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第39話 《恋人宣言》
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――チュッ……。
唇から離れたかと思えば、俺はどうしていいのか分からずに「え、あ、え……?!」とか言っては動揺をしてしまう。
でもそれは俺だけではない。豊橋先生は瞳をまんまるくしていているし間近で見ていた永礼さんは衝撃的すぎたものを見ていたような顔をしていたし。でも一瞬、声を抑えたかと思えば、震えた声で俺に熱を向ける蒼柳へ、なんとか紡ごうとしているようだ。
「え、あの……蒼柳くん。そいつ、男だよ?」
「うん、知っているよ」
「じゃあなんで……キスしたの? 蒼柳くんも男の子、でしょ? そんなチビデブ相手に――」
「永礼さん」
蒼柳が呼ぶと、永礼さんは名前を呼ばれたおかげで幸福感に満ち足りたような表情を見せるが、近すぎる距離にいる俺の頬に……軽くキスを落としたのだ。
――チュッ。
また甘いキスに俺は羞恥でいっぱいになりそうになるが、そんな俺や軽く悲鳴を上げた永礼さんを差し置いて、蒼柳は余裕げに微笑んだ。
「俺は利里さんが好きなの。俺と利里さんの邪魔をしないでくれない?」
普通の人から見ればひどい言葉だと思う。いや、実際にそうだ。
……でも、俺は逆だった。すごく嬉しかった。舞い上がりそうになった。
「……蒼柳、くん」
すると永礼さんは瞳に涙を溜め込んだかと思えば、……罵声を上げていたのである。
「蒼柳くんのバカ!!! ながれが2人はバカップルなの言ってやる! もう知らない!」
そして「うわ~ん!!!」と手で顔を覆って、泣き出しながら医務室からけたたましく退出してしまったのである。
――バタンッ!!! バタバタッ!!!
「……おい、あの子、すんごい音で走り去ったぞ?」
面倒な表情で俺と蒼柳を交互に見てきた豊橋先生ではあったが、先生に対しても蒼柳はどうしてだが敵対視するような目線で見つめてくる。さすが今まで黙っていた俺も、困惑のあまり話しかけてしまうのだ。
「あお、やなぎ? どうして、先生にも、永礼さんにも……あの……」
「キスですか? あぁ、だって――」
すると蒼柳は俺には笑顔を見せた。距離が近すぎて吐息も睫毛の長さもわかるぐらいだ。かなり恥ずかしくなって目を背けようとする俺の頬に触れた蒼柳は、まっすぐな瞳と言葉で俺に伝えるのだ。黒くて吸い込まれそうな瞳はまるで漆黒のダイヤのようで……。
「俺は利里さんが大好きで必要としているから。……それを阻む存在が居るのなら、俺は利里さんのために戦いたいからっすよ。まぁ、先生は違うっすけどね~」
そう言って温かく微笑む蒼柳の美形さに、俺は息を呑んでしまう。息を呑んで、なにもかも忘れそうになって……俺という存在を確立してくれる気がしてならない。
――俺もいつのまにか、蒼柳の存在が必要になっていたのだ。
「そ…そうなの? それ、信じて、いいの?」
また泣き出しそうになる。自分のような存在が必要とされるなんて思えなかったから。でも、そんな俺でも蒼柳は応えるようにまた顔を合わせて、唇を……。
――ガッツン!!!
