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《酒》
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訪れた居酒屋は焼き鳥が主ではあるが刺身も有名なところであるらしい。しかもリーズナブルで美味しいらしいので双葉が下積み時代の頃からよく通っていたようだ。
席について店員に「お飲み物は?」尋ねられたのでウーロン茶と答えた鏡梨と生ビールを頼んだ二人ではあったが、それぞれ焼き鳥と刺身の盛り合わせも頼んでいった。つまみも忘れちゃいけない。ポテトサラダやきゅうりの浅漬けもしっかりと頼んだ。
ウーロン茶とビールが運ばれて「かんぱーい!」なんて飲みのノリでグラスを傾けてウーロン茶を一気に飲みこんでいく。「ぷはぁ~」などと沁みるような声を出す鏡梨に双葉の悪戯心がくすぐられた。
「お前、酒とか飲まないよな。試しに飲んでみろよ」
「……はぁ? なに急に?」
「いいから飲んでみろって。奢るの約束したろ?」
なにか企んでいるような様子の双葉ではあるものの、まぁただ酒ならという理由で
鏡梨は酒を飲むことになった。
ほとんど飲んだことがないという鏡梨なので甘くて飲みやすい酒が良いと、初めは女のようにカシスオレンジを頼んだ。
「……本当に女みてぇだよな、嬢ちゃんは。――まっ、酒の回りが早そうで良いけれど」
「うっせぇな。酒ならなんでも良いだろ」
「まぁまぁ二人とも~、楽しみましょうよ!」
九条が焼き鳥を差し出して礼を告げて頂けば……美味しかった。特にタレの豚レバーは特に美味しい。濃厚で美味であった。
運ばれてきたカシスオレンジも甘くて飲みやすい。まるでジュースのようだ。だからガンガンと呑むことができてしまう。
つまみと一緒に食べて飲んでしまえば大人の幸せというものを感じてしまうほどにだ。
「うまぁ~。ふわぁ……。なんか……ねみぃ……」
壁に寄っかかろうとして追加で頼んだカルーアミルクをちびりと呑むと、ニヒルに微笑んできた双葉が近づいて隣に座ってきた。
九条が太い息を零す最中で彼は囁いた。
「お前は酔っぱらうと眠たくなるのか? えっ?」
「うん……。ねむい……」
ふわぁ~と大きな欠伸をして刺身を食べる手がおろそかになってしまう鏡梨の真っ赤に染まった頬に双葉が手に触れて微笑んだ。――今にでも捕食してしまいそうなほどの獣の顔立ちをしている。
だが酔っぱらっている鏡梨は気づかずに手を払わずにぼんやりと宙を彷徨っていた。それがなんとも愛くるしく可憐なのか、この青年にはわかっているのだろうか。
「さて、と。九条、払っておくから俺たちはここで退散するわ」
「まったく……。明日はリハーサルっすから覚えておいてくださいっすね?」
「わかってるって。――鏡梨、行くぞ」
「……うぅ、気持ち悪い――」
「えっ?」
すると顔を青ざめた鏡梨はトイレへと駆け込むように逃げ出してしまった。そして十分後――鏡梨は顔を青ざめて「悪い、吐いてきた」そう言って二人に深く謝罪をしたのであった。
酔っぱらっているのもあり窓を伝って上がるのは危険だと判断した二人は、双葉が鏡梨の父親に電話をして「今日は遊んだから俺の部屋に泊まらせておくよ」酒を呑んだこと踏まえたうえで状況を説明し、双葉の部屋に泊まることになった。
九条と一緒に介抱されて部屋へとたどり着くと、九条は「じゃあ明日、よろしくっす~」そう言って帰ってしまったのだ。
物で溢れた狭い寝室に通されてベッドに微睡んだ鏡梨はキッチンで麦茶を注いでいく双葉に今回ばかりは礼を告げた。
