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《お人形さん》
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ニュースを見た双葉と九条は警察へと駆けつけた。ちゃんと鏡梨の両親も呼び、警察署にて捜査協力を受けている。
双葉は心配でならなかった。鏡梨が殺されるかもしれない。酷い目に遭わせられる可能性もある。
連れ去った犯人をぶっ飛ばしたいぐらいであった。しかしその代わりに過った出来事がある。
池田 霖之助という男を見た瞬間、鏡梨は青ざめて逃げ出し「怖い」と言ったのだ。あの優しげで物腰の柔らかそうな男にいったいなにが……。
「そうだ。池田組の若頭だ」
警察官に思い出すように告げれば刑事が一層険しい顔つきになったが伺えた。
「池田組……ですか。あそこはかなりグレーなんですよね」
「グレーって言うのはどういう意味で?」
「簡単に尻尾を出さないんです。麻薬なども携わっていないらしいですが……ただ」
刑事は息を潜めるような顔つきをした。
池田組は裏で人身売買まがいをしているのではないかという噂があるらしいと。
双葉は戦慄した。あの男は、池田は鏡梨になにを求めているのだろかと思った。
拳に力が入り「俺にも協力させてください」自然と真剣な顔で言い放っていた。許せなかった。自分の女神を海外へ売り飛ばそうとするのなら――そんな身勝手なことはさせない。そんな悲しい結末にはさせない。
「お気持ちはわかりますが、ここは警察に任せてください」
「だったら俺だけで勝手に探します」
席を立ち、唇を噛む双葉に隣に居た九条が連れ添った。鏡梨の両親は警察の協力を受けるらしい。
「くそっ! どうすれば……良いんだよ」
悲痛な叫びをする双葉ではあるが九条は机に持ち出したパソコンとスマホを駆使してなにやら探している様子であった。
「諦めちゃ駄目っす。今は防犯カメラもあるし高速道路にもNシステムっいう奴が使えるっす。――だから諦めないで下さい」
カタカタと打ち込みながらモニターを見つめていく頼もしいマネージャーに双葉はふと笑った。
「……お前の力を借りても良いのか?」
「もちろんっすよ」
胸を叩いた瞬間に反応があったらしく席を立ち上がれば「ここから遠いっすけど、居場所が掴めました。警察に連絡しましょう」
尻尾を掴むのが早すぎるマネージャーに「お前……本当は刑事じゃねぇの?」なんて告げれば「こういうのが得意なんすよ」なんて笑っていた。
自分の周囲には化け物揃いだなと痛感した今日この頃であった。
車で移動された場所は見知った場所であった。
抵抗をしたのだが薬を嗅がされたせいでぼんやりとしている。室内へと入ったようなのだが知っている、いや懐かしさを孕んだ。
かばんなどが取り上げられているので舌打ちをした。かばんにはスマホが入っていたはずだ。信頼している双葉に連絡ができたのにと思うとはらわたが煮えくり返る。
もう自分の世界を壊されたくなどない。掴み上げるのだ。
「起きたかな、鏡梨」
日本家屋の襖が開けられると池田が服を持った黒服を連れて鏡梨に触れようとした。鏡梨はなけなしの力で振り払い唾を吐き出す。
池田の微笑みが冷酷に染まった。
「僕が居ない間に言うことを聞かない子になったね。――そういう子にはお注射しなくちゃね」
池田はにこりと微笑んで医師を呼びかければ、鏡梨はなす術もなく左腕を取られなにかを注入させられた。
注入された瞬間に身体が熱くなり、身体が激しく燃えるように息苦しくなる。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
なに入れやがったなんて目線で訴えれば「ちょっとした薬さ」と池田は答えた。だが身体は雄叫びを上げるように震えて立っていられないほどであった。
激痛とは違う苦痛。いや、苦痛とは違うなにか。
黒服の持っている様々な服を見ていくと種類が豊富であった。タキシードからロリータからチャイナ服やらドレスからなにまであり、ほとんどが女性物であった。
「さて、どういうお洋服にしようか。――あんなむさ苦しい奴のお人形さんじゃなくていいんだよ、鏡梨は」
「う、てめぇ……」
すると池田が目を輝かせたのはピンク色の浴衣であった。薄いピンク色をベースにした花柄の浴衣を、倒れ込んでいる鏡梨を黒服に起こさせて充てて見せる。
黒服に触られた途端、気持ち悪い感触を覚えた。――どうしてだが、欲情を見せてしまうのだ。
ビクつき渾身の力で拳を上げてまたへたりと倒れ込む。……池田が狩人の瞳をして鏡梨に迫るように近づき、顎をすくい上げた。
身体が熱を持つように身震いし手を上げようとするが、力が入らない。
池田は満足そうにゆっくりと微笑んだ。
「そうそう。従順じゃないとお人形さんじゃないもんね。……服に着替えさせてからいっぱい触ってあげるね」
身体が戦慄した。恐怖で堪らない。またこの男の辱めを受けるとなると逃げてしまいたいほどだ。
だが身体がうまく動かない。息が上がり、身体が熱を持ち、されるがまま服を脱がされ、触れられる。――怖い、怖いのだ。
「大丈夫、鏡梨。……またお人形さんごっこしよう」
