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3.反魂の書を庇う。

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「…お前も嫌いだ!大嫌いだ!!」

「…えっ?どうし…て?」

突然の言葉に豊は分からないでいるのだが傷だらけの彼女の姿を見てそんなことなど気にしている場合ではなくなった。

「とりあえず俺の上着貸すから、君はじっとして」

ーバチンっ!!!!

「来るな!!!!」

「!???なん…で?」

上着を貸そうと駆け寄ったのにも関わらず繋がれていない左手で豊は彼女に…リィナに激しく払い除けられしまった。でも豊には感じた。この子は何かに怯えている。怯えているからこそ払い除けられたのではないか…と。なぜこのように思ったのかは分からない。でも豊にとっては彼女が人間に激しい恐怖感を抱いていると感じたのである。

「ちょっとリィナ!あんた大人しくしないとまた焼かれて」

「レジーナ。君は要らないことを言わなくて良い。…志郎君もごめんね~。ちょっと時間くれない?」

「あぁ…。はい。大丈夫です。」
ルークの言葉に豊はリィナから離れると彼は懐からとある物を取り出した。薄暗くて見えないが古風なジッポライターのように見える。なぜライターを取り出したのかが分からないでいた豊ではあるが、先ほどのリィナの言葉で思い出し、そして頭を過らせたのである。

「やめろ!!!その子に火を見せるな!!!」

再びリィナの前に飛び込んで火を見せつけようとするルークに豊は彼の前に立ちはだかる。驚いて何も言えないでいるリィナと彼女を守ろうとする豊にルークは首を傾げている様子だ。だから彼は問いかけるのだ。

「…どうして君が庇うんだい?この子は君を拒絶したのに?」

リィナに火を見せびらかそうとするルークに豊はそれでも彼女の前から逃げずにいる。そんな彼にルークは怯えているリィナににこやかに笑っていた。

「この子はね、君の相棒パートナーとなる人なんだ。…壺中の天から来た特別な人間なんだよ。…そう、何度も焼かれてもし死ぬことの無い君…反魂の書リィナと同じ特別な人間さ。…それでも君は僕に歯向かいたいの?…志郎君がこんなに君を庇ってくれてるのに?…君のことを。」

ルークの言葉に対してリィナでさえも分からずにいた。…なぜこの人間は自分を庇うのかを。彼女は困惑をしたままルークに告げる。

「そ…それは。それは!この人間が」

「じゃあ悪いけど君にはまた焼かれてもらう。嫌な記憶だけ消してね。じゃあね。」

ルークはライターをリィナに、いや、彼女に壁を作るように庇っている豊ごと焼こうとしていた。その瞳は、冷酷な瞳は本気だというのが豊にさえ分かる。でもそれでも彼は彼女を、リィナから退けることは無かった。不思議な顔をするルークは豊に問い掛ける。

「ねぇ?志郎君?…あとでこの子反魂の書になんとかさせるけどさ~?君、本気?このまま君達焼いちゃうけど。…ここはね、そんなに酸素が薄くはないけど、僕が持ってるライターは特別なんだ。能力次第で君をジワジワと痛めつけることも、すぐに燃えカスにさせる程の炎にもなれる。…俺の優しさで後者を選んでもいいんだけど…焼かれたくはないでしょ?」

ルークの脅迫に豊は退けることをしない。ルークの脅迫が怖かったからかもしれない。恐れおののいているから逆に動けなかったからかもしれない。…それでも彼は、豊は自分よりもさらに怯えて泣くことさえ恐れている少女、反魂の書リィナを守ってやりたかった。それはもしかしたら”女の子を泣かせたくない。”それが彼のポリシーだったからかもしれない。

「焼きたいなら焼いてみろ。その代わり、俺だけを焼け。…だからこの子に、リィナに火を見せるな!!!」

「!!?どう…して?」

「ほぉ?なんでか知らないけど僕のブラックジョークが本当になりそうだね?…どうして君は焼かれるの?君だけを焼くの?…悪いのは僕たちに従わないこの子、リィナ反魂の書なんだよ?君はただの巻き添えに過ぎないのに?」

「女の子が泣いてるのに助けるのは当然だ。…それに、さっきからこの子を、リィナをモノ扱いして。…この子には感情がある!!!俺はそれを汲み取っただけだ!!!」

「ほぉ?感情?…この子は、いや。この子やレジーナは書物なんだよ?書物が具現化してたまたま人間の姿になったモノ。感情なんてあるわけがない。」

馬鹿馬鹿しいと言っているようなルークに豊は自分の考えを貫き通した。

「俺はあると信じる。…この世界で死にたくはないけど、俺は女の子1人助けられずにいたら、ただの恥さらしだ。恥ずかしい思いして生きる方がごめんだね。」

豊の考えに傍に居たレジーナは溜息を吐いていた。しかしルークは豊の言葉を聞いて真顔から再びにっこりと微笑んでから彼に駆け寄り…彼の腹部に拳を入れた。

-ゴッスッッッ!!

「ぐっはぁ!??」

倒れ込み腹部を抑える豊はルークに見下ろされている。彼はとてつもなくニコニコと笑いながら蹲っている豊に向けて言い放つ。

「君の戯言にはごめんだ。…でも面白かったからこれだけで勘弁してあげる。…レジーナ、行こう。志郎君はこの場所で泊まらせてあげよう。」

「あ…うん。」

レジーナは彼に駆け寄って場所を離れて2人はエレベーターに乗り込んでしまった。腹を抑えながら咳をする豊に助けられたリィナは嬉しいような、疑問を感じるような、そんな複雑な感情を抱いて彼を見つめることしか出来ずにいた。
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