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第35話 《悲劇》
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体育館の舞台にて、校長先生に副校長先生、そして……泣き出しそうな顔を堪えて、視線を皆に向けている牧先生が居た。
――いったい、どういうことだ?
ふと思った時、そういえば慎さんも俺も、初めの担任は牧先生だったなと想起して……身体がガタガタと震えた。悪寒もして息も乱れていく。
(いや、そんなわけない。違うよ……ね)
だがどこかで、そうなのではないかと思った自分が居た。俺の心臓がけたたましく鳴っている。顔が青くなりそうな気がする。
「利里さん、大丈夫っすか?」
「あ、うん。へい、き……」
蒼柳が心配してくれたが、俺の動悸は次第に大きくなっていく。早くこの不安から逃れたかった。
――そんななかで、無機質なマイクが校長先生の口を無情に開かせた。
「皆さん、悲しいお知らせがあります。……わが校で、自殺をしてしまった方がいます」
会場がどよめきざわざわとする。だが先生は言葉を続けた。
「その方はもともと持病がありましたが、それでもめげずに勉学に励んでいたようです。……牧先生、お願いします」
するとマイクは牧先生に渡された。先生は瞳を真っ赤にして、普段の鋭い瞳が垂れていて、涙をこぼれてしまうそうなのが感じられた。それでも、ぐっと抑えていた。
……あぁ、やっぱり牧先生は優しい。俺が不登校の時にもよく来てくれていたもんな。
耳を塞ぎたくはないが真実を知らねばと感じて、利里は胸を抑えて傾聴する。
先生の声は絞り出したような声で訴えかけた。
「現在、2年生の彼……、奈々切 慎助くんは必死に頑張っていました。病気の不調で留年することもありましたが、ひたむきに頑張っていました。……カウンセラーの豊橋先生からもそれを聞いています」
……ななぎり しんすけ、奈々切 慎介、…………慎さんが、
――死んだ?
頭が真っ白になる。どういうことなのか分からない。意味がわからない。
たださらに呼吸が荒くなり、胸が嫌な音を立て、ぐらりと視界が揺れた。
先生は涙を流しそうになって、堪えるが……俺には無理だった。
「ですから、皆さんも。もしも苦しいことがありましたら、私たちに――」
――バタンっ……。
俺は糸が切れたように崩れ落ちて……地面に倒れていた。地面はひどいくらい冷たかった。
「りざとさん、りざとさん……利里さん!!!」
誰かが俺を抱き寄せて、担ぎ上げてくれたらしい。ふわりと宙に浮かんだ感覚に俺は不思議だが、安堵した気持ちになった。
――いったい、どういうことだ?
ふと思った時、そういえば慎さんも俺も、初めの担任は牧先生だったなと想起して……身体がガタガタと震えた。悪寒もして息も乱れていく。
(いや、そんなわけない。違うよ……ね)
だがどこかで、そうなのではないかと思った自分が居た。俺の心臓がけたたましく鳴っている。顔が青くなりそうな気がする。
「利里さん、大丈夫っすか?」
「あ、うん。へい、き……」
蒼柳が心配してくれたが、俺の動悸は次第に大きくなっていく。早くこの不安から逃れたかった。
――そんななかで、無機質なマイクが校長先生の口を無情に開かせた。
「皆さん、悲しいお知らせがあります。……わが校で、自殺をしてしまった方がいます」
会場がどよめきざわざわとする。だが先生は言葉を続けた。
「その方はもともと持病がありましたが、それでもめげずに勉学に励んでいたようです。……牧先生、お願いします」
するとマイクは牧先生に渡された。先生は瞳を真っ赤にして、普段の鋭い瞳が垂れていて、涙をこぼれてしまうそうなのが感じられた。それでも、ぐっと抑えていた。
……あぁ、やっぱり牧先生は優しい。俺が不登校の時にもよく来てくれていたもんな。
耳を塞ぎたくはないが真実を知らねばと感じて、利里は胸を抑えて傾聴する。
先生の声は絞り出したような声で訴えかけた。
「現在、2年生の彼……、奈々切 慎助くんは必死に頑張っていました。病気の不調で留年することもありましたが、ひたむきに頑張っていました。……カウンセラーの豊橋先生からもそれを聞いています」
……ななぎり しんすけ、奈々切 慎介、…………慎さんが、
――死んだ?
頭が真っ白になる。どういうことなのか分からない。意味がわからない。
たださらに呼吸が荒くなり、胸が嫌な音を立て、ぐらりと視界が揺れた。
先生は涙を流しそうになって、堪えるが……俺には無理だった。
「ですから、皆さんも。もしも苦しいことがありましたら、私たちに――」
――バタンっ……。
俺は糸が切れたように崩れ落ちて……地面に倒れていた。地面はひどいくらい冷たかった。
「りざとさん、りざとさん……利里さん!!!」
誰かが俺を抱き寄せて、担ぎ上げてくれたらしい。ふわりと宙に浮かんだ感覚に俺は不思議だが、安堵した気持ちになった。
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