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第3話 報われない《恋》
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「あれ、りっくんじゃん~。久しぶり~」
「慎さんもお疲れ様! 実習キツそうだね……。やつれているし、書いている腕も軽く震えているし」
「あぁ、やっぱり実習がきついからっているのもあるから……かな。手も腱鞘炎かもね~。まぁ痛くはないし、いっかな~って」
相手は奈々切 慎介という看護学生だ。利里の1回目……そう、現役時代の頃の仲の良い同級生かつ親友だ。理由は知らぬが、彼も1度だけ留年をしてしまったのだが、今は持ち直して無事に2年生となったのである。実習期間であるのでなかなか会えずにいるが、慎介は利里にとってはある意味、特別な存在なのだ。――親友じゃ片付けられない、ある想いを秘めているのだから。
「あ~、実習終わって欲しい~。もう疲れた~。彼女に癒されてぇ~」
(彼女、か……)
その言葉に利里は一瞬だけ顔を曇らせたが、また普段の調子に戻ってちょっかいを掛ける。
「なんだよ~、また恋人かよ~。この幸せ者!」
「ははっ。りっくんにもできるって、……多分」
「なんだと~、慎さんのくせに~。社会人時代からの恋人だからってちょーしに乗んな!」
内心では笑ってなどいないが、表面上では笑いながら利里は弁当を広げて食していく。今日はタンドリーチキンにミニトマトを添え、なおかつインゲンのベーコン巻きまで加えたものだ。バターライスをフォークですくって食べようとすると、今度は奈々切が席を立ってしまう。彼は「もう実習の時間だから先に行くわ~」そう言って黒バックに書類を詰め込んだのだ。茶色の眼鏡を外して、ケースに入れ、バックに入れてしまうのも名残惜しい。
(あぁ、慎さん帰るのか。でも少しでも居られて良かったな)
――どうせ叶わぬ”恋”だし。
明らかに悲しそうな顔をする利里が気になったのだろう。彼の恋心など知りもしない奈々切は少し首を傾けては、笑って彼の頭に手を添えてぐしゃぐしゃにしたのだ。乱雑だが温かい手に利里の心は跳ねて動揺をした。……だが、彼女持ちでノーマルな彼は気がつかない。
「ま、実習が終わったらメシでも行こうよ」
「あ……あ、うん!」
「じゃあ俺行ってくるね~。じゃあね~!」
そう言って立ち去ってしまう意中の相手に、利里は笑いながらも内心では興奮をして食事を摂るのである。…食事はやはり味気なかった。―だが、彼らの姿を見ていた者が。彼はコンビニ弁当をレンチンしに来たのだが、2人の姿を見てあることを思いついたのだ。
(あの乾って人、2年生と仲が良いのか…)
――これは使える。
蒼柳は少し笑って、その場から立ち去り、仲間を含めたクラスメートに報告会をするのであった。
「慎さんもお疲れ様! 実習キツそうだね……。やつれているし、書いている腕も軽く震えているし」
「あぁ、やっぱり実習がきついからっているのもあるから……かな。手も腱鞘炎かもね~。まぁ痛くはないし、いっかな~って」
相手は奈々切 慎介という看護学生だ。利里の1回目……そう、現役時代の頃の仲の良い同級生かつ親友だ。理由は知らぬが、彼も1度だけ留年をしてしまったのだが、今は持ち直して無事に2年生となったのである。実習期間であるのでなかなか会えずにいるが、慎介は利里にとってはある意味、特別な存在なのだ。――親友じゃ片付けられない、ある想いを秘めているのだから。
「あ~、実習終わって欲しい~。もう疲れた~。彼女に癒されてぇ~」
(彼女、か……)
その言葉に利里は一瞬だけ顔を曇らせたが、また普段の調子に戻ってちょっかいを掛ける。
「なんだよ~、また恋人かよ~。この幸せ者!」
「ははっ。りっくんにもできるって、……多分」
「なんだと~、慎さんのくせに~。社会人時代からの恋人だからってちょーしに乗んな!」
内心では笑ってなどいないが、表面上では笑いながら利里は弁当を広げて食していく。今日はタンドリーチキンにミニトマトを添え、なおかつインゲンのベーコン巻きまで加えたものだ。バターライスをフォークですくって食べようとすると、今度は奈々切が席を立ってしまう。彼は「もう実習の時間だから先に行くわ~」そう言って黒バックに書類を詰め込んだのだ。茶色の眼鏡を外して、ケースに入れ、バックに入れてしまうのも名残惜しい。
(あぁ、慎さん帰るのか。でも少しでも居られて良かったな)
――どうせ叶わぬ”恋”だし。
明らかに悲しそうな顔をする利里が気になったのだろう。彼の恋心など知りもしない奈々切は少し首を傾けては、笑って彼の頭に手を添えてぐしゃぐしゃにしたのだ。乱雑だが温かい手に利里の心は跳ねて動揺をした。……だが、彼女持ちでノーマルな彼は気がつかない。
「ま、実習が終わったらメシでも行こうよ」
「あ……あ、うん!」
「じゃあ俺行ってくるね~。じゃあね~!」
そう言って立ち去ってしまう意中の相手に、利里は笑いながらも内心では興奮をして食事を摂るのである。…食事はやはり味気なかった。―だが、彼らの姿を見ていた者が。彼はコンビニ弁当をレンチンしに来たのだが、2人の姿を見てあることを思いついたのだ。
(あの乾って人、2年生と仲が良いのか…)
――これは使える。
蒼柳は少し笑って、その場から立ち去り、仲間を含めたクラスメートに報告会をするのであった。
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