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第14話 ささやかな《幸せ》
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――あれから4日は経っただろうか。羞恥心を晴らすために眠り続けていた利里ではあるが、彼は大きく息を吐いてから羽毛布団を蹴っ飛ばして起き上がる。
……ちゃんと布団は直したが。
「今日こそは行くか~。まぁ、実技練を踏まえたテスト内容もあるしな~」
そう言いながら、彼はベッドの傍にあるスマホを片手に連絡アプリを手に取った。
見てみると蒼柳と、大好きな人からの連絡が来ていたのだ。利里から連絡をしたのだが、彼は実習中であるにも関わらず返信をくれたらしい。
『りっくん、平気!? 本当に具合が悪化したら、病院に受診してね!』
『心配だよ……、お互い体調管理に気を付けようね~』
「ふふっ、慎さんから返信来てる。……やった」
そう喜び勇んで、エプロンを付けた利里はご飯作りに励んだ。昼食の弁当もそうだが、利里はこの家では家事担当なので食事も作っている。
彼の両親は共働きで忙しい。だから結果的に彼が作る羽目になっているのだ。最初は大変だったが今はなんとも思っていない。そのおかげで自炊ができるようになったので結果として良かった。
「えっと、今日の夕飯はポトフにして~、朝はだし巻き卵と小松菜のごま和えと昨日の味噌汁にして――」
キッチンに向かい食事を作っていく利里は手際よく材料を切っては煮込んだり、焼いたりをしていた。多めに作っているから、昼食は作った残りでもありだろう。幸い、昨日作って残ってしまった白菜炒めもある。
ポトフを煮込んでいる最中に蒼柳のメッセージを読んでみる。
『お疲れさまっす! 気分大丈夫っすか?』
『体調が良くなったら言ってください! たまにはご飯食べましょうよ~』
変わりない様子の蒼柳にも利里は少し微笑んだ。どうやら安心した様子である。
「蒼柳も変わった奴だな~。あんな姿を見たら、普通は引くだろうに……」
だがやはり嬉しくて、メッセージにて『ありがとう! 今日は学校に行くから!』と返答をし、またポトフの火加減を見る。ジャガイモに串を刺すが、まだ通らないので、もう少し待つことにした。
時間があるので弁当作りに取り掛かる。2段弁当で、下は白米だが海苔をご飯の真ん中と上に乗せて、さらには醤油を垂らし込んでのり弁に。
上はだし巻き卵と白菜の炒め物、小松菜のごま和えにストックしてあるミニトマトとブロッコリーを添えて出来上がりだ。
「うん、これで良し!」
そして今度はポトフの火加減を見る。串を刺してジャガイモに火が通ったのを確認し、コンソメと塩コショウを入れて味を見れば……作業は完了だ。
「よ~し、これで終わりっと! まぁ行きたくはないけれど、行くか……」
(自分の将来の為にも、だし。でも、もしかしたら――)
「慎さんに会えるかも、なんてね~」
少し浮足立って、利里は学校へ行く支度をするのであった。
……ちゃんと布団は直したが。
「今日こそは行くか~。まぁ、実技練を踏まえたテスト内容もあるしな~」
そう言いながら、彼はベッドの傍にあるスマホを片手に連絡アプリを手に取った。
見てみると蒼柳と、大好きな人からの連絡が来ていたのだ。利里から連絡をしたのだが、彼は実習中であるにも関わらず返信をくれたらしい。
『りっくん、平気!? 本当に具合が悪化したら、病院に受診してね!』
『心配だよ……、お互い体調管理に気を付けようね~』
「ふふっ、慎さんから返信来てる。……やった」
そう喜び勇んで、エプロンを付けた利里はご飯作りに励んだ。昼食の弁当もそうだが、利里はこの家では家事担当なので食事も作っている。
彼の両親は共働きで忙しい。だから結果的に彼が作る羽目になっているのだ。最初は大変だったが今はなんとも思っていない。そのおかげで自炊ができるようになったので結果として良かった。
「えっと、今日の夕飯はポトフにして~、朝はだし巻き卵と小松菜のごま和えと昨日の味噌汁にして――」
キッチンに向かい食事を作っていく利里は手際よく材料を切っては煮込んだり、焼いたりをしていた。多めに作っているから、昼食は作った残りでもありだろう。幸い、昨日作って残ってしまった白菜炒めもある。
ポトフを煮込んでいる最中に蒼柳のメッセージを読んでみる。
『お疲れさまっす! 気分大丈夫っすか?』
『体調が良くなったら言ってください! たまにはご飯食べましょうよ~』
変わりない様子の蒼柳にも利里は少し微笑んだ。どうやら安心した様子である。
「蒼柳も変わった奴だな~。あんな姿を見たら、普通は引くだろうに……」
だがやはり嬉しくて、メッセージにて『ありがとう! 今日は学校に行くから!』と返答をし、またポトフの火加減を見る。ジャガイモに串を刺すが、まだ通らないので、もう少し待つことにした。
時間があるので弁当作りに取り掛かる。2段弁当で、下は白米だが海苔をご飯の真ん中と上に乗せて、さらには醤油を垂らし込んでのり弁に。
上はだし巻き卵と白菜の炒め物、小松菜のごま和えにストックしてあるミニトマトとブロッコリーを添えて出来上がりだ。
「うん、これで良し!」
そして今度はポトフの火加減を見る。串を刺してジャガイモに火が通ったのを確認し、コンソメと塩コショウを入れて味を見れば……作業は完了だ。
「よ~し、これで終わりっと! まぁ行きたくはないけれど、行くか……」
(自分の将来の為にも、だし。でも、もしかしたら――)
「慎さんに会えるかも、なんてね~」
少し浮足立って、利里は学校へ行く支度をするのであった。
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