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*第32話 《ジュンビ段階》
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細いビルのなかに入ると、入り口には色鮮やかな噴水があった。しかも店内は華々しく異世界に来てしまったかと思ったが、それとは打って変わって無機質な窓口で蒼柳がなにやら誰かと話している。
(誰かと話しているのか?)
だが今はこの色鮮やかな噴水を目に焼き付けたかった。
窓口の隙間からカードキーを出せられて、蒼柳が受け取った。ちなみに利里はこの状況がよく分かっていないようだ。
「じゃあ行きますか~。部屋は5階っす」
「あ、うん。ていうかここどこ?」
本当に分かっていない様子の利里に、蒼柳はどうしてだが興奮を抱いて「秘密です」と企んでいるように笑った。
室内に入りさらに驚いた。大きなベッドの照明は色鮮やかに変化をし、今は水色からピンクに差し掛かるとしている。それを蒼柳は温かなオレンジ色に調整させた。
「これ、どうなっているの? すっごい!」
テレビもあって、透明なガラスの部屋もあって、よく見たら小さな冷蔵庫も付いている。……まるで秘密基地のようだ。
ぐるぐる回って荷物を置いて、スプリングの効いたベッドに乗っかって……利里は大きな伸びをした。そこへ蒼柳もやってきて、利里の隣へ身を置く。
ふんわりと香るシャンプーの匂いに利里は気づいてしまった。
「はっ! というか、お金。ごめん、お金いくらだった? 今、手持ちあるかな? こんなすごい所に連れてくれたんだから、相当なんじゃ――」
「利里さん」
透き通るように低い声で、間近に近づく顔立ちが整った顔に、利里は胸を弾ませた。少し怯えたような利里に、蒼柳は額にキスを落としてはふて腐れてように言う。
「俺は、利里さんが利里さん自身をいじめるのには反対っすよ? あと少しは自分の状況を分かってくださいね」
「え、あ、うん」
(……状況?)
すると蒼柳は立ち上がらせたかと思えば、手を繋いで透明な部屋に連れて行く。……そこは浴室だった。
「ここ、浴室、なんだね……」
「そうっすよ」
「へ、へぇ~……」
さすがの利里も蒼柳がシタイことに察しがついてきた。何回か見たエッチな動画で、普通はシャワーに入ってから、性行為をするのはお約束だ。
――そして今日、蒼柳に告白された。
(いや、それにしては早いよな! 飛躍しすぎだし!)
だから利里は引き寄せている身体を退けて逃げようとするが、ホールドされて動けない。というか、蒼柳はずっとくっついているのだ。
だけど誤魔化すように利里は緊張感丸出しで喋る。
「じゃ、じゃあ、一緒に風呂入るか! 入るだけだもんな! ははっ」
「いいっすね。……お風呂に入りましょ、利里さん」
そして2人は一緒に脱衣所に入り、黙って脱いでいく。この沈黙が気恥ずかしさと不安を抱かせるので、利里は着ていたシャツを脱いでから話していく。
「その、お前は誰かと一緒に……入るか! 小さい頃は親と入るもんな!」
「……」
「あ、あと、その……恋人、とか……」
(やばい、言っていて悲しくなる。俺はなにがしたいんだ?)
もうどうにでもなれ! との勢いで下着もなにも身に着けずに浴室へ慌てて浴室へ入ろうとする利里の手を、蒼柳の透き通っていて大きな手を重ねた。
そして引き寄せて、抱きしめて……首元の間に頭を埋めては囁く。
「利里さんは、ズルいのか天然なのか分からないっすよ。そんなに自分をいじめるのなら――」
蒼柳が利里を抱き締めたまま浴室に入り、シャワーの蛇口を捻る。冷たいはずの水は、けたたましく鳴っている鼓動を抑えるのにはまだ足りない。
――冷水から温水に変わる頃合いに、蒼柳は利里をいじめるように耳たぶを舐め上げたかと思えば、卑猥な音を立てて攻め立てた。
――ジュゥ……ジュプゥ……ジュゥ……。
「うひ、うぅ……」
(変な声、出る……!)