「ごめん、本当に。……悪いことした」
「それは俺も入っているのか?」
「うん、入っているよ。――本当にごめん」
麦茶を飲んで「もう一杯くれない?」なんて本人は気づいていないが可愛らしく強請っていると双葉に眉間の皺が深くなった。
「ごめん。なんか怒らせた?」
「……怒っているよ。本当はお前を襲いたくて堪んねぇ」
顔が真っ赤になってしまう。大人の雰囲気に吞まれそうになりそうだ。
だから鏡梨は不意に双葉に口づけをして「襲ってもいいよ?」なんてにっこりと微笑んで誘った。――だが獣は普段であれば食いつく餌に食いつかず、ただじっと耐えていたのだ。
鏡梨はくすりと微笑んだ。
「なんだよ、いつもなら……襲うのに?」
「襲いてぇよ。でも今のお前はシラフじゃねぇからな。――お前とはそうしたくはねぇんだ」
額にキスをされた。軽いリップ音を鳴らして優しくされる行為に鏡梨は安心して意識を手放し眠ることができた。
「まったく、この可愛いツンデレ君はよ……」
窓を開けて煙草を吹かす双葉は仕切り直しで黒ビールを煽っていたのだ。
そして翌日。鏡梨は狭さを感じて目を覚ますと……そこには双葉が寝息を立てていた。鏡梨は驚いた。
「あ、あんたか……。おい起きろ! 今日はリハーサルなんだろう?」
「うぅ……。その前にシャワー浴びねぇ……と」
起き上がっていく双葉は――パンツだけであった。「なんでパンツだけなんだよ?」訝しげに尋ねる鏡梨に逞しく野性的な体つきの獣はニヒルに微笑んだ。
「そういうお前も、だぜ?」
「えっ?」
見てみると自分も下着以外剥ぎ取られていたのだ。鏡梨は身体を震わせて顔を真っ赤にした。
「……この変態!!!」
枕を投げつけた鏡梨に双葉はニヤついて「一緒に風呂にでも入るか?」なんて冗談交じりで言ってくるが「しねぇよ馬鹿!」なんて答えた。
鏡梨は知らない。居酒屋で匂いが染み付いた衣服を洗ってあげた双葉の優しさを。
席について店員に「お飲み物は?」尋ねられたのでウーロン茶と答えた鏡梨と生ビールを頼んだ二人ではあったが、それぞれ焼き鳥と刺身の盛り合わせも頼んでいった。つまみも忘れちゃいけない。ポテトサラダやきゅうりの浅漬けもしっかりと頼んだ。
ウーロン茶とビールが運ばれて「かんぱーい!」なんて飲みのノリでグラスを傾けてウーロン茶を一気に飲みこんでいく。「ぷはぁ~」などと沁みるような声を出す鏡梨に双葉の悪戯心がくすぐられた。
「お前、酒とか飲まないよな。試しに飲んでみろよ」
「……はぁ? なに急に?」
「いいから飲んでみろって。奢るの約束したろ?」
なにか企んでいるような様子の双葉ではあるものの、まぁただ酒ならという理由で
鏡梨は酒を飲むことになった。
ほとんど飲んだことがないという鏡梨なので甘くて飲みやすい酒が良いと、初めは女のようにカシスオレンジを頼んだ。
「……本当に女みてぇだよな、嬢ちゃんは。――まっ、酒の回りが早そうで良いけれど」
「うっせぇな。酒ならなんでも良いだろ」
「まぁまぁ二人とも~、楽しみましょうよ!」
九条が焼き鳥を差し出して礼を告げて頂けば……美味しかった。特にタレの豚レバーは特に美味しい。濃厚で美味であった。
運ばれてきたカシスオレンジも甘くて飲みやすい。まるでジュースのようだ。だからガンガンと呑むことができてしまう。
つまみと一緒に食べて飲んでしまえば大人の幸せというものを感じてしまうほどにだ。
「うまぁ~。ふわぁ……。なんか……ねみぃ……」