「いたぁ!」
「痛ぇ!」
俺と蒼柳は「もういいかげんにしろ」という先生の拳を受けて、さらには2人とも
外に出されてしまった。
「のろける余裕があるのなら、さっさと授業を受けて……愛でもなんでも確かめてこい」
先生もニヒルに笑って俺たちは2人で授業に向かうのだ。
クラスに入った途端にひそひそと声が聞こえたが、蒼柳は俺が離しそうになった手を強く繋いで……「せんせい! 俺と利里さんは付き合いました~!」と宣言。
ホワイトボードに向かっていた先生はぽかんと唖然とし、女子たちは一瞬の間を置いて驚嘆して声を上げていたのである。
――その騒ぎのせいで、蒼柳と俺は先生にクラスの前で公開処刑という名の説教を受けた。それでも、手は繋がれたままだった。強く強く、結ばれていたのだ。
唇から離れたかと思えば、俺はどうしていいのか分からずに「え、あ、え……?!」とか言っては動揺をしてしまう。
でもそれは俺だけではない。豊橋先生は瞳をまんまるくしていているし間近で見ていた永礼さんは衝撃的すぎたものを見ていたような顔をしていたし。でも一瞬、声を抑えたかと思えば、震えた声で俺に熱を向ける蒼柳へ、なんとか紡ごうとしているようだ。
「え、あの……蒼柳くん。そいつ、男だよ?」
「うん、知っているよ」
「じゃあなんで……キスしたの? 蒼柳くんも男の子、でしょ? そんなチビデブ相手に――」
「永礼さん」
蒼柳が呼ぶと、永礼さんは名前を呼ばれたおかげで幸福感に満ち足りたような表情を見せるが、近すぎる距離にいる俺の頬に……軽くキスを落としたのだ。
――チュッ。
また甘いキスに俺は羞恥でいっぱいになりそうになるが、そんな俺や軽く悲鳴を上げた永礼さんを差し置いて、蒼柳は余裕げに微笑んだ。
「俺は利里さんが好きなの。俺と利里さんの邪魔をしないでくれない?」
普通の人から見ればひどい言葉だと思う。いや、実際にそうだ。
……でも、俺は逆だった。すごく嬉しかった。舞い上がりそうになった。
「……蒼柳、くん」
すると永礼さんは瞳に涙を溜め込んだかと思えば、……罵声を上げていたのである。
「蒼柳くんのバカ!!! ながれが2人はバカップルなの言ってやる! もう知らない!」
そして「うわ~ん!!!」と手で顔を覆って、泣き出しながら医務室からけたたましく退出してしまったのである。
――バタンッ!!! バタバタッ!!!
「……おい、あの子、すんごい音で走り去ったぞ?」
面倒な表情で俺と蒼柳を交互に見てきた豊橋先生ではあったが、先生に対しても蒼柳はどうしてだが敵対視するような目線で見つめてくる。さすが今まで黙っていた俺も、困惑のあまり話しかけてしまうのだ。
「あお、やなぎ? どうして、先生にも、永礼さんにも……あの……」
「キスですか? あぁ、だって――」
すると蒼柳は俺には笑顔を見せた。距離が近すぎて吐息も睫毛の長さもわかるぐらいだ。かなり恥ずかしくなって目を背けようとする俺の頬に触れた蒼柳は、まっすぐな瞳と言葉で俺に伝えるのだ。黒くて吸い込まれそうな瞳はまるで漆黒のダイヤのようで……。
「俺は利里さんが大好きで必要としているから。……それを阻む存在が居るのなら、俺は利里さんのために戦いたいからっすよ。まぁ、先生は違うっすけどね~」
そう言って温かく微笑む蒼柳の美形さに、俺は息を呑んでしまう。息を呑んで、なにもかも忘れそうになって……俺という存在を確立してくれる気がしてならない。
――俺もいつのまにか、蒼柳の存在が必要になっていたのだ。
「そ…そうなの? それ、信じて、いいの?」
また泣き出しそうになる。自分のような存在が必要とされるなんて思えなかったから。でも、そんな俺でも蒼柳は応えるようにまた顔を合わせて、唇を……。
――ガッツン!!!
「いたぁ!」
「痛ぇ!」
俺と蒼柳は「もういいかげんにしろ」という先生の拳を受けて、さらには2人とも
外に出されてしまった。
「のろける余裕があるのなら、さっさと授業を受けて……愛でもなんでも確かめてこい」
先生もニヒルに笑って俺たちは2人で授業に向かうのだ。
クラスに入った途端にひそひそと声が聞こえたが、蒼柳は俺が離しそうになった手を強く繋いで……「せんせい! 俺と利里さんは付き合いました~!」と宣言。
ホワイトボードに向かっていた先生はぽかんと唖然とし、女子たちは一瞬の間を置いて驚嘆して声を上げていたのである。
――その騒ぎのせいで、蒼柳と俺は先生にクラスの前で公開処刑という名の説教を受けた。それでも、手は繋がれたままだった。強く強く、結ばれていたのだ。
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