だが蒼柳は真っ赤な耳の愛撫を楽しんでは意地悪く言い放つ。
「俺がいじめて泣かせてあげます」
有言実行なのかは知らぬが、蒼柳は温かい水に打たれる利里を庇うように向き合って林檎のような顔立ちをしている彼にキスをする。深い深いキスをする。
――チュゥ……チュゥ……ピチャッ。
口の中をかき乱し、呼吸を荒げる利里に構わずに蒼柳はキスを進めていく。利里は苦悶と快楽という境界線で右往左往した。目がぐるぐる曲がる。
(なんだ、これ……。へんだぁ……。腰、ぬけそう……)
気持ちよさと自分のバージンを奪われた利里は、角度を変えた高度なキスにたじろいで後ろに倒れそうになる。だが蒼柳が後ろに手を回してくれたおかげで倒れなかった。しかし密着力が高まり逃げられない状況になるのだ。
「うぅ……、んぅ、ふひぃ」
口端から淫らな銀糸がたらりと流れたかと思えば、蒼柳は満足したように唇を離した。
エッチな反響音が自分の羞恥さを表しているようだ。
「ふふ。……案外、男相手でも大丈夫じゃないっすか」
「はふ、お、お前、が?」
温かいシャワーの音が鳴りやんで、蒼柳が蛇口を閉めて浴室お湯を溜め始める。そんな彼は、利里の的を絞ったはずの考えを外すように、わざと自分自身を腰に当てた。がちがちであったので、衝撃的過ぎて少し腰を引いたが蒼柳は利里のも触れて……艶やかに笑う。
「利里さんも俺も、ですよ。じゃあ、お風呂入る前に致しますか」
「い、いたす、とは?」
わかっているくせにという調子の蒼柳は、完勃ちになっている利里に触れてわざと小さく告げる。
「……オトコのコ同士の、エッチっすよ」
利里の顔がさらに紅潮して、また心臓が飛び出しそうになるのだ。
(誰かと話しているのか?)
だが今はこの色鮮やかな噴水を目に焼き付けたかった。
窓口の隙間からカードキーを出せられて、蒼柳が受け取った。ちなみに利里はこの状況がよく分かっていないようだ。
「じゃあ行きますか~。部屋は5階っす」
「あ、うん。ていうかここどこ?」
本当に分かっていない様子の利里に、蒼柳はどうしてだが興奮を抱いて「秘密です」と企んでいるように笑った。
室内に入りさらに驚いた。大きなベッドの照明は色鮮やかに変化をし、今は水色からピンクに差し掛かるとしている。それを蒼柳は温かなオレンジ色に調整させた。
「これ、どうなっているの? すっごい!」
テレビもあって、透明なガラスの部屋もあって、よく見たら小さな冷蔵庫も付いている。……まるで秘密基地のようだ。
ぐるぐる回って荷物を置いて、スプリングの効いたベッドに乗っかって……利里は大きな伸びをした。そこへ蒼柳もやってきて、利里の隣へ身を置く。
ふんわりと香るシャンプーの匂いに利里は気づいてしまった。
「はっ! というか、お金。ごめん、お金いくらだった? 今、手持ちあるかな? こんなすごい所に連れてくれたんだから、相当なんじゃ――」
「利里さん」
透き通るように低い声で、間近に近づく顔立ちが整った顔に、利里は胸を弾ませた。少し怯えたような利里に、蒼柳は額にキスを落としてはふて腐れてように言う。
「俺は、利里さんが利里さん自身をいじめるのには反対っすよ? あと少しは自分の状況を分かってくださいね」
「え、あ、うん」
(……状況?)
