に居た少女、レジーナであった。彼女は盆に乗っかっているパンやスープを豊に手渡した。そして乱れてもいないリィナを見てから豊に深い溜息を零す。なぜ溜息を零されたのか分からない豊ではあったが彼女は呆れている様子だ。
「はぁ~…。私よりかはレベルは下だけど?可愛い女の子が鎖に繋がれていて身動きが出来ないってのになん~にもしなかったの?豊君は?」
レジーナにそう問われた豊はパンに噛り付いてから考える。昨日はリィナと少しだけ打ち解けて話せたような気がしたのだが…何かを思いついた豊はパンを呑み込んでから思い浮かべて見上げる。
「そうだ…!鎖に繋がれているんなら…、」
「するんだったら?」
少ししたり顔をするレジーナに豊は決まったように言い放った。
「外させようと頑張るべきだった!」
-ガクッ!!!
大げさにこけるレジーナに豊は疑問符を浮かべて最後のパンの一口を噛んではスープで流して呑み込んだ。気取り屋ではあるがどこか抜けている豊の調子にレジーナは狂われそうになる。そんな彼女は言いたいことを豊へ全てぶつけようとした手前、調子を取り戻す為にコホンと一呼吸置いた。
「ま…まぁ?肉食系男子ってわけではなさそうだし?そこら辺のサル…いや、人間だったら、たとえ壺中の天から来たとしても簡単にこの子と…リィナと馬が合うわけないだろうし…?」
「???なんでそこで肉食系とかって?ていうか、サルってひどいな~。俺、サル顔なんて言われたこと無いし?」
「…鈍感なのね。まぁいいわ。…リィナ起きて!鎖も外すし服も支給されたわ!…起きなっ!さい!!」
レジーナは繋がれていたリィナの鎖を鍵で外して揺り動かす。相変わらず眠っているリィナに溜息を吐くレジーナではあるが彼女の肩に掛けられていた豊のブレザーを見てから何故か止まった。パンも食べてスープも飲み干し手を合わせていた豊は彼女が止まって動かないことに気が付く。
「??どうかした?また俺…気に障ったことした…かな?」
「……どうして?」
「????」
いつまでも眠り続けるリィナの髪をなでる彼女は言葉を紡ぐ。艶やかな銀色の髪を揺らして。
「なんで豊君は、この子に服を掛けたの?私たちは見た目は人間だけど本当の姿は書物。この子は特別だけど、私たちは焼かれてもがくたびに嫌なことや辛いことも忘れられる反面…感情というものが使用者によって作られる。…いわば傀儡よね。心を持たない…ね。」
「…それが何か関係あるの?俺はただ、リィナの傷跡が見ていられなかっただけ。それは思って行動してはいけないこと?」
「…そう。あんたにはリィナが人間に見れたのね。…羨ましい。」
「えっ?」
悲しげな目をしたレジーナではあるがその途中でリィナが起きたようだ。呑気に伸びをするリィナは彼女の姿を見て不思議そうな顔をする。
「レジーナ?なんか…珍しい顔、してる?」
「べっ!別に!そんなことないわよ!…さっ!豊君はエレベーターの方見てて!この子を着替えさせるから。」
「あっ…うん。」
少し顔を赤くしてそっぽを向いた豊にレジーナはにやりと笑って冗談を言う。
「…別に書物だから見ても良いとは思うけど?ねぇ?リィナ?」
「???まぁ。別に。」
「見ないから!平気です!!!」
恥ずかしそうな顔をして頑なに見ようとしない豊をレジーナは笑っていた。
エレベーターに乗って図書館へと出たかと思えばそこに広がるのは雄大な野原であった。驚く豊と対照的に顔を塞ぎこむリィナであったが彼らをこの場所に連れてきたレジーナは説明をする。
「これは本によって作られた世界よ。…”空間の書”を使ったの。」
「へぇ~!本でこんなこと出来るなんて…すごい!」
驚いて目を見張る豊ではあるが先ほどから顔色を悪くしているリィナは彼の袖を引っ張る。何事かと振り返る豊は彼女の顔色が優れていないことに驚いた。
「どうしたの!??顔、真っ青じゃん!…リィナ、平気か?」
心配をする豊にリィナは小さく呟く。
「…またこの場所に来てしまった。……焼かれる。」
「焼か…れる…?ちょっと待ってよ?ねぇレジーナ?どういうこと?」
「どういうことって、試すのよ?…豊君は焚書士としての才があるかどうかを。」
するとレジーナは空間の書によって作られて浮かんでいる大きなシャボン玉に乗っかりある程度の高さまで行く。何も分かっていない豊は疑問を浮かべるが、この状況を何度も経験しているリィナは怯えている様子だ。なんとか彼女を落ち着かせようと試みる豊だが…その時、巨大な石像がこちらに向かっているのを発見したのだ。状況は把握しきれていないが恐怖を感じた豊はリィナを連れて走り出す。そして彼女に尋ねた。
「!??何あれ!…あいつが君を焼こうとするの?」
「……違う。あいつは、あの石像は志郎を殺そうとしている。…お前が私と契約しない限り…あいつはお前を殺しに来る。」
「そ…そんな!?」
彼女の言葉に戦慄を覚える豊はであるがその前に今はこの状況を打破しなければと息を切らして走ることしか出来ずにいた。
「さぁ~てどうする?志郎君?リィナと契約出来るかな?」
空間の外に居るルークは逃げることしか出来ないでいる2人の様子を伺うのであった。
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