双葉が居ればと思った。あの逞しく大らかな男が居ればと。
外でサイレンの音が鳴る。だが思考は停止していくように、お人形さんごっこは続けられた。
双葉は心配でならなかった。鏡梨が殺されるかもしれない。酷い目に遭わせられる可能性もある。
連れ去った犯人をぶっ飛ばしたいぐらいであった。しかしその代わりに過った出来事がある。
池田 霖之助という男を見た瞬間、鏡梨は青ざめて逃げ出し「怖い」と言ったのだ。あの優しげで物腰の柔らかそうな男にいったいなにが……。
「そうだ。池田組の若頭だ」
警察官に思い出すように告げれば刑事が一層険しい顔つきになったが伺えた。
「池田組……ですか。あそこはかなりグレーなんですよね」
「グレーって言うのはどういう意味で?」
「簡単に尻尾を出さないんです。麻薬なども携わっていないらしいですが……ただ」
刑事は息を潜めるような顔つきをした。
池田組は裏で人身売買まがいをしているのではないかという噂があるらしいと。
双葉は戦慄した。あの男は、池田は鏡梨になにを求めているのだろかと思った。
拳に力が入り「俺にも協力させてください」自然と真剣な顔で言い放っていた。許せなかった。自分の女神を海外へ売り飛ばそうとするのなら――そんな身勝手なことはさせない。そんな悲しい結末にはさせない。
「お気持ちはわかりますが、ここは警察に任せてください」
「だったら俺だけで勝手に探します」
席を立ち、唇を噛む双葉に隣に居た九条が連れ添った。鏡梨の両親は警察の協力を受けるらしい。
「くそっ! どうすれば……良いんだよ」
悲痛な叫びをする双葉ではあるが九条は机に持ち出したパソコンとスマホを駆使してなにやら探している様子であった。
「諦めちゃ駄目っす。今は防犯カメラもあるし高速道路にもNシステムっいう奴が使えるっす。――だから諦めないで下さい」
カタカタと打ち込みながらモニターを見つめていく頼もしいマネージャーに双葉はふと笑った。
「……お前の力を借りても良いのか?」
「もちろんっすよ」
胸を叩いた瞬間に反応があったらしく席を立ち上がれば「ここから遠いっすけど、居場所が掴めました。警察に連絡しましょう」
尻尾を掴むのが早すぎるマネージャーに「お前……本当は刑事じゃねぇの?」なんて告げれば「こういうのが得意なんすよ」なんて笑っていた。
自分の周囲には化け物揃いだなと痛感した今日この頃であった。
車で移動された場所は見知った場所であった。
抵抗をしたのだが薬を嗅がされたせいでぼんやりとしている。室内へと入ったようなのだが知っている、いや懐かしさを孕んだ。
かばんなどが取り上げられているので舌打ちをした。かばんにはスマホが入っていたはずだ。信頼している双葉に連絡ができたのにと思うとはらわたが煮えくり返る。
もう自分の世界を壊されたくなどない。掴み上げるのだ。
「起きたかな、鏡梨」
日本家屋の襖が開けられると池田が服を持った黒服を連れて鏡梨に触れようとした。鏡梨はなけなしの力で振り払い唾を吐き出す。
池田の微笑みが冷酷に染まった。
「僕が居ない間に言うことを聞かない子になったね。――そういう子にはお注射しなくちゃね」
池田はにこりと微笑んで医師を呼びかければ、鏡梨はなす術もなく左腕を取られなにかを注入させられた。
注入された瞬間に身体が熱くなり、身体が激しく燃えるように息苦しくなる。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
なに入れやがったなんて目線で訴えれば「ちょっとした薬さ」と池田は答えた。だが身体は雄叫びを上げるように震えて立っていられないほどであった。
激痛とは違う苦痛。いや、苦痛とは違うなにか。
黒服の持っている様々な服を見ていくと種類が豊富であった。タキシードからロリータからチャイナ服やらドレスからなにまであり、ほとんどが女性物であった。
「さて、どういうお洋服にしようか。――あんなむさ苦しい奴のお人形さんじゃなくていいんだよ、鏡梨は」
「う、てめぇ……」
すると池田が目を輝かせたのはピンク色の浴衣であった。薄いピンク色をベースにした花柄の浴衣を、倒れ込んでいる鏡梨を黒服に起こさせて充てて見せる。
黒服に触られた途端、気持ち悪い感触を覚えた。――どうしてだが、欲情を見せてしまうのだ。
ビクつき渾身の力で拳を上げてまたへたりと倒れ込む。……池田が狩人の瞳をして鏡梨に迫るように近づき、顎をすくい上げた。
身体が熱を持つように身震いし手を上げようとするが、力が入らない。
池田は満足そうにゆっくりと微笑んだ。
「そうそう。従順じゃないとお人形さんじゃないもんね。……服に着替えさせてからいっぱい触ってあげるね」
身体が戦慄した。恐怖で堪らない。またこの男の辱めを受けるとなると逃げてしまいたいほどだ。
だが身体がうまく動かない。息が上がり、身体が熱を持ち、されるがまま服を脱がされ、触れられる。――怖い、怖いのだ。
「大丈夫、鏡梨。……またお人形さんごっこしよう」
双葉が居ればと思った。あの逞しく大らかな男が居ればと。
外でサイレンの音が鳴る。だが思考は停止していくように、お人形さんごっこは続けられた。
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