壁に寄っかかろうとして追加で頼んだカルーアミルクをちびりと呑むと、ニヒルに微笑んできた双葉が近づいて隣に座ってきた。
九条が太い息を零す最中で彼は囁いた。
「お前は酔っぱらうと眠たくなるのか? えっ?」
「うん……。ねむい……」
ふわぁ~と大きな欠伸をして刺身を食べる手がおろそかになってしまう鏡梨の真っ赤に染まった頬に双葉が手に触れて微笑んだ。――今にでも捕食してしまいそうなほどの獣の顔立ちをしている。
だが酔っぱらっている鏡梨は気づかずに手を払わずにぼんやりと宙を彷徨っていた。それがなんとも愛くるしく可憐なのか、この青年にはわかっているのだろうか。
「さて、と。九条、払っておくから俺たちはここで退散するわ」
「まったく……。明日はリハーサルっすから覚えておいてくださいっすね?」
「わかってるって。――鏡梨、行くぞ」
「……うぅ、気持ち悪い――」
「えっ?」
すると顔を青ざめた鏡梨はトイレへと駆け込むように逃げ出してしまった。そして十分後――鏡梨は顔を青ざめて「悪い、吐いてきた」そう言って二人に深く謝罪をしたのであった。
酔っぱらっているのもあり窓を伝って上がるのは危険だと判断した二人は、双葉が鏡梨の父親に電話をして「今日は遊んだから俺の部屋に泊まらせておくよ」酒を呑んだこと踏まえたうえで状況を説明し、双葉の部屋に泊まることになった。
九条と一緒に介抱されて部屋へとたどり着くと、九条は「じゃあ明日、よろしくっす~」そう言って帰ってしまったのだ。
物で溢れた狭い寝室に通されてベッドに微睡んだ鏡梨はキッチンで麦茶を注いでいく双葉に今回ばかりは礼を告げた。
「ごめん、本当に。……悪いことした」
「それは俺も入っているのか?」
「うん、入っているよ。――本当にごめん」
麦茶を飲んで「もう一杯くれない?」なんて本人は気づいていないが可愛らしく強請っていると双葉に眉間の皺が深くなった。
「ごめん。なんか怒らせた?」
「……怒っているよ。本当はお前を襲いたくて堪んねぇ」
顔が真っ赤になってしまう。大人の雰囲気に吞まれそうになりそうだ。
だから鏡梨は不意に双葉に口づけをして「襲ってもいいよ?」なんてにっこりと微笑んで誘った。――だが獣は普段であれば食いつく餌に食いつかず、ただじっと耐えていたのだ。
鏡梨はくすりと微笑んだ。
「なんだよ、いつもなら……襲うのに?」
「襲いてぇよ。でも今のお前はシラフじゃねぇからな。――お前とはそうしたくはねぇんだ」
額にキスをされた。軽いリップ音を鳴らして優しくされる行為に鏡梨は安心して意識を手放し眠ることができた。
「まったく、この可愛いツンデレ君はよ……」
窓を開けて煙草を吹かす双葉は仕切り直しで黒ビールを煽っていたのだ。
そして翌日。鏡梨は狭さを感じて目を覚ますと……そこには双葉が寝息を立てていた。鏡梨は驚いた。
「あ、あんたか……。おい起きろ! 今日はリハーサルなんだろう?」
「うぅ……。その前にシャワー浴びねぇ……と」
起き上がっていく双葉は――パンツだけであった。「なんでパンツだけなんだよ?」訝しげに尋ねる鏡梨に逞しく野性的な体つきの獣はニヒルに微笑んだ。
「そういうお前も、だぜ?」
「えっ?」
見てみると自分も下着以外剥ぎ取られていたのだ。鏡梨は身体を震わせて顔を真っ赤にした。
「……この変態!!!」
枕を投げつけた鏡梨に双葉はニヤついて「一緒に風呂にでも入るか?」なんて冗談交じりで言ってくるが「しねぇよ馬鹿!」なんて答えた。
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