すると蒼柳は立ち上がらせたかと思えば、手を繋いで透明な部屋に連れて行く。……そこは浴室だった。
「ここ、浴室、なんだね……」
「そうっすよ」
「へ、へぇ~……」
さすがの利里も蒼柳がシタイことに察しがついてきた。何回か見たエッチな動画で、普通はシャワーに入ってから、性行為をするのはお約束だ。
――そして今日、蒼柳に告白された。
(いや、それにしては早いよな! 飛躍しすぎだし!)
だから利里は引き寄せている身体を退けて逃げようとするが、ホールドされて動けない。というか、蒼柳はずっとくっついているのだ。
だけど誤魔化すように利里は緊張感丸出しで喋る。
「じゃ、じゃあ、一緒に風呂入るか! 入るだけだもんな! ははっ」
「いいっすね。……お風呂に入りましょ、利里さん」
そして2人は一緒に脱衣所に入り、黙って脱いでいく。この沈黙が気恥ずかしさと不安を抱かせるので、利里は着ていたシャツを脱いでから話していく。
「その、お前は誰かと一緒に……入るか! 小さい頃は親と入るもんな!」
「……」
「あ、あと、その……恋人、とか……」
(やばい、言っていて悲しくなる。俺はなにがしたいんだ?)
もうどうにでもなれ! との勢いで下着もなにも身に着けずに浴室へ慌てて浴室へ入ろうとする利里の手を、蒼柳の透き通っていて大きな手を重ねた。
そして引き寄せて、抱きしめて……首元の間に頭を埋めては囁く。
「利里さんは、ズルいのか天然なのか分からないっすよ。そんなに自分をいじめるのなら――」
蒼柳が利里を抱き締めたまま浴室に入り、シャワーの蛇口を捻る。冷たいはずの水は、けたたましく鳴っている鼓動を抑えるのにはまだ足りない。
――冷水から温水に変わる頃合いに、蒼柳は利里をいじめるように耳たぶを舐め上げたかと思えば、卑猥な音を立てて攻め立てた。
――ジュゥ……ジュプゥ……ジュゥ……。
「うひ、うぅ……」
(変な声、出る……!)
だが蒼柳は真っ赤な耳の愛撫を楽しんでは意地悪く言い放つ。
「俺がいじめて泣かせてあげます」
有言実行なのかは知らぬが、蒼柳は温かい水に打たれる利里を庇うように向き合って林檎のような顔立ちをしている彼にキスをする。深い深いキスをする。
――チュゥ……チュゥ……ピチャッ。
口の中をかき乱し、呼吸を荒げる利里に構わずに蒼柳はキスを進めていく。利里は苦悶と快楽という境界線で右往左往した。目がぐるぐる曲がる。
(なんだ、これ……。へんだぁ……。腰、ぬけそう……)
気持ちよさと自分のバージンを奪われた利里は、角度を変えた高度なキスにたじろいで後ろに倒れそうになる。だが蒼柳が後ろに手を回してくれたおかげで倒れなかった。しかし密着力が高まり逃げられない状況になるのだ。
「うぅ……、んぅ、ふひぃ」
口端から淫らな銀糸がたらりと流れたかと思えば、蒼柳は満足したように唇を離した。
エッチな反響音が自分の羞恥さを表しているようだ。
「ふふ。……案外、男相手でも大丈夫じゃないっすか」
「はふ、お、お前、が?」
温かいシャワーの音が鳴りやんで、蒼柳が蛇口を閉めて浴室お湯を溜め始める。そんな彼は、利里の的を絞ったはずの考えを外すように、わざと自分自身を腰に当てた。がちがちであったので、衝撃的過ぎて少し腰を引いたが蒼柳は利里のも触れて……艶やかに笑う。
「利里さんも俺も、ですよ。じゃあ、お風呂入る前に致しますか」
「い、いたす、とは?」
わかっているくせにという調子の蒼柳は、完勃ちになっている利里に触れてわざと小さく告げる。
「……オトコのコ同士の、エッチっすよ」
利里の顔がさらに紅潮して、また心臓が飛び出しそうになるのだ。
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